☆文部科学大臣奨励賞 歌仙 「佐保姫の」の巻 東京都 岡部七兵衛捌 佐保姫の土踏む音や雑木山 岡部 七兵衛 時空を超えてふわと初蝶 城 依子 雛の客ひねもす窓の華やぎて 雨乞 小町 螺鈿の筥に仕舞う琴爪 多村 遼 月影をくだきて大河とこしなえ 小山 百合子 注がれし徳利ましら酒とか 淀川 しじみ ウ 進退を賭け秋場所にのぞむらん 依子 風もやさしい蒙古草原 七兵衛 あなたへと紙飛行機はゆれながら 遼 ジェラシーという恋の妙薬 小町 朗々と新進女優のオペレッタ しじみ 茶房の隅に尉と姥あり 百合子 露店市西瓜をどさと買いこんで 七兵衛 避暑地を目指し月の国道 依子 誘拐をされし気弱なエイリアン 小町 うつらうつらと転寝の夢 遼 たっぷりと花そそぎませ義士の墓 しじみ ビルの谷間を労働歌ゆく 百合子 ナオ陽炎の罠にはまって物忘れ 依子 箪笥預金をまた移し変え 七兵衛 羽二重の着物はむろん福井産 遼 願い事なら無病息災 小町 矍鑠と雪けむり蹴り斜滑降 しじみ 手を取り合って狐火を見に 百合子 好きですの小さな声は闇の中 七兵衛 ルパンに心盗まれており 依子 黄金比いと美しき数値にて 小町 千の綱垂れ走る帆船 百合子 たちまちに雲の切れたる月まどか 遼 湯加減いかがとちちろ窺う しじみ ナウ新米の炊ける香りが嬉しくて 依子 喜寿の親父は杜氏一筋 七兵衛 ちかごろは趣味の画才も認められ 遼 巣箱賑わう中庭の景 しじみ 花の中サンピエトロに鐘の鳴る 小町 そぞろ歩きの暖かき宵 百合子 平成17年2月20日起首4月3日満尾 |
☆福井県議会議長賞 歌仙「万緑」の巻 香川県 田岡 弘 捌 万緑や地図には赤き現在地 田岡 弘 声をかぎりと鳴くは初蝉 多村 遼 手づくりのパイの思はぬ出来映えに 弘 ベストセラーは読みかけのまま 遼 天心を皓々として望の月 弘 小鳥放てば風になるらん 遼 ウ 爽やかにさざなみ寄せる浜辺には 弘 会釈を交す妙齢のひと 弘 片恋の痛みの残る日記帳 遼 涙の痕にいつか微笑み 弘 黙々と戦禍の村に井戸を掘り 遼 神に祈らん世界平和を 弘 月冴えて歓喜の歌を高らかに 遼 スノータイヤの威力抜群 弘 ブーム追ふ秘湯めぐりのカメラマン 遼 心にとめる一瞬の技 弘 初花のあたり仄かなにほひして 遼 何にたとへん春のあけぼの 弘 ナオ若駒に少年の夢果てし無く 遼 自由自在にタイム・スリップ 遼 古文書の謎にすっかり嵌り込み 弘 壁の染みさへ物の怪に見ゆ 遼 泣く子にはとても叶はず買ふ金魚 弘 雨宿りして過ごす夕立 遼 ヨン様にやまとなでしこ奪はれて 弘 脇目も振らず愛はひとすぢ 遼 抱き合ふただそれだけで幸せと 弘 不意に扉を叩くのは誰 遼 雲間より洩れゐる月の永平寺 弘 坂の途中で拾ふひょんの実 遼 ナウ川土手に聴くフルートに秋更けて 弘 キャッチボールも懐かしき父 遼 SLの窓に景色の移りゆき 弘 旅にしあれば憂さも吹っ飛ぶ 遼 けふよりも若き日はなし花に酌み 弘 遥か彼方へ霞む連山 遼 平成16年7月1日起首8月2日満尾 |