またしてもつまらんことでけんかして 芙美 (2014/4/25~6/12)

前句   またしてもつまらんことでけんかして 芙美


「募集 」中日新聞2014年4月25日(木)        


 (夢からさめて辺り見まわす)
言い直しきかぬ失言もごもごと   石田喜美子

 夢でよかった。
アラームを鳴らさぬ幸せ定年後        泰枝
さあ今日は何して過ごそう老いの杖    中谷寛
なつかしき顔ぶれ去りてまだこの世 柴田美智子
 (夢からさめて辺り見まわす)
東北が前の姿に戻ってた             武
 なんとせつない。夢と現実の境をゆききする付
け句いかがでしたか。さてもう若葉の香る季節。
次の宿題です。ちょっと遊びましょうか。
  またしてもつまらんことでけんかして 芙美
 この五七五句に七七句を付けてみませんか。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
隠しておいたアンパンがない          ザリ
      うふ、サザエさん世界ですね。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
ゴメンとメール空港ゲート            藍
 他愛のない日常のけんかのタネ、小さな物語を。
これも人生のさざ波、思い出です。ご経験だけで
なくよそさまの噂、 想像でも。恋、時事、私たちを
包む初夏の美しい風景句もぜひ。微笑、大笑歓
迎です。付け句ははがきで〒460 8511中日
新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、
電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。
五月四日(日)までにご投函を。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)


「しめきりですよ 」中日新聞2014年5月1日(木)        


 宿題付け句はだされましたか。
 (またしてもつまらんことでけんかして 芙美)
布団ありたけ干してバンバン      あづさ
 復讐だああああ。
破れたハートちくちくと縫う          葵
 くすん、こちらはしょんぼり。でもハートをち
くちく縫うとはしゃれた表現でしょう。恋人、家
族、友人、いや宇宙人でも、いろんな登場人
物を考えて、面白い場面、物語を作ってくだ
さい。表現もパワフルやら繊細やら工夫して。
 ところで私のホームページで育っている長い
連句が十一万五千番に達し、またイベントを
してます。今回は各句に「乗り物」を音で詠み
込むんですよ。
115001きれいだね月宮廷の松の上 
                 コロン(熱気球)
115002 なんと六個も食べたお団子 
                   兎(トロッコ)
115003忘れ物ほら古語辞典シャーペンも
                んにゃ(自転車)
 競争詠み込み百句はすごい熱気。言葉遊
びって面白いでしょう。さて皆さんも宿題お忘
れなく。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
柿の若葉の輝ける庭            藍
 付け句ははがきで〒460 8511中日新聞
文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電
話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。五
月四日(日)までにご投函を。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)


「満天の星 」中日新聞2014年5月8日(木)  発表1

 (またしてもつまらんことでけんかして 芙美)
枕が飛べば猫が逃げ出す        てい坊
卵を投げて拭き掃除する        由香里
 あとのことを考えて、落ち着いて投げる物を選び
ましょう。
昨晩投げた指輪はどこだ       伊藤千敏  
 ほらほら。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
つまみも出ない昼過ぎの酒       たんき
 いまどき昼過ぎに主婦は時間外です!
回転寿司の妻の皿数         羽下正一
 金額のこといってるの? もしや体重?
カレーはいつもレトルトがいい    ウッチー
 「エーッ。そんな失礼な」数十年来のあの私の
おいしい手作りカレーよりレトルト! プロ主婦の
プライドを打ち砕く言葉は意外に尾をひきそう。
「楽でいいだろ」という彼の本音はさて?
 (またしてもつまらんことでけんかして)
無言の行が今日で三日目       橋本悟郎
ごめんなさいと言えたあの頃       直美
 (またしてもつまらんことでけんかして)
浮気などせぬ定年間近じゃ      くゆたん
 疑われるだけ光栄。
君にイライラでも愛してる     たまちゃん
 (またしてもつまらんことでけんかして)
あと幾年の思い出づくり      木村れいみ
テントを出れば満天の星         ひわ
   (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)


「恐竜夫婦 」中日新聞2014年5月15日(木)発表2


 (またしてもつまらんことでけんかして 芙美)
メイストームに揺れる街路樹      KKK
 ぐんぐん五月!
僕は暑いよ私は寒い           洋一
 女は冷え性なので冷房が苦手。はやくも空調の
難しい季節ですね。
エアコンが出すエラーのサイン    あんでん
 「未来のエアコンは空気が読めたりして」
 (またしてもつまらんことでけんかして)
巡り会ったも新茶の季節         めぐ
つぎの彼氏のストックがない      れいこ
 ――ま、いっか。人生前進だ。
髪をばっさりベリーショートに    ふみっち
 少年のようなあの可愛い髪型ですよ。
ケッタ飛ばせばそよ風キッス     のうさぎ
 ケッタって自転車のことですね。私は三河へ来て知りました。ペダル踏む感触がぴったり。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
黙って弁当作ってる母          ぐう
「ゆうべの親子げんかのあと娘が出しそびれた弁当箱。けさになってアッと慌てて鞄から出したら、重くてあったかくてびっくりしてました。ふん、まいったか」お母さんってありがたい。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
恐竜夫婦あたり揺るがす        眠り猫
 どわ、ジュラ紀ですか。
小さな地震続く飛騨の地          暁
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「背中を向けて 」中日新聞2014年5月22日(木)発表3


