国民文化祭2012 とくしま

徳島県知事賞
  二十韻 「B面の歌」 の巻  岡部七兵衛 捌
 
B面の歌口ずさむ夜長かな    岡部七兵衛
  湾を黄金に染める望月       浅沼小葦
 菊人形菊師の技に生かされて   密田妖子
   親子並んで記念撮影        城依子
初めてのサイクリングにVサイン   齋藤桂
   胸のときめく湘南の風       七兵衛
  愛の巣は脇の小径の突き当たり    小葦
   闇の中から赤子泣く声         妖子
 蚊遣り焚く怪談今が佳境にて      依子
    とけてしまった氷金時         桂
ナオ 昨日からしきりに疼く親不知    七兵衛
    草書で届く手紙読めずに      小葦
  再三の見合い勧める伯母二人     妖子
   初のデートはクリスマスイヴ     依子
  騒がしき地球見下ろす冬の月       桂
   円高進み株も暴落         七兵衛
ナウ のっそりと獏が顔出す夢の中    小葦
   涅槃図前に般若湯酌む        妖子
  山頭火現れそうな花の山       依子
    霞たなびく静かなる午後       桂
 起首 2011年10月6日満尾 2011年12月4日
徳島県教育委員会教育長賞
   二十韻「仏徒なり」の巻    城依子 捌
 
仏徒なり梅雨のカラスも人間も   城依子
   桑の実ふくみ過ごす一時    野崎健
 せがまれておとぎ話のきりもなし小山百合子
   沖行く船の汽笛長々         依   
ウイスキーグラスに透かす望の月  健
    恋慕の闇をのぞく蟋蟀        百
  紅葉狩情が濃すぎて鬼女になる   依
    五徳のうえでたぎる鉄瓶       健
  風に乗り聞こえる祖谷の粉ひき節  百
    岩に腰掛け綴る自分史      依
ナオ水洟のバックパッカーバスを待つ   健
   月の路地から夜泣蕎麦屋が    百
  ちゃっかりと愛犬父の座にすわる   依
    副市長たる肩書きを持ち      健
 だしぬけに抱かれて落とす「罪と罰」  百
   危険な愛に命賭けおり        依
ナウ 雑踏の天使の都屋台市       健
     がさごそ動く桶のやどかり    百
  花の下囲碁の勝負はお預けに    依
    晴れたる空に揚げる大凧     健   
      起首 2011年6月15日 満尾 2011年7月20日
入選
  二十韻「山茶花や」の巻  石川 葵捌

 山茶花や人それぞれの夕間暮れ  石川 葵
  寒気に沈む町の灯火        深津明子
 和綴じの書墨のかすれもおもしろく     葵
  口に投げ込むニッキドロップ        明
ゥ 鉄棒をくるり回れば逆さ月         葵
   万妖祭の魔女にくらくら          明
  芳香を放ち林檎はアダム待つ       葵
   やけどしそうな朝の珈琲          明
  せっかちで高血圧の元気者         葵
   想定外を生きた母の子          明
ナオ 丸型の自動掃除機都合よく      明
   カミキリ虫の伸ばす触覚         葵
  月の舟新内流しの声に揺れ         明
   酔い覚めの風入れる胸元         葵
  墓場まで持っていきますあの事は      明
   ヒエログリフに向かい合う鳥       葵
ナゥ 旅誘うキャッチコピーは秀逸で       明
   彼岸詣での出店にぎやか         葵
  花の友結ぶ靴紐新しく           明
   留学の夢叶う春の日           葵
平成二十三年十二月二日首 二十四年二月十五日尾 文音
入選
二十韻「梅のちらほら」の巻 捌 間瀬芙美

 児の温さ残す背中や春日和  間瀬芙美
   巽の門に梅のちらほら    由川慶子
  つばくろのモノトーン柄行き来して  芙
     新任教師のめくる五線譜    慶
ウ  風薫るマドンナだった思い出を  芙
     恋の病にジェネリック薬     慶
   少しだけ癖を引きずる歩き方    芙
     輓馬終へれば旨き干し草    慶
   敦煌の街の隅々月明かり      芙
     袖でぬぐひて林檎つややか   慶
ナオ 戦争は終はった僕は生きている   々
     古里抱く神々の山        芙
   虹の橋探し何処まで行ったやら   慶
     石鹸カタコトだけの幸せ      芙
   小さき嘘気づかぬふりの一葉忌   慶
     枯蔦の這ふ欄の月        芙
ナウ カーナビに案内中止されし辻    慶
     高校生のおしゃべりな波     芙
   壬申の吉野に花の乱るるか     慶
     野遊びの果て受ける杯    執筆

