日がな一日花のちる也 一茶 (2013/3/14~5/2)

前句   日がな一日花のちる也   一茶

「募集 」中日新聞5月2日(木)      募集
 (日がな一日花のちる也   一茶)
休日はリハビリもなし日溜りに     お美津
親子過疎音沙汰のない日が暮れる    奥村晋
 (日がな一日花の散る也)
こもり居の日を数えつつ老いてゆく    暉子
イヤホンで二台のテレビ老いふたり  古田耕司
 (日がな一日花の散る也)
面白く生きると決めてひとり旅    くまさん 
一茶さんと見た現代の桜、いかがでしたか。うつろう花の前句には、ご高齢のかたの付け句も多く、ひとり居もふたり居もしみじみ拝読しました。ご紹介しきれなかった佳句を手元に惜しみつつ、さて、次回宿題です。もう初夏ですね。
   窓をあければ心地よい風  ザリ
 この七七句に五七五句を付けてみませんか。
 (窓をあければ心地よい風)
お向かいのべランダパジャマと罌粟の花  藍    
いまや新緑の町、村、野山。生きとし生けるものの営みを句に。外国など旅行先の風景もぜひ。
 (窓をあければ心地よい風) 
もしかして愛になるかなこの鼓動     芙美
 恋句、時事句もどうぞ。ご自分の経験だけでなく、物語や場面をのびのび想像して。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず。五月十二日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「風にきく 」中日新聞4月25日(木)      5回
 (日がな一日花のちる也     一茶)
ふき味噌を作るふきの香指先に      泰枝
つくしんぼパパの帽子にいっぱいに   おとめ
春の贈り物でーす。 
ひもつけた猫と散歩の団地道      うさぎ
 あれれ、家猫さん。足音たてずにゆくんですよ。
 (日がな一日花のちる也)
秘めた恋自ら打った終止符に      ゆあな
 そう、もういいの。確かに恋はしたの。
あの人の就職決まる風にきく       けい
 よかったね! と風に告げよう。
 (日がな一日花のちる也)
軽やかにスマホ操る春ネイル     三島園子
女子会です還暦祝う乾杯です      さなえ
ノンアルコール派も酒豪も集まれー。
 (日がな一日花のちる也)
幼稚園行けずに逝った子を想い     勿忘草
ふりつもる愛しみ君のいたあかし あるて      
「津波で子を亡くしたお母さんが『ずっとかな
しんでいていいのだとわかったら安心した』と言
っていました。『かなしまないで』というのは無
責任な言葉だと初めてきづきました」――と。
 (日がな一日花のちる也)
経済が生んだ原発依存症       エンゼル
遅々として進まぬ復興春は過ぎ      瓜也
 (日がな一日花のちる也)
同じこと聞いて話してまた聞いて    拓郎命
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「長寿国 」中日新聞4月18日(木)      4回
 (日がな一日花のちる也   一茶)
草餅もかごに入れたる道の駅      由美江
紺絣着て目刺売る道の駅        かず子
春の風に旅心もそぞろですねえ。
 (日がな一日花のちる也)
うららかに善男善女寺めぐり    宇井美和子
逢えたのは清水寺を下る坂       珠里亜
 「十五年ぶりでした」
いつのまにあなたの腕の中にいる     やえ
 かなうなら、いつまでも。
 (日がな一日花のちる也)
白内障眼帯とれて春景色       伊藤千敏
 「手術しました」―まぶしい花吹雪ですね。
 (日がな一日花のちる也)
老いの身をふるいたたせるフラダンス 丸山和子
眠る老いベッドの並ぶ長寿国       直美
 「とある病院のとある一室。この一室が日本中にどれほどあるのでしょう。
長寿とは?」――いま親世代の姿を見つめつつ、さて私たち自身の
これからの老いをどうしよう。
 (日がな一日花のちる也)
富裕層恵比寿顔ですアベノミクス    むゆう
広がる格差のゆくてもおそろしく。
 (日がな一日花のちる也)
故郷の人影のない並木道        ひろみ
 帰りたいがだれも帰れぬ町は今もある。
ロボットが主をさがす声のして     タヌ公
  (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「ネズミの仕業 」中日新聞4月11日(木)      3回
 (日がな一日花のちる也   一茶)
少うしでも昼間の酒は赤くなり    タイタイ
団子食べ僕らの恋が始まった     ユウスケ
 やっほ、おいしい春。65歳ですって。
 (日がな一日花のちる也)
ビール手に未婚の友と集う春    水谷三和子
「人生の春が来たーって早く叫んでみたいで
す」もう来てるかも。振り返ったら春!
