傾けてグラスの氷からころと やっこ (2014/6/12~7/31)

前句   傾けてグラスの氷からころと     やっこ

 


「募集 」中日新聞2014年6月12日(木)募集

 (またしてもつまらんことでけんかして 芙美)
犬抱きしめてあんたが一番       ジゲン
こちら渋滞あちらスイスイ        泉水
 (またしてもつまらんことでけんかして)
意地があります蕎麦屋でひとり     りんご 
手づくりケーキひとりバカ食い      しん
 (またしてもつまらんことでけんかして)
あれが最後と思わなかった       いえな
呑める弱さと呑めぬさみしさ       獅狼
 さて佳句手元に惜しみつつ発表ここまで。ありがとうございました。もう夏。つぎの宿題です。
 傾けてグラスの氷からころと     やっこ
この五七五句に七七句を付けてください。
 (傾けてグラスの氷からころと)
ようやく君とみる大花火        玲
 恋の場面もいいですね。相手はどんな人? 会話は? 自由に想像を。ええ、経験でも夢でも。  
 (傾けてグラスの氷からころと)
いまの会社も辞めどきかしら      藍      
 ひとりの心に浮かぶことも。すてきなことから心配なことまで暮らしさまざま。時事句も。
(傾けてグラスの氷からころと)
夜行列車の窓に街の灯         葵    
 発表は七月いっぱいなので雨の句や梅雨明けの暑い句もぜひ。付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。22日(日)までにご投函を。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)

「しめきりですよ」中日新聞2014年6月19日(木)締切

 (傾けてグラスの氷からころと  やっこ)
ショートカットの白い首すじ      藍
 夏の女です。
感じる視線気づかないふり     あづさ
 うふん。
付け句宿題はもう出されましたか。恋句だけでなく生活の実感も。お笑い句、時事句も。
 ところで、付け句好きの皆さんに情報です。付け句は前句付けともいわれて、中世、近世から楽しまれてきた民衆文芸ですが、ただいま島根大学が「第2回しまだいユーモア連歌大賞」として付け句作品募集中です。今年の課題前句は1「スーパーの庇を借りるたこ焼き屋」に七七句を。2「親が子供に叱られている」に五七五句を。はがきでもFAXでもweb応募でもよし。詳細はホームページ(しまだいユーモア連歌大賞で検索)や島根大学の連歌大賞係(電話0852―32―6603)へお問い合わせを。最終しめきりは八月三十一日とのこと。まだ時間がありますからゆっくり案を練り、このコラムで日ごろ培った実力を発揮してみてくださいな。
あ、ただしこちらの付け句をまず出してからね。
 (傾けてグラスの氷からころと)
夏の月見る出張の宿         芙美
 発表は七月いっぱいなので雨の句や梅雨明けの暑い句もぜひ。付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。22日(日)までにご投函を。七七句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「黒糖梅酒」中日新聞2014年6月26日(木)発表1

 (傾けてグラスの氷からころと  やっこ)
あじさい濡らす雨に乾杯       みどりん
もうすぐ咲くねくちなしの花       村良
 あなたのそばにもしっとり梅雨がきましたか。
 (傾けてグラスの氷からころと)
駅のホテルの51階           雨蛙
まだ君の名は聞かずにおこう       哉子
 うん、急がずに。
遅れてごめん手にはブーケが     柏原久子
やっほー、こちらはすてきな一瞬!
 (傾けてグラスの氷からころと)
クジラ遠くへウナギお前も       やすを
 まあまあ。それよりわが家の味で。
君と猫とに足す鰺フライ        三十路
十年ものの黒糖梅酒          ちひろ
 (傾けてグラスの氷からころと)
息子が聞き入る現場の話       かーぽん
 「主人今年度末に定年。今年息子も念願の教員に。父にアドバイスを求めにきて」いいお酒!
 (傾けてグラスの氷からころと)
ひとりでつらい命日の酒        すま子
 「よくふたりで飲んだのに。三回忌です」
あざみの浴衣似合った君と        暉子
 「六十年前婚約中だった亡夫とのデート」年経るごとに鮮やかになる思い出もあります。
 (傾けてグラスの氷からころと)
ひとりになれば孫が生きがい        幸
戦争しない国でいようよ        まさ美
   (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)
「マルスの酒」中日新聞2014年7月3日(木)発表2

 (傾けてグラスの氷からころと  やっこ)
グリーンカーテン揺れるベランダ    モニカ
 「狭いけど癒やしの空間。今年も伸びてます」
ヤモリがぺたりキッチンの窓       なお
「毎年同じヤモリ? もしや子孫?」かくて夏です。
 (傾けてグラスの氷からころと)
決まらなかったシュート悔しく      恵紅
 W杯敗退―もう少し楽しみたかったけど。
 (傾けてグラスの氷からころと)
彼のマンションうちの真向かい     眠り猫
あの人今頃家庭団らん           悦
 「最近異性への執着心薄れつつあって、まあ、あの頃は苦しかったなあなどと思ってみたり」
狙い外した四十の私         あんでん
 「また独り飲みの夜。プハッ」
婚活よりも就活がさき       イツモくん
 「毎日自分が食っていくことだけでたいへんなんです」これからどんな時代になるのか。
 (傾けてグラスの氷からころと)
誓った筈の戦争放棄           節子
政治の軽さ命の重さ        木村れいみ
 「テレビのニュースに新聞の政治面に毎日怒っています」
 (傾けてグラスの氷からころと)
マルスの酒を注ぎ急ぐ今      水野千恵子
 マルスはローマ神話の戦さの神です。暴走をとめなくては!。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「もう五千年」中日新聞2014年7月10日(木)発表3

