国民文化祭2005ふくい

☆文部科学大臣奨励賞
歌仙 「佐保姫の」の巻 東京都   岡部七兵衛捌 
 
  佐保姫の土踏む音や雑木山    岡部 七兵衛
   時空を超えてふわと初蝶       城  依子
  雛の客ひねもす窓の華やぎて    雨乞 小町
   螺鈿の筥に仕舞う琴爪       多村   遼
  月影をくだきて大河とこしなえ   小山 百合子
   注がれし徳利ましら酒とか    淀川  しじみ
 進退を賭け秋場所にのぞむらん      依子
   風もやさしい蒙古草原          七兵衛
  あなたへと紙飛行機はゆれながら     遼
   ジェラシーという恋の妙薬        小町
  朗々と新進女優のオペレッタ      しじみ
   茶房の隅に尉と姥あり         百合子
  露店市西瓜をどさと買いこんで     七兵衛
   避暑地を目指し月の国道         依子
  誘拐をされし気弱なエイリアン       小町
   うつらうつらと転寝の夢          遼
   たっぷりと花そそぎませ義士の墓  しじみ
    ビルの谷間を労働歌ゆく      百合子
ナオ陽炎の罠にはまって物忘れ       依子
    箪笥預金をまた移し変え      七兵衛
  羽二重の着物はむろん福井産       遼
    願い事なら無病息災          小町
  矍鑠と雪けむり蹴り斜滑降       しじみ
    手を取り合って狐火を見に     百合子
  好きですの小さな声は闇の中     七兵衛
    ルパンに心盗まれており       依子
  黄金比いと美しき数値にて        小町
    千の綱垂れ走る帆船        百合子
  たちまちに雲の切れたる月まどか     遼
    湯加減いかがとちちろ窺う      しじみ
ナウ新米の炊ける香りが嬉しくて       依子
    喜寿の親父は杜氏一筋       七兵衛
  ちかごろは趣味の画才も認められ     遼
    巣箱賑わう中庭の景         しじみ
  花の中サンピエトロに鐘の鳴る      小町
    そぞろ歩きの暖かき宵       百合子
      平成17年2月20日起首4月3日満尾
☆福井県議会議長賞
歌仙「万緑」の巻   香川県   田岡  弘 捌
  万緑や地図には赤き現在地    田岡 弘 
    声をかぎりと鳴くは初蝉    多村 遼  
  手づくりのパイの思はぬ出来映えに    弘 
    ベストセラーは読みかけのまま     遼  
  天心を皓々として望の月           弘 
    小鳥放てば風になるらん         遼 
ウ 爽やかにさざなみ寄せる浜辺には      弘  
   会釈を交す妙齢のひと           弘  
  片恋の痛みの残る日記帳          遼  
    涙の痕にいつか微笑み          弘  
  黙々と戦禍の村に井戸を掘り        遼  
    神に祈らん世界平和を          弘  
  月冴えて歓喜の歌を高らかに        遼  
   スノータイヤの威力抜群          弘  
  ブーム追ふ秘湯めぐりのカメラマン     遼  
   心にとめる一瞬の技            弘  
  初花のあたり仄かなにほひして       遼 
   何にたとへん春のあけぼの        弘  
ナオ若駒に少年の夢果てし無く         遼  
   自由自在にタイム・スリップ        遼  
  古文書の謎にすっかり嵌り込み       弘  
   壁の染みさへ物の怪に見ゆ        遼  
  泣く子にはとても叶はず買ふ金魚      弘 
   雨宿りして過ごす夕立           遼  
  ヨン様にやまとなでしこ奪はれて       弘 
    脇目も振らず愛はひとすぢ        遼  
  抱き合ふただそれだけで幸せと       弘 
   不意に扉を叩くのは誰           遼  
  雲間より洩れゐる月の永平寺        弘  
   坂の途中で拾ふひょんの実        遼  
ナウ川土手に聴くフルートに秋更けて      弘 
   キャッチボールも懐かしき父        遼  
  SLの窓に景色の移りゆき           弘 
   旅にしあれば憂さも吹っ飛ぶ       遼  
  けふよりも若き日はなし花に酌み       弘 
   遥か彼方へ霞む連山           遼  
     平成16年7月1日起首8月2日満尾