夢からさめて辺り見まわす 霧男 (2014/3/6~4/25)

前句   夢からさめて辺り見まわす   霧男

「募集 」中日新聞4月25日(木)      
 (夢からさめて辺り見まわす)
言い直しきかぬ失言もごもごと   石田喜美子

夢でよかった。
アラームを鳴らさぬ幸せ定年後      泰枝
さあ今日は何して過ごそう老いの杖   中谷寛 
なつかしき顔ぶれ去りてまだこの世 柴田美智子
 (夢からさめて辺り見まわす)
東北が前の姿に戻ってた          武
なんとせつない。夢と現実の境をゆききする付け句いかがでしたか。さてもう若葉の香る季節。次の宿題です。ちょっと遊びましょうか。
  またしてもつまらんことでけんかして 芙美
 この五七五句に七七句を付けてみませんか。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
隠しておいたアンパンがない      ザリ         
うふ、サザエさん世界ですね。
 (またしてもつまらんことでけんかして)
ゴメンとメール空港ゲート        藍       
他愛のない日常のけんかのタネ、小さな物語を。これも人生のさざ波、思い出です。ご経験だけでなくよそさまの噂、想像でも。恋、時事、私たちを包む初夏の美しい風景句もぜひ。微笑、大笑歓迎です。付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。五月四日(日)までにご投函を。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「心電図 」中日新聞4月17日(木)      発表5
 (夢からさめて辺り見まわす 霧男)
車窓には桜花桃梨の花        伊藤紘美
 「信州へ向かう中央道」いま爛漫ですねえ。
 (夢からさめて辺り見まわす)
おっぱいが唐辛子味泣く三歳    武藤美恵子
 「次男の断乳です」赤ちゃんの夢が破れたとき。あの昔をずっと忘れてないのが母さんなの。
 (夢からさめて辺り見まわす)
マドンナととある密会血が燃えて    宇利休
アラフォーのわたしチャペルでウェディング 石田吉保
 (夢からさめて辺り見まわす)
太りすぎやっと気がつく試着室      嘉男
 このままじゃまずいか。
ストレッチ太極拳にヨガウオーク  宇井美和子。
つけ睫毛ネイルアートにへそピアス 嶺澤由美子
「私63歳まだまだやります」って。おー。
 (夢からさめて辺り見まわす)
デフォルトだ円のふぶきに先見えぬ   かにこ
 貯金さえ消えてしまうという怖い夢におびやかされつつ、とりあえずまた眠るわれら。
ビットコイン証券でなくカネでなく   ふさ子
財産保全に賭けてみる?   
 (夢からさめて辺り見まわす)
生かされて今日も一日神の加護    影山武夫
病室に波形を描く心電図         恵紅
 「ああ生きてたー」
    (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「若き日の 」中日新聞4月10日(木)      発表4
 (夢からさめて辺り見まわす  霧男)
重箱に母のおはぎがぎっしりと     まりん    

