*浪化賞 歌仙「寒椿」の巻 捌 石川 葵
寒椿落ちてくれなゐこぼれけり |
葵 |
ふくら雀の遊ぶ庭先 |
良重 |
指を折り十七文字をひねりゐて |
敏女 |
遠路はるばる友のおとなふ |
八穂 |
円なる月皓々と渡るらん |
紅花 |
犬のリードを長くして秋 |
葵 |
ウ早生蜜柑思いのほかの酸っぱさで |
重 |
螺鈿の帯に祖母の追憶 |
花 |
水浅き川に架かるは恋の橋 |
葵 |
たったひとつの嘘を貫く |
重 |
「ヨイトマケ」その絶唱に聞きほれて |
々 |
味噌汁の実に入れる初なす |
穂 |
切り通し抜けて涼しき月と風 |
女 |
外環状を走るワゴン車 |
重 |
鍛えぬくマラソン選手腿太く |
花 |
くるり丸まる留守番の猫 |
重 |
花の宮禰宜の後行く嫁御寮 |
女 |
凧に描く猛き若武者 |
重 |
ナオ畦塗りの腰を伸ばしてひと休み |
穂 |
びっくりしたよこれは朽縄 |
女 |
昭一も大鵬も逝きわれ卒寿 |
々 |
ハモニカケースしまふ引き出し |
葵 |
転校生色浅黒くつぶらな瞳 |
重 |
心をこめて贈るえりまき |
穂 |
空港で再開果たしプロポーズ |
重 |
ロゼのワインと夢に酔ひしれ |
葵 |
音もなく開く水蓮美しく |
々 |
古き長椅子並ぶ胡同 |
女 |
張出し窓餌台置けば小鳥来て |
重 |
読書三昧朝方の月 |
穂 |
ナウ柿をもぐお礼は柿と青い空 |
女 |
御影堂にて回す大数珠 |
葵 |
慈悲深き後姿のありがたく |
花 |
名刺サイズの写真モノクロ |
穂 |
旅誘ふ花の便りの届く頃 |
葵 |
追ひつ追はれつふたつ蝶々 |
重 |
平成25年1月22日首尾 於 豊田市青少年センター |
*入選* 歌仙 「千代の春」の巻 捌 武藤美恵子
千代の春成るがままなるわが身かな |
益美 |
七草粥はほろ苦く炊け |
文 |
買い物のメモと携帯玄関に |
美耶子 |
頑固おやじに息子そっくり |
イスズ |
ジャージーを着せた案山子を照らす月 |
耶 |
白い粉をふき並ぶ干し柿 |
希 |
名優の次々逝きし暮れの秋 |
渥子 |
恋の噂に浮きつ沈みつ |
美恵子 |
はずしたりはめたり指輪忙しく |
渥 |
十キロ目ざしダイエットする |
文子 |
新時代工夫こらしたエコハウス |
々 |
青い蜥蜴が石垣の下 |
渥 |
月涼し離島へ向かう連絡船 |
イ |
福祉減らして歳費減らさず |
希 |
直木賞平成生まれ登場す |
イ |
写経の仏間日差しやわらか |
益 |
夢叶いいざ旅立たん花の里 |
希 |
ケンジントンに鐘の麗らに |
イ |
彫像の天を指したり揚げひばり |
渥 |
視線集めて下す指揮棒 |
々 |
君の胸クピトは小さき矢を放つ |
恵 |
秘め事もめ事すべて引き受け |
文 |
草むらを先へ先へと糸とんぼ |
八穂 |
水しぶきあげはしゃぐ子どもら |
々 |
お取り寄せ大きなピザを切り分けて |
希 |
横丁のらり猫通り抜け |
穂 |
寂庵の法話で心穏やかに |
希 |
もう一杯と終わらない酒 |
文 |
月煌々山家に風の疼くのみ |
希 |
木々の枯れ蔓妖怪のよう |
文 |
PM2,5防ぐマスクは五千円 |
希 |
資格試験の問題集解く |
穂 |
こしあんのほんのり甘い京銘菓 |
々 |
孫によく似たうちの雛さま |
希 |
坪庭にどこからか花散りこんで |
々 |
式年遷宮春の風吹く |
恵 |
平成25年1月17日起首 2月21日満尾 於 豊田市竜神交流館 |