 (日がな一日花のちる也)
スカイツリーPM2,5和えて春霞  東京流れ者
うーん。和え物が年々増えてますよね。
文明が汚しに汚した春霞      なずな主婦
 ゴメン、いろいろ。地球殿。
 (日がな一日花のちる也)
日曜日トラクター行く一反田     近藤富子
 会社勤めのお休みが忙しい兼業農家さん。今月末はもうコシヒカリの田植えになるとか。
 (日がな一日花のちる也)
囲いして獣と知恵の根くらべ       旦喜
 こちら山里は鹿、猪と共存の闘い。
電波塔鷹とカラスが巣でもめる    中山康博
 あの、そこ巣作りは困るんですが。
停電はネズミの仕業と東電さん     みちこ
 原発いらぬとネズミさん。
 (日がな一日花のちる也)
子が走るタンポポタンポポどての道    らら
じいさんの欠伸の後にばあさんも     暁
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「マグカップ 」中日新聞4月4日(木)      2回
 (日がな一日花のちる也   一茶)
ブランチは紅茶に一輪菫そえ     塚本益美
お弁当作って庭でひとり食べ      のり子
 ええ、春ですもの。
 (日がな一日花の散る也)
一心にミニカー動かす一歳児      とよこ
 無心の姿はいいですねえ。
 (日がな一日花の散る也)
ゆううつもカバンに入ってる新学期   みゆき
一浪の決心揺れるマグカップ      ミモザ
それぞれのスタートです。
雇い止め免れました今年度       つぼね
 ああ。まずは乾杯。
 (日がな一日花の散る也)
黙々と花よりスマホ指走る        節子
 「僕のほうも見てよ」「あ、時間なの。バイバイ。後でスマホでね」
 (日がな一日花の散る也)
リビングに着座していた黒電話      茶子
 家に一台、動かぬ姿が懐かしい。家族にみんな話が聞こえちゃったんですよね。    
 (日がな一日花の散る也)
インフレもデフレも民には生活苦  かぐやひめ
 どっちかなんて困るよ。
報道は生き難き世と繰り返し      草笛奏
 (日がな一日花の散る也)
春昼の半月空にまどろみて        恵紅
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「春のせい 」中日新聞3月28日(木)      1回
 (日がな一日花のちる也      一茶)
二た駅も乗り越したのは春のせい    ふきよ
次までは二時間待ちの無人駅     羽下正一
 ああ、ゆったり花を見ましょうね。
 (日がな一日花の散る也)
五七五考えてたら昼ごはん      頭痛持ち
メールきて長電話してメールして     珠緒
 「休日が暮れてしまいました」って。
 (日がな一日花の散る也)
彼の部屋窓にギターが寄りかかり    チャオ
話すことなくなっちゃってキスをする    了
 ――うふ。
 (日がな一日花の散る也)
春うれし鼻がむずむずしなければ    ちひろ
春風に乗ってすり寄るスギヒノキ   田口義國
 都会人もなぜか山の木々とおつきあいする近年です。これがしつこくて。クシュン。
 (日がな一日花の散る也)
重ね着に懐炉夜勤はまだ寒い      やすを
ああよかったスーパーが近い新任地   ドロン
 「自炊の単身赴任生活者には切実な問題です」
 (日がな一日花の散る也)
使用済み核燃料は水の底          拓
 (日がな一日花の散る也)
140億年だまって時は流れてる     弥栄 
 ビッグバンで宇宙ができたときからずっと。    
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「しめきりですよ 」中日新聞3月21日(木)      締切
 (日がな一日花のちる也   一茶)
妻の留守スナック菓子を食べ尽くし   あづさ
付け句はもう出されましたか。今年の桜の花は咲くも散るも遅速さまざまのようですね。
 (日がな一日花のちる也)
海へゆく旅カーナビに指図され      芙美
今回の前句は文化十年(一八一三年)つまり二百年前、小林一茶が信州の門人宅で「蚤蠅にあなどられつつけふも暮れぬ」を発句として巻いた歌仙(三十六句)から、花の座の付け句を拝借しました。当時一茶さんは病中で、枕元に門人三人が寄り添い、一句、二句とぽつぽつ付けたという親しい巻です。付けもやすらかにーー。
  日がな一日花のちる也       一茶
 かるがると笠をかぶれば鳴く雲雀   反古
桜の散る日に飄々と旅に出る。もちろん歩いて
ーー余談ですがこのころの一茶は江戸で名のある俳諧宗匠なれどまだ独身。ようやく家を故郷に得て妻をめとるのは翌々年で53歳でした。
おや、第一便にも雲雀の付け句のはがきが。
 (日がな一日花の散る也)
あげひばりTPPとなきながら      田螺
 田畑がなくなったらどうしよう。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、
ペンネームの方も本名を必ず。三月二十四日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「募集 」中日新聞3月14日(木)      募集
 (なぜかこの世に人と生まれて  合)
虫さんと葉っぱといっしょに露天風呂  秦米子
ぽっかりと雲からのぞく淡い月    久米美帆
なつかしい。
 (なぜかこの世に人と生まれて)
ありがとうあなたに会えたその奇跡  宮下千佳
争いと平和の狭間のエゴイズム    星川泰斗
 トリは頼もしい若者たちです。今回は二高校の生徒さんを加えて、作者上限年齢百三歳。多彩な視点の付け句をありがとうございました。  
 さて次回宿題前句は、二百年さかのぼり、小林一茶さんの連句から、花の句を拝借しましょ。
 (日がな一日花のちる也   一茶)
 この七七句に五七五句を付けてみませんか。江
戸時代に増して桜だらけの日本列島ですよね。
 (日がな一日花のちる也)
逆上がりまだできぬ子に春の風     葵
 桜の散る日の暮らしをどうぞ。お花見風景でも。楽しい、かなしい人間模様も。恋句もぜひ。
 (日がな一日花のちる也)
工場はアームロボットフル稼働     藍
 まこと超多忙な社会。この国隅々の有様を見つめて句にしてください。時事句歓迎。SFでも。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず。三月二十四日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)