☆静岡県実行委員会会長賞 半歌仙「やさしき貌」の巻 城 依子捌 水打つや街はやさしき貌となる 城依子 小さな虹の生れる道端 密田 妖子 少年はおとぎの国の夢を見て 岡部七兵衛 植物図鑑開く文机 浅沼 小葦 隣人の月愛でる声歌う声 齋藤 桂 鰯大漁地引き網引く 依子 ウ色葉散り気分はいつも山頭火 妖子 青い空には流れ行く雲 七兵衛 貝殻の指輪をそっと手渡され 小葦 はじめて歩幅合わすときめき 桂 鬼女となる君への思い強すぎて 依子 泣いて笑って南無阿弥陀仏 妖子 雪月夜宇宙広大俺一人 七兵衛 森の奥からオオカミの声 小葦 もめにもめかんぽの宿は売れぬまま 桂 電動自転車坂をすいすい 妖子 花だより届けば疼く旅心 小葦 シャンパンの栓飛んで春宵 七兵衛 2008年7月16日起首 同年8月10日満尾 |
☆ 静岡県議会議長賞 半歌仙「忽ちに」の巻 田岡 弘 捌 忽ちに風の中なる牡丹かな 田岡 弘 静寂を破る夏の鶯 城 依子 デッサンは思ひのままに伸びやかに 弘 背なになじみしリビングの椅子 子 皓々と湖を照らして望の月 弘 音も立てずに穴に入る蛇 子 ウ木の実降る道はいつしか行き止り 弘 恥ぢらひながら交はすくちづけ 弘 夢うつつうすむらさきの閨の内 子 踏み損なつてしまふブレーキ 弘 アメリカに端を発した株下落 子 酒の力で憂さを晴らさん 弘 寒念仏月の明りに過ぎ去りて 子 犬がとぼとぼ底冷えの街 子 友を待つことにも慣れてティールーム 弘 スローライフもいつか身につき 子 霊峰の富士を遥かに花の雲 弘 茶摘の唄の流れ来る午後 子 平成二十年五月十八日起首 同七月十四日満尾 |
☆入選 半歌仙「過ぎ去りし」の巻 田岡 弘 捌 過ぎ去りしものに靡ける芒かな 田岡 弘 背なに負ひたる十六夜の月 西岡 恭平 新走り友の笑顔の嬉しくて 弘 粋な小唄でこれが引けどき 平 ゆつたりと風にまかせて鯉幟 弘 アカシア並木香る故郷 平 ウ ローカルな電車のよぎる町はづれ 弘 愁ひを秘めし妙齢のひと 弘 衣々の別れをせかす明け鴉 平 この世のことはみんな泡沫 弘 深まりし金融危機を如何にせん 平 六十億は乗れぬ方舟 平 月冴えて小夜の中山夜泣石 弘 蟷螂枯れて身じろぎもせず 平 和やかに話の弾むダイニング 弘 神の啓示と宝くじ買ふ 平 未来への夢をちりばめ花筏 弘 空の青さに駈ける若駒 平 |
☆入選 半歌仙「森の道」の巻 岡部七兵衛 捌 さえずりやどこまで続く森の道 岡部七兵衛 雪割草の揺れる岩陰 澤藤 蓑助 大凧に子の命名を揮毫して 小山百合子 端切れ集めて作る巾着 棚町 未悠 満月の覗いておりし飾り窓 城 依子 街いっぱいに香る木犀 七兵衛 ウ 登高の半ばに膝の笑い出す 蓑助 小さき祠にはずむ賽銭 百合子 恋に泣く文楽人形黄八丈 未悠 太宰のように死ぬもまた良し 依子 居酒屋のいつもの椅子でひとり酒 七兵衛 刑事張込むワゴン車の中 蓑助 貝風鈴有明の風捉えたる 百合子 正覚坊は海へ向かいて 未悠 みんなみの島に幸あること信じ 依子 週に三回習うウクレレ 百合子 舞姿みなしなやかに花の下 蓑助 山裾遠くかぎろえる村 未悠 2009年2月10日起首 同年3月6日満尾 |
