2010年 俵口15回「えひめ俵口連句全国大会」

☆松山市教育長賞 
   歌仙「命なり」の巻      衆議判

 命なりみたび三河の秋の座に   佐藤俊一郎
  金木犀もほろほろと月         矢崎藍
 アトリエの設計図面鵙啼いて     由川慶子
  いつも鋭く削る鉛筆            石川葵
 兄ゆずりスピードテニスで勝ち進み   板倉合
   糸を流して風に乗る蜘蛛      間瀬芙美
向日葵の戯れ言をきく膝小僧        葵
   だってあのときうれしかったの      俊
 ポコアポコ心はじける恋をして        藍
   奇数のようにとんがった彼        葵
 左ハンドル敗戦の野を走り抜け       慶
   いま東京に地平線なし           藍
 大量のコンビニ弁当積み上げて       合
   サッカー選手プロとなる道        芙
 狼の牙に利鎌の月冴ゆる           俊
   円空仏はみな違う顔            葵
 花を追い北の大地の果ての果て       慶
  煉瓦の獄舎窓の淡雪             芙

ナオ
 いっせいに田螺のもぐる千枚田    慶
  ついと転んで老いを知りたる    藍
 名優の黒衣に徹し半世紀       慶
  善と偽善と悪と偽悪と        葵
 クリムトの女うっとり蕩けおり     々
   洋燈の下で紅を直して       俊
 イエスノーしかと聞こえず波の音   慶
   蛍の消える二つ三つ四つ      俊
 纏向の遺跡を掘れば夏も闌け    合
  理系出身記者の送信         芙
 東天に月は明星従えて         合
  蒙古平原草紅葉する         藍
ナウ 長老の髭剃りあとのへちま水   慶
  あやつ与党かもしや野党か     芙
 左利きといいつつつまむ麩饅頭    慶
  猫の子抱けば和毛やわらか     葵
 追憶の木造校舎花の渦         藍
  ちぎれて空へのぼりゆく凧    執筆
平成二十一年十月十七日首尾 於 豊田市「野島」
 入選                 
   歌仙「古代の夢」の巻 愛知 間瀬芙美
 
赤米や古代の夢を月の下       間瀬芙美
  蜩の声透る山峡            矢崎 藍
 秋袷ベストセラーを開きいて     繁原敏女
  眼鏡を探すパソコンの前       長坂節子
 熱帯魚地球の裏からやってくる   徳永あき子
 みんな集まれ噴水広場          藍
 いつの間に齢重ねて解かること      女
   最初の彼がやはりいちばん       あ
 褐色のシルクの肌のなめらかさ       藍
  円形劇場残照の中             節
 鳩がきて与党が野党になりました      芙
  離れの隠居爪を噛んでる          節
 七五三いたずらぼうずは神妙に       女
   雪になるかとYAHOO 検索        あ
 ぶち猫の駅長さんの大あくび         節
  現代アート縦か横かと           芙
 絢爛な友禅織の花月夜           節
  何処かで蝶の羽化のはじまる      女


 
ナオ行く春をドナウくだれば森深く   藍
  買物籠にどさりベーコン   伊藤良重
 ふうわりと着地してみる体重計    女
  腰痛歯痛かくて心痛         藍
 緑陰の愁いを秘めし阿修羅像     節
  鉄砲百合の放つ芳香         藍
 髪編んでほどいて恋と知りそめぬ  々
  タトゥゆらめく愛の饗宴        芙
 十六夜の雲はちぎれて流れたり   あ
  半蔵門をくぐる秋冷          芙
 明雅忌の白磁の盃に新酒酌む    節   ライトブルーのペンの添削      藍
 ナウ数え日のダウ平均は気がかりな 々
  内野安打で大記録積む       あ
 寿限無寿限無続くこの先唱えたり  節
  エイプリルフール誰の呼び出し   藍
 迷いきて花うつくしき二度童      女
  水面のどかに欄の影         節
平成二十一年九月十五日  於豊田市 「野島」