入選 歌仙「鉄砲狭間」の巻 両吟 鉄砲狭間狙えばみどりなす信濃 由川慶子 石段廻る麦の秋風 間瀬芙美 蝉の殻子のポケットに仕舞われて 慶 お使い籠に描いた食パン 芙 オハヨウと鸚鵡が叫ぶ昼の月 慶 体育の日はいつも晴れ晴れ 芙 ウ初恋の予感かすかに早生ミカン 慶 正座の君のマジなお茶席 芙 目の海にふるさとの雲浮かびたる 慶 自然遺産になりし泰山 芙 狼の遠吠え聞きし老大樹 慶 凍て月の乗るオート三輪 芙 地理学者方位磁石を持ち歩き 慶 祖母の代からみんな福耳 芙 お供えのぼた餅大小さまざまに 慶 雪解けを待ち家出しようか 芙 自由追いモスクワ発の花の旅 慶 フラッグばかり続く街並 芙 |
ナオ市場から馬引く子等の声ひびく 々 玉ねぎを売り買った小麦粉 慶 はみ出したサングラスから太い眉 芙 隠しカメラが暴くアリバイ 慶 しあわせとふしあわせ付きマイホーム 芙 絹の絨毯沁みのぽつぽつ 慶 カルメラの甘い香りの思い出と 芙 ハマで生まれてハマで老いゆく 慶 空のいろ海のいろ混ぜ紺碧に 芙 片肺飛行なれど着陸 慶 両の手で月を揚げている役者 芙 飲まずとも酔う重陽の酒 慶 ナウ 塩焼きの鱸はピンと尾をはねて 芙 井戸掘りにして子沢山なり 慶 お気に入りチェックのシュシュは箱の中 芙 スプリングハズカム笑みしあいさつ 慶 手折りたる花ひと枝にある歴史 芙 壬生狂言の鉦たからかに 執筆 2012年7月30日首 8月3日尾 文音 |