二十四年 三月八日首 三月二十八日尾  文音
入選
   二十韻「風の唄」の巻     三吟
  
指揮者なき枯葦原や風の唄     佐藤ふさ子
    鶴の渡りを映す湖          石川葵
  クッションに刺繍幾重に刺し終えて  鳥海唯
    好みの紅茶母に勧める          ふ
 あくまでも魁夷の月は中天に        葵
   そぞろ寒とてクピド忙し            唯
  片恋のときめき煽る秋祭            ふ
    筮竹の卦は南西が吉            葵
  スカイツリー目指して走る三輪車      唯
   ぶちの野良犬旅のお伴を          ふ
ナオ 芋焼酎酌み交わす友はや逝きて      葵
    残る暑さに月ととまどう           唯
  留まらぬ時は流れる河の如         ふ
    亭主の嘘を包むセロファン        葵
  銀婚の紅白の餅寄り添わせ         唯
    絆深まる仮設住宅             ふ
ナウ 雨傘をくるり回して下校の子         葵
    春泥除けて太極拳を           唯
  山辺の菩提寺包む花朧           ふ 
   里穏やかに眠るお蚕            葵
 平成二十三年十一月九日首  十二月二十九日尾 文音
入選
  二十韻 「蒲公英の」の巻  捌 恒川暁子
 
蒲公英のゆれて鼓の音すなり       暁子
  雪消え残るつくばいの陰        絢子
 春服を揃える母はにこやかに      芙美
  マカロンひとつコーヒーに添え      々
 カリヨンの響く避暑地に月いづる   しげる
   海ほおずきを鳴らす少年        絢
  たおやかな年上の人に憧れて      暁
   長編小説書き上げる午後        芙
  山裾を縫ってハイウェーどこまでも    暁
   それぞれの村それぞれの味      々
ナオ  震災の特番ばかりのテレビ欄    絢
    頓服薬で効いてくる咳         芙
  熱燗をどうぞと誘う細い指        絢
    危ない橋も渡りたくなる        暁
  ひと刷けの紅さす雲に望の月      し
   草の実とばし犬のご帰還        芙
ナウ ハロウィンのパーティー準備うきうきと 暁
  笑いふりまき道化師がくる         し
 花万朶背で幼児眠りおり          絢
  キャッチボールは風光る中        芙
平成二十四年三月十三日 於:桜花学園大学栄サロ
入選 
     二十韻「桜守」の巻   捌 田中イスズ

桜守植え継ぐ木々や奥山田       板倉合
  茶店に並ぶ手摘み草餅      稲垣渥子
 春ショールねじねじにして颯爽と  塚本益美
  古稀の祝いにもらうアイフォン  松井文子
土用うなぎ東と西の食べ比べ        合
   君がほんのり白い夏月          益
 好きですと打ち明けられず時が経ち    合
  和布の端切れのアップリケ展  森田美耶子
 海はるかゴッホの愛したジャポニスム
                    武藤美恵子
  尖閣諸島買ってしまうか          益
ナオ 鱈ちりで酒酌み交わし策を練る      文
   形見になりし詩集一冊          渥
  ストレスで曲がらぬ指をいとおしみ    合
    窓を開けば夕化粧咲く       イスズ
  月今宵貴方待つ夜は眠られず      文
    瓜坊防ぐ柵を巡らせ          渥
ナウ 輪袈裟かけ同行二人秋遍路       益
   土埃立て走る軽トラ           耶
  花嫁の涙きらりと大安日         益
   水平線まで続く青空           文
    平成二十四年四月一九日首尾  於:竜神交流館
入選
二十韻「木々のハミング」の巻  城依子 捌
 風の丘木々のハミング聞いて夏 城依子
  素足投げだし仰ぐ青空    齋藤桂
工房は六角形に建てられて 八尾暁吉女
  陶芸教室いつも盛況   岡部七兵衛
ウ月皓々忘我のうちに去りし時    桂
細きうなじのいともさやかに   依
新妻の襷きりりと障子貼     七
雀かわゆく遊ぶ蹲居      暁
スカイツリー大東京を見下ろして 依
思いは遠くガウディのこと   桂
ナオひとつ目の旅行鞄に懐炉入れ   暁
狼吠える谷に満月      七
美しいアニメーションの大画面 桂
憂き世を忘れ夢の世界へ   依
  夫も子も捨ててあなたと逃避行  七
寄り添って飲む朝の珈琲    暁
ナウ清らかにチャペルの鐘が流れ来て依
沖の霞に漕ぎ出す舟     七
眼帯のとれて三国一の花     暁
地酒楽しみつまむ独活和    七   
     起首 2011年7月20日 
  満尾 2011年8月25日
入選
  二十韻「一直線の水尾」の巻  城依子 捌
 