☆入選 半歌仙「蜘蛛の糸」の巻 岡部七兵衛 捌 蜘蛛の糸一筋垂れる仁王門 岡部七兵衛 夏の終わりを告げる白雲 浅沼小葦 あざやかなパントマイムに輪ができて 城 依子 ワッフルを売る髭のおじさん 齋藤 桂 路地に住む野良猫たちも月の客 密田妖子 新酒入荷のでかい張り紙 七兵衛 ウ 団栗を拾って帰る九十九折 小葦 おなご先生笑みを絶やさず 依子 縁談の持ち込まれたる良い日柄 桂 風もないのにゆらり揺り椅子 妖子 山の端に突然黒く立つ煙 七兵衛 ダカールラリー駆ける四輪 小葦 ボーナスを全部はたいてライカ買い 依子 寒さ忘れて仰ぐ満月 桂 墓石も混じる石垣城の跡 妖子 ピアニッシモの川のささやき 小葦 花筵ままごとの子等楽しげに 依子 窓開け放つうららかな午後 桂 2008年8月4日起首 同年9月11日満尾 |
☆入選 半歌仙「命 終」の巻 森本多衣 捌 日めくりと競ふ命や山笑ふ 森本 多衣 生まれ変りは胡蝶など良し 鈴木 漠 白梅は見頃紅梅如何ならん 在間 洋子 手招きをしてどうぞ隣人 山名 才 天瓜粉つけた子を連れ月の浜 松本 昌子 上布の裾を潮に濡らして 香山 雅代 ウ黄楊の櫛飾り乙女の髪ひかる 森本 善信 懺悔堂出てまづメーキャップ 安丸てつじ ジェラシーの炎自ら鎮めつつ 三神あすか 残る蛍もやがて消え行き 洋子 半円を有明月は傾げをり 漠 銀杏散りゆく薄闇の中 多衣 渓づたひ三叉路に坐す道祖神 雅代 褞袍着た客庭下駄を履き 昌子 店先の初氷には怖怖(こはごは)と 才 とんがり屋根をとんび旋回 あすか 間延びして谺の還る花の午後 てつじ 鉄の鎖の軋るぶらんこ 執筆 2009年2月17日起首 同年3月2日満尾 |
☆入選 半歌仙「除夜の鐘」の巻 岡部七兵衛 捌 除夜の鐘かすかに動く猫の髭 岡部七兵衛 小半時ほど舞いし初雪 八尾暁吉女 公園で子等は元気に遊ぶらん 城依子 アップルパイは母の手作り 齋藤 桂 北へ行くフェリーに乗って月の客 暁吉女 すでに粧う四方の山々 七兵衛 ウ 赤とんぼ分校跡に群なして 桂 思い出はみな美しきもの 依子 さまざまな恋を重ねた老女優 暁吉女 ご酒が入ればいつも都々逸 桂 草庵の前にひろがる隅田川 七兵衛 小さき祠にお供えの山 暁吉女 月仰ぐナイター熱く熱く燃え 依子 ラムネ片手にかけるケータイ 桂 電車内盲導犬は紳士なり 暁吉女 夢のふくらむ旅立ちの朝 七兵衛 花爛漫宗祇の墓のひっそりと 依子 どこからとなく小綬鶏の声 桂 2008年12月17日起首 2009年1月16日満尾 |
☆入選 半歌仙「ガラスの迷路」 膝送り 早春やガラスの迷路抜けられず 三宅節子 約束の地にかかる初虹 佛渕雀羅 田螺鳴く良きパン種を眠らせて 由川 慶子 キッチンの窓南に開け 稲垣渥子 まろうどのてづまに消える月の影 羅 動き出す虎檻のやや寒 節 ウ静まりしキトラ古墳に木の実落つ 渥 美大生抱く丹の色の壷 慶 過去未来飛翔するもの捕らえむと 節 恋より疾きカルメンの死は 羅 冬月に彼の鎖骨は痛まぬか 慶 年末派遣村の味噌汁 渥 ポケットにほつれる芭蕉七部集 羅 ハーレー駆って長き探索 節 島浮かぶ海に花火のどよめける 渥 どこでもドアをパッと押し開け 慶 飛行士に届けに行かむ山すみれ 節 魔法瓶よりそそぐ陽炎 羅 平成二十一年二月二十七日起首同年三月二十七日満尾 |
