大阪天満宮第六回浪速の芭蕉祭

 入選
     歌仙「鉄砲狭間」の巻       両吟
 鉄砲狭間狙えばみどりなす信濃   由川慶子  
  石段廻る麦の秋風          間瀬芙美
 蝉の殻子のポケットに仕舞われて      慶
  お使い籠に描いた食パン          芙
 オハヨウと鸚鵡が叫ぶ昼の月        慶
  体育の日はいつも晴れ晴れ        芙
初恋の予感かすかに早生ミカン       慶
  正座の君のマジなお茶席          芙
 目の海にふるさとの雲浮かびたる      慶
  自然遺産になりし泰山            芙
 狼の遠吠え聞きし老大樹           慶
  凍て月の乗るオート三輪           芙
地理学者方位磁石を持ち歩き         慶
  祖母の代からみんな福耳          芙
 お供えのぼた餅大小さまざまに       慶
  雪解けを待ち家出しようか         芙
 自由追いモスクワ発の花の旅        慶
  フラッグばかり続く街並           芙


市場から馬引く子等の声ひびく        々
    玉ねぎを売り買った小麦粉         慶
   はみ出したサングラスから太い眉      芙
     隠しカメラが暴くアリバイ          慶
   しあわせとふしあわせ付きマイホーム    芙
     絹の絨毯沁みのぽつぽつ         慶
   カルメラの甘い香りの思い出と        芙
    ハマで生まれてハマで老いゆく       慶
   空のいろ海のいろ混ぜ紺碧に         芙
    片肺飛行なれど着陸              慶
   両の手で月を揚げている役者         芙
    飲まずとも酔う重陽の酒           慶
ナウ 塩焼きの鱸はピンと尾をはねて        芙
    井戸掘りにして子沢山なり          慶
   お気に入りチェックのシュシュは箱の中    芙
    スプリングハズカム笑みしあいさつ     慶
   手折りたる花ひと枝にある歴史        芙
     壬生狂言の鉦たからかに        執筆
  2012年7月30日首  8月3日尾  文音