ひととき止まる蝉の合唱 葵 (2014/7/31~9/18)

前句   ひととき止まる蝉の合唱  葵


「募集」中日新聞2014年7月31日(木)募集

 (傾けてグラスの氷からころと  やっこ)
バーの片隅聴きほれるジャズ     ハッピー
憧れましたウエスタンヒーロー      旦喜
 (傾けてグラスの氷からころと)
仲良しこよし与野党議員        奥村晋
 国会は危機感あるのか。む。国民もですね。
 (傾けてグラスの氷からころと)
もっと聞かせて身の上話         泰枝
 梅雨どきのグラスをめぐる思いは過去未来宇宙にまで広がりましたね。多数の付け句ありがとうございました。佳句をまだまだ手元に残しつつ発表はここまで。さて、つぎの宿題ですよー。
 ひととき止まる蝉の合唱  葵
 この七七句に五七五句を付けてみませんか。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
手羽先も揚がり冷やした瓶ビール   芙美
 蝉の声の中でいかがおすごしですか。この暑さに食う寝る働くわれらが日々を句にしてみましょ。もちろんひと様も観察。想像は自由自在に。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
初デート君が浴衣で来るなんて   あづさ
 おお、蝉も黙る恋句も。お出かけの海、山、故郷の風景、動植物や出会ったできごとあれこれ。そして国内国外厳しい局面の時事句もぜひ。
付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。八月十日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「しめきりですよ」中日新聞2014年8月7日(木)締切

 募集付け句はもう出されましたか。
 (ひととき止まる蝉の合唱  葵)
お互いに暑さ嘆いて右左      たつみ
 どなたに会っても話題は同じ。炎天の蝉の声って止むとまた一段暑いんですよねえ。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
ひらひらとすけすけすんなり白い脚   藍
 いろっぽい姿が闊歩。え、いろっぽすぎる?
 (ひととき止まる蝉の合唱)
躓いて飛んでくボクの棒アイス   モニカ
「あああーっ! と・ん・で・い・く! スローモーションでお送りしました」って。ははは、
子供が転んだ手からすっ飛んだ棒アイス。それが弧を描いて、ちょうど蝉が黙った夏の光の中をゆく。恨めしー。こんな小さなことを私たちはなぜおもしろいと思うのか。たぶん私たちの生に限りがあって、一瞬、一瞬を生きてるからなんでしょうね。付け句は前の句とつなげて見る人生の切れっ端。食べる、昼寝する、働く、思うーこの夏の身近な暮らしの風景を句にしてくださいな。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
お盆です母の残した白い百合     ザリ
発表は九月にかかります。夏休みの終わる残暑のころまでの句をどうぞ。時事句も。SFも。
付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。八月十日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「俺たちの」中日新聞2014年8月14日(木)発表1

 (ひととき止まる蝉の合唱)
シャツタオル山の洗濯干しきって   かーぽん
 「猛暑もなんの活動的なうちの家族。結果連日山盛りの洗濯物を洗い上げ竿に干す達成感!」
お隣はハワイへうちは昼寝です     三十路
 ハハ、それぞれの夏。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
渾身の想いをこめたプロポーズ      暉子
 うるさいほどの夏のBGMですが、数年もの地
中生活を経た、雄蝉たちのラブコールなんですよ
ねえ。
俺たちの恋路邪魔するにわか雨     たんき
 (ひととき止まる蝉の合唱)
パラソルも今日逢う人を知っている   絵日傘
 くるくるまわって、あなうれし。
胸元に君の鼓動が伝わって      ハッピー
 まあ、接近!
 (ひととき止まる蝉の合唱)
昼下がり不戦を誓う終戦日        村良
黙祷の間に浮かぶ顔いくつ      岩崎尚子
 呼び起こされる過去の思い。永い一分です。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
外遊にガザを横目の武器セールス   山本尚子
 悲惨なガザの映像が世界に送られても、政治は戦争で儲け、生業とする。九条をもつ国までが。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
風鈴もお鈴も澄みし音響く         紅
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「落武者」中日新聞2014年8月21日(木)発表2

 (ひととき止まる蝉の合唱    葵)
暑いとは言わずもがなやアツイナモ  もりしげ
 はあ、真っ盛りですねえ。
歩く?待つ?次発のバスは二時間後  くゆたん
 そんな。
潮時ね別れましょうか暑いから    橋本悟郎
 これこれ、早まらないで。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
冷や汁と野菜の天ぷら生ビール     お佐代
 冷や汁は冷やしご飯に味噌汁かけの郷土料理。でも今はレトルトにもなるメニューとか。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
人混みに忘れたはずの彼みつけ    えつひろ
 「高校時代三年間片想いしたひと」ですって。
振り向いた君の瞳にぶつかった     ミモザ
 ドキン。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
ふるさとの祭を告げる昼花火     三島園子
村はずれ大栃の木を揺らす風      みゆき
 樹齢何年か。過去何万の蝉とお知り合い。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
落武者の一人おくれて行くもあり    タヌ公
 おお、タイムスリップ。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
雨あがり郡上踊りの下駄の音       和子
 お盆には徹夜踊りもあったんですねえ。
馬龍宿トマトの冷える水の音        暁
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「氷山ゴロリ」中日新聞2014年8月28日(木)発表3

