2011年 「第十六回えひめ俵口連句全国大会」

   *愛媛新聞社長賞
 歌仙「蟷螂の子」の巻      捌 齋藤 桂
青き空蟷螂の子の斧透ける  
   粒ぞろいにて太る梅の実 
 卒寿翁自在に絵筆はしらせて
   チェックのベスト粋に着こなし
 月今宵囁くような波の音 
   糸瓜の水のたまりゆく瓶
路地裏に煙もうもう焼く秋刀魚
   単身赴任十年になり 
 誕生日プレゼントには守り札 
   背伸びする娘の視線眩しく
 母や叔母恋のお手本ふんだんに
   増殖中の愛のウイルス
 何事も無かったように眠る山 
   諍いのあと仰ぐ寒月 
 独り言つ明日には明日の朝がある
   出航を待つ新しい船  
 花吹雪あびて巫女のあらわれて
  優しく撫でる若駒の背ナ 
ナオ 久しぶりカナダ旅行は春スキー
    鞄の隅に味噌汁の素  
 原発の復旧作業捗らず 
    被災地へ向くボランティアの手
 歌声に元気になった鯉のぼり 
   ひまわり咲かせ小児病棟
 中庭のベンチ私の指定席 
   髭の男にひと目ぼれする 
 物言えばあぶない匂い漂いて
   麻薬に媚薬果ては毒薬 
 鳴く鹿の声もかなしく夕月夜 
  草の穂分けて抜ける原っぱ
ナウ冬隣深々浸かる露天の湯 
   将棋仲間はみんな酒好き 
 競うごとふるさと自慢きりもなし
   大寺の鐘いとおだやかに 
 たそがれて花は妖しき彩となる 
  風はやわらか仙境の夢 
齋藤桂
城依子
八尾暁吉女
岡部七兵衛
    依子
     桂
  七兵衛
  暁吉女
    桂
  依子
 暁吉女
 七兵衛
  依子
   桂
七兵衛
   桂
暁吉女
  依子
 暁吉女
  七兵衛
   依子
   桂
七兵衛
暁吉女
  桂
  依子
 暁吉女
  依子
七兵衛
   桂
七兵衛
  暁吉女
    桂
 七兵衛
  依子
 暁吉女
 二〇一一年七月一三日起首 二〇一一年八月二七日満尾
            於 インターネット
   *愛媛朝日テレビ賞
 歌仙 「梅雨のリズム」の巻     捌 間瀬芙美
庭石を叩いて梅雨のリズムかな 
  蟷螂の子の湧ける葉の裏
 絵日記の白き頁を前にして
  とりあへず剥くキャンディーの紙 
 満月の沖過り行く旅客船
  鳩吹く人のひょろ長き影
薬掘る時をり腰をのばしつつ
  金の話と恋の噂と 
 賑やかに派閥の長のスキャンダル
  パオをたたんで羊引き連れ 
 丘陵の彼方に眠る雪の山 
  聖夜の月に満たす葡萄酒 
 兄ちゃんは気ままぐらしのフリーター
  手先器用に直す靴底 
 甃曲がりくねって浜に出る 
  瓦礫に生きて飼ひ猫の鳴く
 住職は今年の花に目を細め
  風やはらかに絵蝋燭売る 
 ナオ薩摩には南蛮凧の唸る空 
   木刀担ぎ走る山道
 血糖値高い血筋を受け継いで
   かっと燃えてはさっと捨てられ
 くしゃくしゃのシーツに残る夢の跡
   時鳥啼く幽霊の城 
 溶かされて氷苺は紅いつゆ
   運河の岸に舫ふ明け暮れ 
 父さんの柩に入れる写真集
   煙が雲に変る中空  
 安太多良の稜線をいま離れ月
   鰯三尾を手開きにして 
 ナウ 菊摘めば千草の筋の乱れつつ
   置屋の電話鳴りも止まざる 
  予定表埋める中に横文字も 
    郷土を背負ふ春の選抜 
  古き良き時代を経たる花吹雪
    ひとり残りて漕げるふらここ 
 
間瀬芙美
 坂本孝子
 鈴木了斎
 山本要子
 野口明子
     斎
     同
     孝
    同
     要
     斎
     孝
     芙
     明
     斎
     孝
     明
     要
     孝
     斎
     芙
    明
    斎
     孝
     同
     要
     孝
     斎
     要
     明
   斎
     孝
    明
     孝
     芙
    要
            二十三年六月十九日首尾 
         於 新宿ワシントンホテル菊の間