2002平成連句文芸賞  

入選
歌仙「テディベア」の巻        城 依子 捌

  梅雨入や窓に寄り添うテディベア     依子
   ボールがぬれる紫陽花の陰      たつみ
  出版の記念の集いはれやかに        桂
   敏腕記者も服を誂え             遼
  街角のポスト黙って呑む月光         み
   山のふもとの深みゆく秋           子
ゥ 初猟に高ぶる犬をなだめつつ         遼
   ゆるびし靴のひも締め直す          桂
  還暦が氷川きよしの追っかけに        子
   抱き合う二人降りる緞帳           み
  宙の涯ブラックホール増え続け        遼
   月の雪林寂々として             桂
  臘八の接心済みし僧の髭           み
   まとめてぐいとマルチビタミン        子
  そこ退けと長距離トラックひた走る      遼
   潮の香りを運ぶ朝風             桂
  花びらを肩先に受け深呼吸          み
   東踊りに誘われており            子


ォ春興を友と分け合うティールーム       桂
   世界に最たる長寿国とは           遼
  にっこりと年金削る財務相            み
   あんぱんかじり綴る論文            子
  洗い髪束ねし君のまぶしくて          遼
   夢か現か青蚊帳の中              桂
  怨霊と一騎打ちする陰陽師            子
   鬼無里に残る京の町の名            み
  鯉はねて池に水輪のひろごりし         桂
   遠く聞こえる子等の歓声            み
  熟成の美酒なりきょうの月高く          遼
   えのころ草をなぶる指先            子
ゥ冬支度あれこれ母に訊きながら        遼
   沓ぬぎ石に雀きており             桂
  トリックの構想を練る散歩道           子
   生き甲斐となる余技のマジック        み
  新しき雪洞ともり花の宿             桂
   若布かぐわし再会の膳             遼
平成14年6月13日起首 同9月4日満尾於インターネットBBS