2018(平成30)年 日本連句協会『連句年鑑』KUSARI

 WEBめぎつね座KUSARI『たのしい三句たち』

 一月一日(日)           (127455)
  初夢の床雨が窓打つ           ゆづ
 人生の双六まだまだ上がらない       ひわ
  靴を減らして進む明日へ         ザリ
 一月一日(日)           (127460)
  未来を担う子らに幸あれ      まちぼうけ
 蓑虫にだって大きな夢がある         兎
  月を目指してバンジージャンプ      ザリ
 一月二日(月)           (127465)
 肩のこりなんぞ無縁の時もあり        蕗
  前世はきっとクラゲだったの    カンちゃん
 白い月外環状の交差点           のら
 一月七日(土)           (127534)
  触れ合う肩に胸がどきどき      ハッピー
 アカシアの花におう日のかるいキス    コロン
  五十年ってアッという間で        天球
 一月八日(日)           (127554)
  黒猫跳んで闇に紛れる         コロン
 あのアリア夜の女王のうたう声        藍
  月下美人の甘い香りに          ザリ
 一月十二日(木)          (127614)
  夢から覚めて鉄格子凍て          兎
 百獣の王くぐりたる炎の輪          麦
  老いて知りたる土と草の香     カンちゃん
 二月三日(金)           (127911)
 ほらご覧あれが日付の変更線        のら
  足元注意段差あります          天球
 天国に至る近道花吹雪            麦
 二月三日(金)           (128046)
  グルーミングの効果あらわる       ゆづ
 あら悪い人ねとまたも惚れられて       唯
  手を引っぱられ麦畑まで          兎
 二月三日(金)           (127906)
  禅修業する色葉散る寺       まちぼうけ
 つのりたる恋の水茎美しき          鶫
  先ぶれの児のよく透る声        あずき
 二月六日(月)           (127951)
 げじげじは馬に蹴られて死んだはず      兎
  どんでん返し世界どこでも         麦
 海峡を渡る難民異邦人         不用之助
 二月十七日(金)          (128151)
  パワーシャベルの免許取り立て      ザリ
 国境も超えて暴走止まらない       タヌ公
  愛されるより愛したいから        小町
 三月十五日(水)          (128474)
  バーボン揺らし聞きほれるジャズ   ハッピー
 エイリアンそこはかとなき憂い顔     タヌ公
  言葉と心距離が離れて       カンちゃん
 三月十九日(日)          (128517)
 鬼よりも強い鍾馗が京の屋根        天球
  行くか戻るか六道の辻           麦
 公文書隠し続ける私です        不用之助
 三月二十二日(水)         (128553)
 情動の海に溺れる春に修羅         小町
  賢治先生下の畑に             兎
 給食の人参だんだん好きになる        鶫
 三月二十五日(土)         (128602)
  自己申告でシニア料金        ハッピー
 リンスする親の遺伝の若白髪         麦
  遠い先祖は浦島という         タヌ公
 三月二十八日(火)         (128630)
  忖度の意味読み方を知り         ザリ
 朝の空よりも桔梗の色深く        タヌ公
  墓参の足をしばしとどめる     カンちゃん
 五月六日(土)           (129232)
  もう逢えないと知っていた彼        藍
 哀しみに時がベールを掛けて行く      ひわ
  レンジの中で回るじゃがいも       天球
 五月十三日(土)          (129357)
 空青く風の囁き木々歌う          ザリ
  人類史ならすでに閉じられ       タヌ公
 恐竜の母のエプロンフリル付き       小町
 五月十九日(金)          (129457)
 宇宙旅行終えて未来の花の下         藍
  美女の定義のかわるうららか      あずき
 アラ私こんなにもてていいかしら      ひわ
 五月三十日(火)          (129635)
 はかなきは宛先のない恋の文        ひわ
  小鳥に聞いた君の奥津城          藍
 曽良の旅かくして壱岐に果てるとは      麦
 六月一日(木)           (129664)
  殻を脱ぎたい蝸牛いるかも       コロン
 なめくじが親子ローンで買った家      ザリ
  跡形もなしかじるべき脛      カンちゃん
 六月六日(火)           (129731)
 狐火はポンポコ山のポのあたり        兎
  置き薬屋がマスクして来た         舟
 噂では奴が再婚したらしい        タヌ公
 

