平成25(2013)年国民文化祭やまなし文芸祭「連句の祭典」大会

 入選
半歌仙「ヤルキスイッチ」の巻  捌 石川 葵
             
  誤作動のヤルキスイッチめかり時   鳥海唯
    初蚊の止まる太き二の腕      石川葵
  春袷色あざやかに並ぶらん    佐藤ふさ子
   ハミングやがて輪唱となる          唯 
  補習終えいつもの月と友の影       葵
    投げてほお張る炒った底豆       ふ
ウ 決断がつかないままに濁酒呑み     唯
    至極の玉か松園の美女         葵
  後れ髪やさしく直す男指           ふ
    息白くして甘い囁き           唯
  クリスマス商戦に沸くニューヨーク     葵
    若き日の父アルバムの中       ふ
  月の吾子その名に付ける夏の文字   唯
    河童の淵に漣が立つ         葵
  道標誰が抜いたか迷い旅         ふ
    すっからかんの財布お気楽      唯
  師の諭す発菩提心花しずか       葵
    四方の山々渡る囀           ふ
        平成24年4月16日起首5月6日満尾 文音 
 入選
半歌仙 「ひよも桜の」 の巻   衆議判

  地に垂れてひよも桜の守る墓     慶子 
   風の遊べる春の村里         芳梅 
  巣立鳥行こか止めよか迷うらん    明子
    交通指導おばさんの笑み      慶
  自販機のならぶ公園白い月       芳  
    ひと休みするつくつくぼうし     明 
地歌舞伎のはねて火照りの冷めやらず  慶 
   捨てっちまおか良妻の顔         芳
  向き合って夫婦茶碗で飲む渋茶      明
   記念切手にハイデルベルク       慶
 青嵐散策ツアー大流行り           芳
   株価上がってちょっと一息        明
 次郎長の末裔なるを誇らかに       慶
   サッカー場より仰ぐ富士山        芳 
  凍月を駆けぬけてゆく銀狐       明 
    方位磁石のNに故郷         慶
  まだ熱き餅花捻り飾りたて        明 
   消防出初め若衆の声         芳
平成二十五年四月十二日首 五月八日尾  文音
 
  入選
半歌仙「春二番」の巻       捌  石川 葵

  犬の鼻に陽の当たりをり春二番  谷本守枝
   立雛飾る姉と妹          稲垣渥子
  気まま旅げんげの花に誘はれて  石川葵
   リュックサックに入れるオカリナ     渥
  未来めく高層ビルに月のぼり   長坂節子
   つづれさせ鳴く狭き地下道       枝 
 粗塩とうるか肴に呑む濁酒        節
   故郷に残すあの人のこと        渥
  海碧く紅さす指は美しく          葵
   イザナギイザナミ恋の先駆者     枝
  檀尻に老いも若きも阿呆になり 冨田八穂
   語呂の宜しきナンバープレート    渥
  除夜の月降圧剤のひとつ増え     枝
   めがね拭きつつ毛糸編む母     穂
  幸せの基準問ひかけ足るを知る   仝
   何処で違へた減反政策        渥
  花舞台名脇役は寡黙にて       葵
    残る雁ゆく遠き山脈         枝
平成二十五年二月二十六日 首尾 於 豊田市青少年センター
  入選
   半歌仙「いぬふぐり」の巻   捌 渡辺洋子

  いぬふぐり笑い出したる青さかな    芙美 
    畔塗りの音響く山峡           克彦
  開け放つ窓より春の風入れて       絢子
    駅長さんがコーヒーを挽く        藍 
  パソコンのキー跳んでゆくかまどうま   々 
    名残の月の覗く屋根裏         洋
  落鮎を骨酒にして独りなり         克
    ちくりと痛む胸の奥底          絢
   こっそりとふたまたかけた金曜日     洋
     素数ひたすら並ぶ黒板         芙 
   アベノミクスとか割り切れぬことばかり  藍
    えいと面打ち寒稽古する         芙 
   チャルメラの遠く近くに凍ての月      克 
    連休終わり鬱の始まり          藍 
   巴里祭の市場巡りのバスに乗る     芙
    頂けますかそのチョコレート       絢  
  母さんの卒寿を祝う花衣           洋
    みんなで飛ばす夢の風船      執筆
平成二十五年三月十二日首尾 於 桜花学園本部三〇二教室