☆入選 半歌仙「真菰の芽」の巻 小山百合子 捌 こめかみに風の重たし真菰の芽 小山百合子 子と連れ立ちて蝶の舞う土手 岡部七兵衛 卒業期オープンカフェの賑わいて 城依子 埠頭離れる豪華客船 藤澤蓑助 月今宵夢でふくらむ旅鞄 棚町未悠 卓の榠櫨の香り深まる 百合子 ウ 祭文に野次の飛びたる牛祭 百合子 少し鼻緒のきつき駒下駄 依子 ご新造の傘のしずくに肩ぬらし 蓑助 格差婚とて話題ふりまく 未悠 キャラバンの隊列消ゆる砂嵐 百合子 歴史を秘めて眠る楼蘭 七兵衛 汗拭いひたすら絵筆運ぶ人 依子 焼酎すする窓に残月 蓑助 やすやすと個人情報流失し 依子 籠のオウムはおしゃべりが好き 百合子 闇に浮くライトアップの花の滝 七兵衛 宗祇偲びつ仰ぐ春嶺 依子 2009年3月10日起首 同年4月17日満尾 |
☆入選 半歌仙「坂の町」の巻 城依子 捌 春灯の淡くこぼるる坂の町 城依子 枝垂れ柳を見下ろせる月 八尾暁吉女 桜鯛発止と出刃を打ち込みて 岡部七兵衛 潮焼けの顔逞しき腕 齋藤桂 フィールドへ研究室はいつも留守 暁吉女 ストーブは消え灰が白々 依子 ウ 裾野から仰ぐ雪嶺凛々しかり 桂 少女の夢を乗せる浮き雲 七兵衛 婚礼の衣装をまとい馬車に乗る 依子 文化の壁を愛の高飛び 暁吉女 救援の物資届けるNPO 七兵衛 笑顔で開くメールボックス 桂 大杯に映る玉兎と遊ぶ宵 七兵衛 殿様ばった泰然として 暁吉女 御命講善男善女ぞろぞろと 依子 太鼓の音に揺れる池の面 暁吉女 名木の樹齢いかほど花篝 桂 ビュフェの版画に出会う麗日 七兵衛 2009年2月19日起首 同年3月16日満尾 |
☆入選 半歌仙「風生まれ」の巻 棚町未悠 捌 風生まれ薄の海に溺れけり 棚町未悠 国境あたり浮かぶ十六夜 渡部葉月 ミュージカル芸術祭賞狙ふらん 中林あや 白黒縞の帽子ななめに 悠 止まっては遠のいて行く乳母車 葉 きびきびとして馬洗ふ影 や ウ 山小屋に怪談話きりもなし 悠 物音途絶え外の静かさ 葉 流し目の練習してる姫鏡 や スリムなズボン合鍵をもち 悠 アレルギーあちらを掻けばこちらまで 葉 しっぽを探すすっぽんの鍋 や 寒月光五百羅漢の笑みこぼれ 悠 シルクロードの取材班らし 葉 愛用のカメラ記念の傷があり や 競り市に出す大名の雛 悠 ほんのりと酔ふて艶やか花衣 葉 町騒うすれ夕べうららか や 2008年12月16日起首 2009年1月10日満尾 |