 七月四日(火)           (130148)
  赤いネクタイコンビニ弁当         藍
 大統領今日もツイッタ―書き込んで    コロン
  君の真実僕の真実             合
 七月五日(水)           (130159)
 曲がったこと嫌いと嘆く竹定規       ゆづ
  どの辺までが蛇の顔なの          兎
 絢爛の舞台に見惚れる道成寺        ひわ
 七月十一日(火)          (130235)
 水田を吹き抜ける風青々と         ザリ
  河童のペアが語る将来         タヌ公
 信頼の投資信託みつけおり         小町
 七月二十日(木)          (130373)
 地下鉄でラーメン食べるユーチューバ―  美句志
  風がないのに揺れる風鈴          鶫
 夫には言いたい事があるらしい      コロン
 八月五日(土)           (130662)
  今日のプレゼン準備万端        美句志
 抑止力実は真逆の誘発力          道草
  「ヒバク」の国は傘にもぐって       藍
 九月十日(日)           (130875)
 戦車群スマホ画面を行進し        タヌ公
  新聞記者の眠れない夜          ゆづ
 魂をどこに置き忘れたのやら     カンちゃん
 九月二十九日(金)         (131176)
  百万本の薔薇の待つ城          ゆづ
 叶わない恋も過ぎれば美しい        ひわ
  君の孤独を終わらせに来た     カンちゃん
 十月四日(水)           (131242)
  今日は楽しい月見泥棒       まちぼうけ
 誘うならバッタのような人が良い       兎
  ばかにしないで青くさい恋         藍
 十月十三日(金)          (131366)
 くるくると尾っぽ丸めたはりねずみ   ばらずし
  専守防衛球状を死守           道草
 UFO友好サイン模索中            小町
 十月十三日(金)          (131378)
  ダマスカスには恋人がいる      不用之助
 絶対に会えなくなって気づくこと       彗
  空はこんなに青く広くて        コロン
 十一月十二日(日)         (131927)
 笠を着て連句を付ける男あり        天球
  刀捌きの躍る月明          たつきち
 銅鐸の紋様秋の祈りとか           合
 十一月十三日(月)         (131954)
  Jアラートでひつじパニック       道草
 舟虫が緊急会議の汐だまり          兎
  パナマ文書がついに流出       不用之助
 十一月十八日(土)         (132028)
  テーマソングは青春歌謡         ひわ
 妖精の声追いかけて花散りぬ       コロン
  ぬらりひょんとはこんな顔かえ       唯
 十一月十九日(日)         (132043)
 テリヤキのバーガーどさりお土産に   不用之助
  げに妹の食い気恐ろし         タヌ公
 ロシア系遺伝を誇る腰回り          麦
 十二月一日(金)          (132224)
  ご飯一膳食べる幸せ           のら
 鉄鉢の僧の歩みは弥陀まかせ       あずき
  蓮の花咲くまひるまでした         藍
 十二月二日(土)          (132095)
 成上り者の安らぐ綿布団         あずき
  頓挫している夢がいくつか         蕗
 つかつかと過去の自分の足音が        唯
 十二月十日(日)          (132329)
 西日さす吊広告のエーゲ海          兎
  青年の目に翳る退廃            藍
 身を捨つる国より酒を呑むがいい       合
 十二月十三日(水)         (132363)
 まどろんでいたのは春の女神さま      ひわ
  ネプチューン来てそっと囁く      コロン
 とりあえずビットコインを買ってみて   美句志
 十二月十七日(日)         (132429)
 野菜からえぐみくさみは消えていき      合
  年末工事いそぐクレーン          藍
 サバンナが見えるかキリン首伸ばす      唯
 十二月二十三日(土)        (132520)
  穴のあくほど見る彼の顔         柳雪
 付き添いも可なり米寿のクラス会       兎
  男どき女どきは流れゆくまま      あずき

平成二十九年一月一日ー十二月三十一日(No.127455ーNo.132615句)より抜粋
於・HP矢崎藍の連句わーるど総合BBS

連句KUSARI」はインターネットBBS上で不特定多数の連衆により巻かれている鎖連句。連句特有の表現「付けと転じのメカニズム」を保持しつつ99年2月1日開始以後現在も13万番をこえて継続中。