 (ひととき止まる蝉の合唱    葵)
信号待ち街路樹もない炎天下      沢登
 アスファルトジャングルに立っている時間は都会の忍の一字です。汗たらーり。
脳の味噌腐らぬように夏帽子    近藤スズ
 なるほど。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
不意打ちの訪問客にズボンはき   ウッチー
 すててこ姿健在。お父さん、ほらチャック! 
 (ひととき止まる蝉の合唱)
徘徊と思われそうなウオーキング 宇井美和子
 大股で地面踏みしめて? ぶうらりもいいよ。
今は亡き愛犬の声散歩道        エル
 (ひととき止まる蝉の合唱)
献立を探すマウスの頼もしい     由美江
 パソコンでレシピ検索。がんばれ。
なすトマト作り置きするラタトゥイユ ひろみ
 フランスはニースの野菜煮込み料理ですって。にんにくや香料たっぷり。夏バテ回復に。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
北極で氷山ゴロリ一回転       草笛奏
青い海に浮かぶ白い巨大氷塊も、誕生あり崩落あり。極地をみはるかす涼しい夢。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
爆撃機飛んで来ないで子らの上     赤丸
 TV画面が、よその国の他人事とは思えない。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
信仰はさておき歩く熊野道     惠美ばあ
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「懲りもせず」中日新聞2014年9月4日(木)発表4

みんみんも熊蝉もつくつく法師に交代ですね。
 (ひととき止まる蝉の合唱    葵)
日焼して走る部活の列とぎれ     太田友子
 夏休み終わっちゃったー。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
久しぶり友は別人超スリム      折目惠子
 む。じっとわが腹をみる。 
 (ひととき止まる蝉の合唱)
好きですとやっといえたわかき氷     のん
暑かったファーストキスのあの夏も    泰枝 
 ふふ。ふたりとも汗ふいちゃった。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
後輩に壁ドンしてとせがまれて      雨蛙
 「壁ドン」って少女漫画ふうのシーンなんですね。向き合った彼女を壁に追いつめ、片腕で壁をドンとついて見つめ合う。中高校生から広がりつつある、女子憧れのシチュエーションだとか。乙女チックは永遠なり。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
階段を上りきったら大ムカデ    まっちゃん
「今年三回目の対面。家の中に住んでるかも」
蟷螂とおんぶバッタの睨めっこ    のうさぎ
草むらではバッタがピンチ! 捕食の闘い。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
誰もいぬ避難区域をおおう葛       克人        汚染されている地でも自然は今の夏を謳歌。
懲りもせずすすむ原発再稼働        蕗
   (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「夕暮色」中日新聞2014年9月11日(木)発表5

 (ひととき止まる蝉の合唱    葵)
噴水のしぶきに街はまぶしくて      ゆめ
 ぶり返す日射しは強いですね。
稲光そろり近づく黒い雲      ターボん家
沛然とゲリラ豪雨がわが町に       舞句
 それにしても雨が各地に厳しい夏でした。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
猿逃げる坊ちゃんかぼちゃ胸に抱き  大畑杉子
 坊ちゃんかぼちゃー小ちゃな南瓜を抱いた猿の姿。コラッといいつつ憎めませんね。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
声変わりした孫詐欺とまちがえて     黒石      
 「ひどいなあ、じいじは」「すまんすまん」
芙蓉咲く孫の顔より大きくて     塚本益美
庭の主役も交代です。 
 (ひととき止まる蝉の合唱)
あの人の転勤知らせ突然に       アメリ
耳の奥リフレインするプロポーズ  とだちゃん
 どうしよう。
ぬける空真夏の恋にさようなら    ふみっち
 ああ、思い出になっちゃうー。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
木もれ日にきみの未来がとけてゆく  志賀則子
「上の子の最後の夏でした」と。哀惜。
 (ひととき止まる蝉の合唱)
誰よりも早く秋知る保線班        利家
ひぐらしのトレモロ谷は夕暮色      ひわ
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「募集」中日新聞2014年9月18日(木)募集

 (ひととき止まる蝉の合唱    葵)
緑陰で資格試験の中休み       羽下正一
飛行場着陸態勢オスプレイ      石田吉保 
 (ひととき止まる蝉の合唱)
行合いの空亡き父の照れた笑み     眠り猫
ひぐらしのトレモロ谷は夕暮色      ひわ 
 行く夏来る秋。一刻の生を惜しむ佳句多数ありがとうございました。右の夕暮色の句は先週ルビが違いましたね。訂正しておわび再掲載です。 
さてつぎの宿題ですよー。
この星にいてなぜか出会えた   里奈    
 この七七句に五七五句を付けてくださいな。  
 (この星にいてなぜか出会えた) 
潮風にさらさらなびく君の髪     こと    
 この世でなぜか会えた不思議なご縁。恋はもちろん家族、友人、ペットー辛いとき楽しい時を共に生きる仲間との物語を。大笑いも句に。
 (この星にいてなぜか出会えた)  
公園で俺の血吸った蚊をパッチン    藍
 遠慮したいご縁もあるぜ。身近な生き物、小さな草花にも目をとめて(発表は十月なので季節は秋で)、大自然の感動の風景も。そうそう「この星」はふつう地球という星でしょうが、他の星ととればアニメ、SFふうの句で遊べますね。 付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。九月二十八日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)