国民文化祭2004ふくおか

☆文部科学大臣奨励賞
    半歌仙「白蓮」の巻  
               香川県  田岡 弘  捌

  白蓮のそよぐや戦なくならず      田岡 弘  
     波紋のこして消ゆる翡翠     多村 遼  
  胸中に秘策をひとつ温めて           弘  
     バッターボックス包む歓声        遼  
  野も山も月のしづくに煌けば          弘  
     新酒の香りことのほか良し        弘  
ゥ 移ろひの秋を異国に惜しみつつ        遼  
     触れる手と手にはしる衝撃        弘  
  永遠の愛を紡いでゆく二人           遼  
     終り気になる推理小説           遼  
  懸案の拉致の解決ままならず         弘  
     玄海はるか浮かぶ島々          弘  
  月冴えて御仏の顔おだやかに         遼  
     恩師の偉業しのぶ襖絵          遼  
  客席にカーテンコールいつまでも        弘  
     浮かれし猫のよぎる裏町         遼  
  うたかたの今生なれば花に酔ひ        弘  
     朝寝の夢にふるさとの母          遼  
        平成15年7月25日起首8月15日満尾
            
☆国民文化祭実行委員会会長賞
   半歌仙「落椿」の巻  
        兵庫県   三神 あすか 捌

  沈黙の地を炎(も)えたたす落椿 三神あすか 
   雨の霽れるたる寒明けの径  多村 遼  
  漣波へえり挿す小舟漕ぎ出でて       あ    
   オカリナを吹く子ゆきつもどりつ  遼
 ぽっかりとビルのはざまに月今宵    あ  
      濃き珈琲の香り身に入む      遼  
ゥ 文机に昼をまどろみ去来の忌       あ  
      菊慈童あれ夢幻舞ひたる     遼  
  つつがなく共に金婚迎へんと       あ  
      炭つぐ尉に姥のねぎらひ      遼 
 人道といふ義を鎧ひ派遣隊          遼
       旅のメールもドット・JP       あ
 有明の月を追ひかけ登山バス        遼 
       誰を呼ぶのか不如帰しば鳴き   あ 
 ああ明治大正昭和遥かなり         遼
      八重の潮路に風は百態        あ
 花うかべ螺盃交さん志賀島          遼 
      神の絵筆にかかる初虹     執筆  
  平成16年2月12日起首22日満尾
         
☆福岡県議会議長賞 
   半歌仙『ラムネ菓子』の巻      
            三重県     多村 遼 捌

 晩夏光セロファンに透くラムネ菓子      多村 遼 
    藍の浴衣に帯もきりりと          田岡 弘 
 手と手と手千年杉を囲むらん              遼 
    雄々しくなりて駈けてゆく駒            弘 
 けふの月待てば地平のきはやかに          遼 
    汽笛身に入む国境の村              弘 
ゥミレー作落穂拾ひの謎めきて              遼  
    エアメールには書けぬ真実            弘 
 酔ふほどに焦がれせつなき胸のうち          遼 
    鬼女の根付は垂涎の的              弘 
 万策はつきて株価もままならず             弘   
    柝の音も高く夜回りのゆく             遼  
 寒行の僧に鋭き剣の月                 弘 
    山また山の遠きふるさと              遼 
 こんなにも高いか父の肩車               弘 
    耳をくすぐる風のやはらか             遼  
 玄海をまなかひにして花の宴              弘
    うつつの夢に双蝶の舞ふ             遼
    平成15年8月2日起首10月10日満尾
   
☆苅田町議会議長賞
    半歌仙「無心といふは」
          香川県   田岡  弘 捌

綿虫や無心といふは難しく     田岡 弘 
    静寂の果てに眠る山並    多村 遼 
 だし抜けにドアを敲くは誰ならん      弘 
    プロローグにはチェロの独奏     遼 
 叢雲を解き放たれしけふの月       弘 
    犬の迎へる木犀の駅         遼 
ゥ 碧い眼も秋の祭の行列に        遼 
    片言なれど愛の告白         弘 
 願わくは時よ止まれと抱きあひ      遼 
    うつつに返る警策の音         弘 
 フセインの夢の終わりし穴の中      遼 
    地平線へと一筋の道          弘 
 月涼し秘蔵の酒を囲みゐて         遼 
    軒の忍に想ふいにしへ         弘 
 神さびる香椎の宮をおとなへば       弘 
    鷹のやうやく鳩と化す頃         遼 
 大河いま滔々として花筏           弘 
    画布いっぱいに満ちてゆく春     遼
  平成15年11月21日起首12月22日満尾   
☆福岡県連句協会会長賞
    半歌仙「夢育つ」の巻   
             茨城県   城 依子  捌 

 深秋や湾に真珠の夢育つ      城   依子 
    マスト影曳く月の突堤      小山百合子
 風炉名残遠来の友正客に      齋藤   桂 
    雅びに掠る筆は誰の手     山寺たつみ
 少年のハスキーヴォイス変声期   多村   遼
    夏色の街走り続ける             依 
ゥ誘われて四万六千日詣で             百 
    餌をねだり寄るひと群の鳩         桂
 静かさが戻る戦禍の村の午後          み
    ブルカの裡の瞳清しく           遼
 赤い酒呷りて共に堕ちゆかん          依
    闇の深さに軋む階              桂
 月冴ゆる鯉沈々と眠るらし            み 
    スケート靴が少し窮屈          百   
 幼な顔物言いどこか大人びて           桂
    きりきりと巻く機関車の捻子         百
 英彦山へ久女偲ばん花の旅           遼 
    紅緒に残る白き春泥              み 
     平成15年11月6日起首12月13日満尾