 (傾けてグラスの氷からころと  やっこ)
蛍はいったほたるぶくろよ      伊藤紘美
 花びらの中でほんのり光るーうつくしい生きものはやはり逃がしましょうか。夜の空に。
浴衣の蝶々どこへ飛んでく      えこりん
 あらあら。今夜って夢の中なのかな。
 (傾けてグラスの氷からころと)
君を口説いた小さなスナック       瓜也
カウンターの隅モト彼すわる     伊藤千敏
 グラスをもって、いろんな人がいますね。
 (傾けてグラスの氷からころと)
テラスの君はオーラいっぱい      絵日傘
さそり座どこ?と君が近づく      ふさ子
 南に低く横たわる夏の星座。ところで私もさそり座の女よ。
 (傾けてグラスの氷からころと)
天の織姫ほろ酔い気分        ふみっち
 「牽牛さんおそいわねえ」。
虹の色した今日のカクテル     宇井美和子
天の川から注ぐカクテル        みゆき
 でかい趣向ですね。ごちそうさま。あ、やっぱ
りこのごろはやりのミルク割りですよ。
 (傾けてグラスの氷からころと)
シェーカー振ってもう五千年      タヌ公
 「私の故郷ですか。遠い星です、お客さん」―スペースバーのチェーン店開いたんですって。「地球は青くて、ここ、平和そうな島ですね」「――」真夏の夢はこれからうなされそう。
   (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「コクリコの赤」中日新聞2014年7月17日(木)発表4

 (傾けてグラスの氷からころと  やっこ)
三日続きのむしむし暑さ       木村正夫
いさぎよすぎる紫陽花の青         暁
 雨にうたれて鮮やかに。おお、負けそう。
 (傾けてグラスの氷からころと)
さよならのこし軽い足どり      やっと亀
 「この一年彼女との関係は何だったんだろ」
あの夜行バスいま雨の中       ドロン
 行っちゃったなあ。
 (傾けてグラスの氷からころと)
命ながらえ恋せよ熟女         むゆう
 どこまでもオシャレでね。ふう。がんばらにゃ。
ブランド傘をどこへ忘れた        めぐ
スマホ出してはまたひ孫見る      庭バー
 遠くからリアルタイムに写真が来る。こういう生活をするとは思わなかったでしょう。
 (傾けてグラスの氷からころと)
医師楽しげにポリープを取る        恵
 「若い先生がすいすいと」やれ、よかった。
がんとたたかう息子四年目      小林きね
 闘うお仲間は今たくさん。フレーフレー。
 (傾けてグラスの氷からころと)
燃える思いはコクリコの赤        ひわ
 コクリコは雛罌粟。フランス語です。与謝野晶子が夫の鉄幹を訪ね「仏蘭西の野は火の色す」と歌いましたよね。もう一句きりり赤い花を。
 (傾けてグラスの氷からころと)
媚びることなき芍薬の花        あずき
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)


「自由の女神」中日新聞2014年7月24日(木)発表5

 (傾けてグラスの氷からころと  やっこ)
パンツ一丁の子らに給水        ぐー。
 「うめー。ゴクゴク」さあ老いも幼きも水分しっかりとる夏ですよー!
今日はトマトの脇芽摘まなきゃ     かおり
 (傾けてグラスの氷からころと)
もしもたとえばだけどやっぱり      更紗
 迷い多き現代人。でも想像の九割以上は脳のつくりだす妄想。さあ、吹っ切って!
もう今日からはありのまま行く     ちひろ
 (傾けてグラスの氷からころと)
十年経ったらあなたもわかる      ミモザ
 「老眼」ですって。いつかはいろんな老いを、いやってほど体験しなくっちゃね。
覚悟するしか老老介護       横山美枝子
 (傾けてグラスの氷からころと)
ガイドブックは旅の始まり       りんご
モンマルトルは夢碧き空          紅  
 ああ、行きたい。ルノワールにピカソ、芸術家たちの群れたあの丘へ。
 (傾けてグラスの氷からころと)
自由の女神よ君は自由か       くゆたん
 「夏にニューヨーク行き。彼女に訊いて来ます」と。自由競争のアメリカンドリームと格差社会と。さて、その合衆国を追ってきた日本のゆくては。
 (傾けてグラスの氷からころと)
かすかに聞こゆ草刈機の音      塚本益美
一週間がまたも始まる          芙蓉 
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)