うららかや島へ一直線の水尾   城依子
  新入生の楽しげな声     八尾暁吉女
 鉛筆を尖らせ蝶の写生して  岡部七兵衛
  無心になりて幸せの時       齋藤桂
ことのほか月きわやかに業平忌  暁吉女
  祭りの法被粋に着こなし       依子
 凛々しさと心遣いに惚れなおす     桂
  休みを知らぬ掃除ロボット     七兵衛
 おしゃべりなカラス窓からのぞきおり 依子
   若き日の夢おどる稽古場     暁吉女
ナオ 熱燗に果てなくつづく演技論   七兵衛
   寒念仏の通り過ぎゆく         桂
 婿殿は靴の職人イタリアン     暁吉女
   ハネムーンベビー眠る秋蚊帳   依子
 月照らす最新型のEV車          桂
   政権揺れていよよ冷まじ     七兵衛
ナウ八十路翁峡のいで湯で疲れ取り   依子
    好物ばかり差し入れの籠    暁吉女
  平家琵琶徐々に高まる花の夕   七兵衛
   影も朧に古都の町筋          桂
  起首 2012年4月10日満尾 2012年4月25日
入選
 二十韻「春キャベツ」の巻    齋藤桂 捌 

 手秤すその名もうれし春キャベツ  齋藤桂
    こども等遊ぶ水温む川   岡部七兵衛
 雛飾り数代そろう見事さに   八尾暁吉女
  老舗の和菓子色のゆかしき   城依子
月涼し白壁つづく城下町      七兵衛
   待宵草の側で人待つ        桂
 韓流のドラマのような純な恋     依子
   決して隙をみせぬライバル   暁吉女
 餃子屋の向き合っている駅の裏     桂
   鞠が大好きおとなりの猫     七兵衛
ナオ婆ちゃんに教わりながら毛糸編む 暁吉女
   木の葉時雨の打ち続く夜     依子
  再婚の話に揺れる律儀者     七兵衛
   残る蚊はらう人の嫋やか       桂
  山裾の古き祠を覗く月           依子
   にょきにょきにょきと伸びるくさびら 暁吉女
ナウ真心でつづく朗読ボランティア     桂
    おしゃれに結ぶ縞のスカーフ  七兵衛
 花見酒一年の無事よろこびて    暁吉女
    潮の香とどくうららかな苑      依子
  起首 2012年2月22日満尾 2012年3月16日
入選
  二十韻「ぎつたんばつこん」の巻   両吟
 短日や早くも点る街路灯        齋藤桂 
   片時雨して小走りの人     上田真而子 
 背伸びする坊やの額硝子戸に     桂
   賢者のごとく蹲る犬          而  
望の月杉山の上通りゆく         桂 
   事の起こりは地芝居の夜       而 
 吾亦紅妊婦も晴れの角隠し       桂 
  海の向ふの黒マリアさま        而
 写真集歌声までも伝へきて       桂
  よく通つたなアングラ劇場       而
ナオ菖蒲湯の香につつまれて仰ぐ月  而 
   窓の守宮は身じろぎもせず      桂 
 パエリアの芯の硬さに似た彼女     而  
  熱きハートは秘めてうそぶき     桂
 大漁旗瓦礫に埋もれなほ著し      而
  けふも変らず入相の鐘         桂
ナウ友よ来よ阿波の銘酒の口切らん   而
  全快祝ふ麗らかな午後        桂 
 花大樹妖しきまでに咲きほこり     而 
    ぎつたんばつこん囀りの中     桂 
  起首 2011年11月24日満尾 2011年12月17日