☆入選 半歌仙「命なり」 森本 多衣捌 花一樹燃えて全山命なり 森本 多衣 畑に縺るる初蝶の影 森本 善信 朝飯は若布の香立つ嬉しさに 松本 昌子 肺活量の大いなるまま 鈴木 漠 図書館へ運動兼ねる坂の道 安丸てつじ 草刈鎌は月光に濡れ 三神あすか ウ風鈴の音に誘はれて夢に入る 在間 洋子 たをやめ萎る庵の枝折戸 香山 雅代 恋多く生きしとか聞く舞ひ姿 山名 才 カメラに収む白鳥の群れ 昌子 蔦枯れてむしろ明るむ我がこころ 善信 幸も不幸も己が身の内 多衣 獺祭忌なれば句帳を懐中に あすか 臨死体験秋の夜長は てつじ 嗜めば酒は良薬月見酒 洋子 遠回りして帰る面々 才 チェーホフの桜の園の再演に 漠 名優偲ぶ陽炎のなか 雅代 2009年3月17日起首 同年3月31日満尾 |
☆入選 半歌仙「野も山も」の巻 岡部七兵衛 捌 野も山も龍田の姫の衣の音 岡部七兵衛 端然と座す月の正客 城 依子 菊作りベテラン同士楽しげに 八尾暁吉女 側にひょこひょこ機嫌よき鳩 齋藤桂 校庭の銅像天を仰ぐらん 依子 涼風うけてラジオ体操 七兵衛 ウ 真っ白なショートパンツの眩しくて 桂 思われ面皰つぶさずにおく 暁吉女 神田川沿いの下宿が愛の巣に 依子 朝日に映えるカーテンの襞 桂 六両目始発電車に乗り込んで 暁吉女 飲めや騒げと団体の客 七兵衛 肩書にしがみついてる部長補佐 依子 尻尾丸めて黒き灰猫 暁吉女 月冴えて庫裏の煙のくっきりと 桂 写真を添えてブログ更新 依子 満開の花の名所を姉妹 暁吉女 茶店の棚に並ぶ草餅 桂 2008年8月22日起首 同年9月11日満尾 |
☆入選 半歌仙「ざわめきも」の巻 齋藤 桂 捌 ざわめきも楽しげなるや竹の春 齋藤桂 月の明るき湖近き里 八尾暁吉女 風炉名残髪をきりりと結い上げて 城依子 父の好みし床の掛け軸 岡部七兵衛 跡継ぎは蔵を改造ギャラリーに 暁吉女 夏の燕がすいと横切る 桂 ウ そよ風にひと息いれる登山道 七兵衛 携帯電話OFFにしたまま 依子 いつの間に恋のかけひき覚えたの 桂 八百屋お七がいればライバル 暁吉女 スコッチを手に繙きし草双紙 依子 棚いっぱいに模型機関車 七兵衛 締め切りの迫る事務所は戦場に 暁吉女 師走の男ねじり鉢巻 桂 雪月夜潮の香とどく二の鳥居 七兵衛 文化遺産をめぐる長旅 暁吉女 花吹雪ボーイスカウト整列す 依子 夢といっしょに揚げる大凧 七兵衛 2008年9月16日起首 同年10月3日満尾 |
☆入選 半歌仙「蒼穹や」の巻 棚町未悠 捌 蒼穹や囀りひびく尾瀬ヶ原 棚町未悠 木道沿ひの水温む頃 渡部葉月 シャボン玉作りに飽かぬ兄がゐて 菅原紀彦 鍔の大きな帽子誂へ 悠 月今宵真打披露口上に 葉 タッチパネルで休む蟷螂 彦 ウ 紅葉舟ゆるゆる進む山の影 悠 青春十八切符愛用 葉 僕だけに微笑む巫女とすれ違ふ 彦 初の密会揺れるブローチ 悠 風薫り*「熱狂の日」てふ音楽祭 葉 屋根へ登れば月の涼しく 彦 喪の旅に静かに地酒酌み交はす 悠 年の瀬せまるヴァチカンの列 葉 ジャケットの裏ポケットに札束が 彦 裁判員の知らせ届きて 悠 花の房蜜吸ふ鳥の戯れる 葉 ネットゲームに勝ちし永日 彦 2009年3月16日起首 同年4月20日満尾 *数年前からフランスのナントと東京で、毎年テーマを もって行うクラシック音楽祭 |