 (またしてもつまらんことでけんかして 芙美)
タマはささ身でオレは豚バラ    嶺澤由美子
 猫にひがまないで。
カレーにいれる隠し味論         涼香
 (またしてもつまらんことでけんかして)
背中を向けてスマホ打ち合う        拓
このゲーム名は「あげあしとり」に    あこ
 「ひまつぶし」ともいうかな。
 (またしてもつまらんことでけんかして )
ほらこぼしたよ箸おとしたよ        申
 「赤んぼでなく爺婆です。よくぶつかります」
これでも共寝五十八年         平郎介
 へへ、のろけちゃって。ごちそうさま。      
おまえ百までわしゃ九十五まで  サリーちゃん
 「うちは五つちがい。けんかしながらがんばるぞ、といいたいけど老後の社会保障が心配です」
 (またしてもつまらんことでけんかして)
宙から見れば国境なし      みの虫アッパ
世界警察卒業したい          かにこ
 「オバマのつぶやき」ですって。
 (またしてもつまらんことでけんかして) 
茹でた卵のどこを割るのか       モニカ
 「ガリバー旅行記に出てくる二つの小人国は、卵を尖った方から割るか丸い方から割るかでもめてずっと戦争してるんですよね」
(またしてもつまらんことでけんかして)
ほんのり紅のあじさいの花     かぐやひめ
 (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「十八の夏 」中日新聞2014年5月29日(木)発表4

 (またしてもつまらんことでけんかして 芙美)
ほうれいせんて君のこのしわ?     真佐美
 「あなたのそのしわのことよ!」
つむじのあたりまるく白いよ       小波      
 「ご親切にっ!」
君の睫毛はどこまでが偽?        らん    
「――」
 (またしてもつまらんことでけんかして)
十八の夏ヘソ出し禁止        えこりん
 父と娘の夏の攻防。
おでこのニキビ気に入らぬ朝      とまと
 思春期のお天気は変わりやすくって。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
あなたの過去が許せないから       燈霞
 あのこと? このこと? え、あれか?
開きなおって秘密保護する        節子
 (またしてもつまらんことでけんかして)
アホとバカとの境名古屋に       タヌ公
 関西人は「アホ」と言い、関東人は「バカ」。
境は名古屋で「タワケ」なんですって。
仕事バカとは現実逃避        伊藤紘美
ほんとは争いがいやな優しい人なのね。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
負けるが勝ちと破る沈黙       ハッピー 
少しおどけて覗き込む夫       岩崎尚子
 あ、笑った!
泰山木の花の白さよ           侘助
 (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「お墓のねだん 」中日新聞2014年6月5日(木)発表5

 (またしてもつまらんことでけんかして 芙美)
キャベツざくざく鍋がぶくぶく     木太郎
チョー堅仕上げだ糊づけシーツ    かーぽん
 わわ、なんかテンション高いわが家!
 (またしてもつまらんことでけんかして)
脱いだズボンは部屋の真ん中     近藤富子
 夫はご主人様であるのか。
偉くないのに失言多く         やすを
 ウハ。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
三くだり半をスマホに入れる      ゆきえ 
 さて、送信―できるか! どきどき。
言葉にできず絵文字並べる       ひろみ
 (またしてもつまらんことでけんかして)
お墓のねだん話が合わず       小林きね
 当分死なないことにしよう。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
日焼け止め塗り庭の草取る       とよこ
 土は心をしずめてくれますね。
万葉集の相聞を読む           鷦鷯
 (またしてもつまらんことでけんかして)
地球のいとこ惑星遥か        山本尚子
 「太陽系からさらに五百光年向こうによく似た惑星が見つかったとかそこにもし生命体があったら、やはりこんな小さな暮らしがあるのかしら。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
故郷の青田渡りゆく風          修一
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「募集 」中日新聞2014年6月12日(木)募集

 (またしてもつまらんことでけんかして 芙美)
犬抱きしめてあんたが一番       ジゲン
こちら渋滞あちらスイスイ        泉水
 (またしてもつまらんことでけんかして)
意地があります蕎麦屋でひとり     りんご 
手づくりケーキひとりバカ食い      しん
 (またしてもつまらんことでけんかして)
あれが最後と思わなかった       いえな
呑める弱さと呑めぬさみしさ       獅狼
 さて佳句手元に惜しみつつ発表ここまで。ありがとうございました。もう夏。つぎの宿題です。
 傾けてグラスの氷からころと     やっこ
この五七五句に七七句を付けてください。
 (傾けてグラスの氷からころと)
ようやく君とみる大花火        玲
 恋の場面もいいですね。相手はどんな人? 会話は? 自由に想像を。ええ、経験でも夢でも。  
 (傾けてグラスの氷からころと)
いまの会社も辞めどきかしら      藍      
 ひとりの心に浮かぶことも。すてきなことから心配なことまで暮らしさまざま。時事句も。
(傾けてグラスの氷からころと)
夜行列車の窓に街の灯         葵    
 発表は七月いっぱいなので雨の句や梅雨明けの暑い句もぜひ。付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。22日(日)までにご投函を。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)