2003 芭蕉祭

                     ☆特選
脇起半歌仙「春なれや」の巻  阿部 昭捌
 
 春なれや名もなき山の薄霞     翁   
  砦の跡に跳ねる若駒        昭  
 玉椿青磁の壷に活けられて     桂  
  母と娘の琴の連弾         兎 
 天心の月のいよいよ澄み渡り    遼  
  レシピ通りに新蕎麦を打つ     霞 
ゥ教え子が主役演ずる村芝居    昭 
  自ずと浮かぶ笑みに戸惑う     桂  
 攫われてみたいと熱く囁かれ    兎
  開けてはならぬパンドラの箱   遼  
 池の面に身じろぎもせぬ鴨の群  霞  
  脱北めざし人の去り行く      昭
 冷や酒の盃重ね月は友       桂  
  檀那寺から届くたかんな      兎  
 真っ黒なベンツの停まる道の駅  遼
  伊賀の組紐買うがきまりで     桂 
 昨日今日素直に生きて花仰ぐ    霞  
  夢のかたちを綴る蝶々       兎  
   起首平成15年4月5日同30日満尾 
  
                       ☆入選
 脇起半歌仙 『冬瓜や』の巻   田岡 弘 捌
  
  冬瓜やたがひに変る顔の形         翁
   月の淡きにすだく虫の音     田岡  弘
  炉火恋しベストセラーに涙して   多村  遼
   地味な努力のたふときを知る  佐々木栄一
  子燕のやうやく慣れし滑空に         弘
   沖合ひはるか浮かぶ峰雲         遼
 ゥ 停まるたび土産の増えるバス旅行    一
    頭のなかは君でいっぱい         弘
  待ち兼ねし華燭の典はもう間近      遼
   ナイスショットと囃すギャラリー       一
  タマちゃんの眼の釣針は無事にとれ   弘
   伊賀の銘酒で憩ふひととき        遼
  物陰に忍者の消えて冴ゆる月       一
   降誕祭に響くオルガン           弘
  学舎の煉瓦造りもなつかしく        遼
   炎と語る窯変の妙              一
  花浴びて見失ひたる宙の蒼        弘
   風やはらかに靡くスカーフ         遼
    起首平成15年5月12日同6月5日満尾  FAX文 音