ふたりになって胸がどきどき ドリー (2012/9/14~11/8)

前句   ふたりになって胸がどきどき  ドリー

「募集 」中日新聞11月8日(木)      募集
 (ふたりになって胸がどきどき ドリー)
放課後の風にカーテン舞い上がる   平田知子
終電の空っぽ車両の対角線      モッチー
 今回は「全国高校生付け句コンクール」一万五千五百余句のごく一部もご紹介しました。
 (ふたりになって胸がどきどき)
人生が変わってしまう取調べ     治田孝志
はっとする鋭い時事句もありました。北は福島県から、南は鹿児島県まで、若い付け句仲間たちの広がりがうれしい秋。
さて、つぎの宿題です。
  凩の街それぞれの窓明かり     唯     
この五七五句に七七句を付けてくださいな。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
残業パパのただいまの声       芙美
 どの窓にもそれぞれの人生が進行中。自分のこと、思い出、お隣さんや誰かさんのこと。想像していろんなドラマの場面を考えてくださいな。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
雲のマフラー巻いた三日月       葵
 風景句、恋の句、時事句も。発表は十二月までかかりますからクリスマスネタもいいですよ。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず。十一月十八日(日)までにご投函を。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「すだち摘む 」中日新聞11月1日(木)      発表6
 (ふたりになって胸がどきどき   ドリー)
秋の海タンカーゆっくり遠のいて   近藤富子
すだち摘む白い手首が陽に映えて    遠江坊
 明るい秋の日。
 (ふたりになって胸がどきどき)
会うたびに君への好きがあふれてく  ペンギン
すれ違う風も僕らを避けてゆく    星川泰斗
5年ぶり見上げた君は大人びて    小池文子
高校生さんたち。ぐんぐん青春なり。
 (ふたりになって胸がどきどき)
リハビリはイケメン先生指名する    ちょい
「楽しすぎて予定より早く元気になりすぎたのが、悩み」と。こちらも青春!
 (ふたりになって胸がどきどき)
桂浜琴平参り手をとって       青柳善作
 「苦労をかけた女房にせめて感謝の小旅行。琴平様の石は駕篭に乗せて、私は自力で七八五段がんばってみます」
 (ふたりになって胸がどきどき)
九十歳明日から本当の正念場     近藤スズ
 おお。先輩がたの気合とハートに乾杯。
ところで愛知県豊田市で「とよた連句まつり」を十一月三日(土)11時―17時に開きます。初めてのかたも付け句して遊べますので、どうぞ当日ご自由にお寄りください。参加無料。この付け句欄のお仲間に会える機会ですよ。於豊田産業文化センター(℡0565-33-1531 ) 41会議室。  
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「曲がり角 」中日新聞10月25日(木)      発表5
 (ふたりになって胸がどきどき ドリー)
窓越しに紅葉の見える喫茶店     塚本益美
草むらを低くとんでく秋の蝶      やんぱ

 小さな蝶ですよね。優しい秋の隅っこで。
 (ふたりになって胸がどきどき)
まわりから見えるねビルのエレベーター あ・北斎
ハハ。見えるとまずい?
 (ふたりになって胸がどきどき)
四十年お互いトウが立ちすぎた   なずな主婦
古稀なれどほろ酔い歩くホテル街    お佐代
 「新宿で道を間違えました」と。
 (ふたりになって胸がどきどき)
よし今だ独り暮らしに終止符を     ポテト
心配で空から見守るお母さん       瑠威
 そう、お母さんは永遠に心配してるの。  
 (ふたりになって胸がどきどき)
海原をバツイチ同志ただ見てる     たんき
人生これからだよねえ。
 (ふたりになって胸がどきどき)
曲がり角ぶつかったのが君だった     SK 
 運命。        
夢かしらこれは確かにイチローだ  たっくん
こちらは「やっぱり夢でした」って。
 (ふたりになって胸がどきどき)
ロボットの僕にも心ありました     ピース
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「楽園を 」中日新聞10月18日(木)      発表4
 (ふたりになって胸がどきどき   ドリー)
ハイキングいつか仲間と違う道     やすを
団栗の落ちる音にも驚いて         暁