 「母の餡は自分の畑の小豆でほくほくだったんです。食べ損なったけど胸いっぱい」いい夢。人は誰かの記憶の中にちゃんと居るんですね。
 (夢からさめて辺り見まわす)
入社式俺だけジンズで来ちまって     抹茶
 焦ったあ!  
試験日は過去のことだよ春嵐      久美子
 「学生時代のあの不安。まだ何度も夢見ます。さめて外の春嵐の音にホッ」
 (夢からさめて辺り見まわす)
若き日の彼の抱擁息が切れ      のうさぎ
添い寝するあなたの髪が頬にふれ アラ還レディ
 ああ、時はかく流れる。
 (夢からさめて辺り見まわす)
嫁ぎきて走り続けた五十年        燈霞
三歩下がりカートを押して妻の後     村良
どっちが前でも後ろでもよくなった歳月。
 (夢からさめて辺り見まわす) 
フェミニストについに会わずよ黄水仙    涼
 「六十年安保世代の女のつぶやき」と。「しょせん人類は男」とも。
 (夢からさめて辺り見まわす)
汚染水タンク林立日本中       大畑杉子
 うなされる¦。
とにかくに原発という負の遺産     浅やん
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「波の音 」中日新聞4月3日(木)      発表3
 (夢からさめて辺り見まわす  霧男)
チューリップピンクのフリル八分咲き 近藤富子
焼きたてのパンの香りの満つる部屋     暁
 春の朝寝。
 (夢からさめて辺り見まわす)
ベアのないわが家に上がる消費税     まみ
 もう8パーセント払う買い物をしましたか。「福祉に使う約束だよ!」とつぶやきながら。
車買うとか言ってみる四月馬鹿     尚くん    
 (夢からさめて辺り見まわす) 
イル・ディーヴォの声にききほれ漂って 眠り猫
もしかしてこの温もりはイ・ビョンホン柴ちゃん
 (夢からさめて辺り見まわす)
紅椿ぽとりはかない恋でした      絵日傘
バツ重ねいま流行の事実婚     佐藤智恵子
 (夢からさめて辺り見まわす)
花の中手をさしのべる亡き夫      すみれ
 逢えた。
亡き父母と行く高遠は花曇り     石川牧子 
 (夢からさめて辺り見まわす)
見てきたぞベテルギウスの爆発を    美耶子
オリオン座の恒星ベテルギウスが生涯を終え、超新星爆発を起こすスペクタクル。夢でも見られたらスゴイ。640光年離れているので、今すでに爆発しているかもしれないと思えば、万感胸に迫ります。
 (夢からさめて辺り見まわす)
懐かしい青い地球の波の音       ミモザ
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「勇ましい 」中日新聞3月27日(木)      発表2
 (夢からさめて辺り見まわす  霧男)
熱下がり髪をとかせば春めいて     とよこ
 インフルエンザ流行も終わり! 
クロッカスレンギョウときて里桜  かぐやひめ    
遅くきた春はずんずんたけなわに。
 (夢からさめて辺り見まわす)
ランウエイを歩く私に熱視線     武田礼子
 ファッションショーの舞台。さあ、ここで優雅にターンしよう。夢よ続け。
 (夢からさめて辺り見まわす)
妻夫木くんとケーキシェアするカフェテラス ひろみ
キムタクと小栗しゅん君両腕に    塚本益美
 うっふ。欲張りお姉様。
 (夢からさめて辺り見まわす)
自販機の缶がどんどん出つづける   大脇正恵
「観光地での体験です。嬉しいような怖いような。もちろん管理人さんに伝えましたよ」
 (夢からさめて辺り見まわす)
戦争は終わったそれともなかったの    獅狼
日常に追われ風化する歴史。今、さめないと。
空襲を知らぬ首相が勇ましい     伊藤千敏
 (夢からさめて辺り見まわす)
番組は次のドラマに変わってた    ハッピー
 世も転々。
STAPをSTOPさせて月おぼろ     みゆき
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「超然と 」中日新聞3月20日(木)      発表1
 (夢からさめて辺り見まわす  霧男)
今日テスト受けていたのにまだわが家 鈴木正子
 「先生の電話で起こされて」わっ。
 (夢からさめて辺り見まわす)
金メダルかけてもらってをりにけり   奥山功
最高の瞬間だった!
五億円宇宙旅行のフルムーン     橋本悟郎
 (夢からさめて辺り見まわす)
怖かった二死満塁で俺打席      松浦恭夫
ブレーキを踏んだが車止まらない   稲垣孝雄
ふー、まだこの動悸。
 (夢からさめて辺り見まわす)
初恋よ名さえ忘れて七十年        暉子
 甘い再会。確かにあの人だったけど。えーと。
ガラケーに老眼鏡も三つある     ウッチー
 ガラケーは通称「ガラパゴス携帯」の略語。古生代の携帯電話かと思ったら、独自の進化をした日本的携帯をいうそうな。スマフォに席巻されそうだけど、高性能より単純操作、馴れた操作がいいのは高齢者だけじゃない。がんばれガラケー。            
 (夢からさめて辺り見まわす)
超然と魔鏡捧げる我が卑弥呼   みの虫アッパ
 お会いしたかったです。考古学者も歴女もひれ伏して。
(夢からさめて辺り見まわす)
千本が一本松に大津波        タイタイ
パパ眠る仮設に春はまだこない    伊藤民子
     (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「しめきりですよ 」中日新聞3月13日(木)      締切
 (夢からさめて辺り見まわす  霧男)
沈丁花まだ香っててふと消えて     あづさ
 優しい春のゆめ。
 (夢からさめて辺り見まわす)
蛇穴を出ればでーんと建ったビル      葵
 ありゃあ、去年はこんなもんなかったぞ。「蛇穴を出る」は冬眠していた蛇が出てくることで、春の季語です。(ちなみに「蛇穴に入る」は秋の季語)歳時記や季寄せのあるかたは春の季語もいろいろ使ってみてください。思いがけない付け句ができますよ。あ、『十七季』(東明雅、丹下博之、佛淵健悟編著・三省堂)は連句の詳しい作法も出ている季語集でお勧めです。
 おっと、第一便飛来です。
 (夢からさめて辺り見まわす)
大口を開けて笑ってる若い我        知
 「自分の笑い声で目がさめました」
年金で悠々自適ではないな      羽下正一 
お互い現実に直面しちゃいましたねえ。
 (夢からさめて辺り見まわす)
三年前三月十日記憶なく        ふうち
 「次の日のできごとは忘れられません。あの日が夢であったなら」と。
付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。十六日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「募集 」中日新聞3月6日(木)      募集
 (大切なものがだんだん見えてくる  氷心)
ばあちゃん作る稲荷寿司好き      志のぶ
鏡の中の皺に乾杯          柏原久子
 (大切なものがだんだん見えてくる)
一・一七 三・一一           みゆき
「ミナマタ」「フクシマ」「オキナワ」のこと 幸
(大切なものがだんだん見えてくる)
集大成の滑りが誇り           かず 
 メダルだけではなかった感動のオリンピックでしたね。たくさんの付け句ご応募ありがとうございました。さてつぎの宿題です。
   夢からさめて辺り見まわす   霧男
この七七句に五七五句を付けてみませんか。
 (夢からさめて辺り見まわす)
あんれまあ俺は首相じゃなかったか   玲          
ハハ、でかい夢をどうぞ。あ、さめてよかった夢もありますね。自由に想像してドラマ作り。恋句も楽しんでください。もちろんご自分の経験を思い出してぜひ実感のある句も。鋭い時事句も期待しています。
 (夢からさめて辺り見まわす)
花びらがひらひら宴はたけなわに    藍 
付け句発表は4月にかかりますので、春の句もぜひ。付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。十六日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)