2013年 「南栃市いなみ全国連句大会2013」

   *浪化賞
 歌仙「寒椿」の巻      捌 石川 葵
寒椿落ちてくれなゐこぼれけり
 ふくら雀の遊ぶ庭先 良重
指を折り十七文字をひねりゐて 敏女
 遠路はるばる友のおとなふ 八穂
円なる月皓々と渡るらん 紅花
 犬のリードを長くして秋
早生蜜柑思いのほかの酸っぱさで
 螺鈿の帯に祖母の追憶
水浅き川に架かるは恋の橋 
 たったひとつの嘘を貫く 
「ヨイトマケ」その絶唱に聞きほれて
 味噌汁の実に入れる初なす
切り通し抜けて涼しき月と風
 外環状を走るワゴン車
鍛えぬくマラソン選手腿太く
 くるり丸まる留守番の猫
花の宮禰宜の後行く嫁御寮
 凧に描く猛き若武者
ナオ畦塗りの腰を伸ばしてひと休み
  びっくりしたよこれは朽縄
昭一も大鵬も逝きわれ卒寿
ハモニカケースしまふ引き出し
転校生色浅黒くつぶらな瞳
  心をこめて贈るえりまき
空港で再開果たしプロポーズ
  ロゼのワインと夢に酔ひしれ
音もなく開く水蓮美しく
 古き長椅子並ぶ胡同
張出し窓餌台置けば小鳥来て
 読書三昧朝方の月
ナウ柿をもぐお礼は柿と青い空
 御影堂にて回す大数珠
慈悲深き後姿のありがたく
 名刺サイズの写真モノクロ
旅誘ふ花の便りの届く頃 
追ひつ追はれつふたつ蝶々

   平成25年1月22日首尾
            於 豊田市青少年センター
   *入選*
 歌仙 「千代の春」の巻     捌 武藤美恵子
千代の春成るがままなるわが身かな 益美
  七草粥はほろ苦く炊け
買い物のメモと携帯玄関に 美耶子
  頑固おやじに息子そっくり イスズ
ジャージーを着せた案山子を照らす月
  白い粉をふき並ぶ干し柿
名優の次々逝きし暮れの秋 渥子
  恋の噂に浮きつ沈みつ 美恵子
はずしたりはめたり指輪忙しく
 十キロ目ざしダイエットする 文子
新時代工夫こらしたエコハウス
 青い蜥蜴が石垣の下
月涼し離島へ向かう連絡船
 福祉減らして歳費減らさず
直木賞平成生まれ登場す
 写経の仏間日差しやわらか
夢叶いいざ旅立たん花の里
  ケンジントンに鐘の麗らに
彫像の天を指したり揚げひばり
  視線集めて下す指揮棒
君の胸クピトは小さき矢を放つ
 秘め事もめ事すべて引き受け
草むらを先へ先へと糸とんぼ 八穂
 水しぶきあげはしゃぐ子どもら
お取り寄せ大きなピザを切り分けて
  横丁のらり猫通り抜け
寂庵の法話で心穏やかに
  もう一杯と終わらない酒
月煌々山家に風の疼くのみ
  木々の枯れ蔓妖怪のよう
PM2,5防ぐマスクは五千円
 資格試験の問題集解く
こしあんのほんのり甘い京銘菓
 孫によく似たうちの雛さま
坪庭にどこからか花散りこんで
 式年遷宮春の風吹く
    平成25年1月17日起首 2月21日満尾
                於 豊田市竜神交流館