 誰かといる秋。
 (ふたりになって胸がどきどき)
不祥事に親呼び出しの会議室       まま
 「それぞれの思いを抱えながら息子と待った高校の会議室は、やたら広くて暑かったです」
 (ふたりになって胸がどきどき) 
とびら閉めそこへ座れと父が言う    いとう
 うむ。今なお父の存在感。
母怒りアヒルは踊る成績表     ペンネーム
 今回は秋恒例の「全国高校生付け句コンクール」(豊田市文化振興財団・桜花学園大学主催)からも参加。恋はもちろん成績をめぐる親子ネタも多かったこと。あ、アヒルは2です。念のため。
 (ふたりになって胸がどきどき)
沈黙を破る「あのね」を譲り合い     そら
気が合うね君のつぶやく秋の暮 レッセーフェル
 (ふたりになって胸がどきどき)
初めてねメール以外で話すのは     かえで
 これからが本当のはじまり。 
 (ふたりになって胸がどきどき)
ちょっとくらいいいじゃん林檎食べたって イブ
楽園を追放された君と僕       リトバス
 かくして智恵をみがいた人類の今がある。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「舌下錠 」中日新聞10月11日(木)      発表3
 (ふたりになって胸がどきどき ドリー)
歩を止める金木犀の香る道        泰枝
 今年はなぜか咲くのがおくれましたね。
 (ふたりになって胸がどきどき)
帰り道同じと言ったばっかりに      のり
人生が複雑になったりして。
 (ふたりになって胸がどきどき)
四十年たって今では不整脈     木村れいみ
舌下錠内ポケットにしのばせて      侘助
 アブナイ恋というべきか。
 (ふたりになって胸がどきどき)
歩くとき手が当たるたび嬉しくて     ぽー
帰り道手をつなごうとしてる君    みつばち
うふ。可愛い。高校生さんたちからですよ。
 (ふたりになって胸がどきどき)
雨上がり束ねた髪をほどく君     むっちょ
 魅惑。
そんなにもキミの睫毛は長かった? 高崎奈緒里
 イエ、ただ正直なオドロキ。
 (ふたりになって胸がどきどき)
ラブレター君に渡してヤブレター   小山慶生
 あのね。ゴホン、ゴホン。
 (ふたりになって胸がどきどき)
翡翠が魚くわえて飛んでくる      とみこ
 雌への求愛ですね。自然の営み。
イザナギとイザナミのごと手を取りて みの虫アッパ
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「ハイトーン 」中日新聞10月4日(木)      発表2
 (ふたりになって胸がどきどき   ドリー)
ふっと会話途切れる萩の咲く小道     ひわ
赤とんぼ夕陽のなかにホバリング      繭

 美しい秋。
 (ふたりになって胸がどきどき)
還暦の君の眼今も輝いて        とよこ
シミに皺白髪数えるのはヤメテ    岩崎尚子
 美しい秋なんですってば。
 (ふたりになって胸がどきどき)
エレベーター怖い上司が乗ってきて   眠り猫
課長アノきのうのミスの事ですか   ふみっち
 「今日もミスしただろ」―ガーン。
 (ふたりになって胸がどきどき)
お互いに避けていること知りながら 浅木夢美志
某首相某国主席と会議前        ゆたか
 目を合わせるや、否? 
 (ふたりになって胸がどきどき)
パソコンの操作分からぬふりをして   アメリ
つけ睫毛実力不足補って       えこりん
 いじらしい努力なの。
 (ふたりになって胸がどきどき)
コーヒーを注文する声ハイトーン    ドロン
 イエイ!
 (ふたりになって胸がどきどき)
気付いてる私の彼は吸血鬼       草笛奏
 ドヒャ。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「曼珠沙華 」中日新聞9月27日(木)      発表1
 (ふたりになって胸がどきどき ドリー)
とりあえず天気予報の話から     木納幸子

 たちまち秋。ひと恋しい秋。
「猫が好き?」「嫌い」と言われまた黙る  玉
 あは。
 (ふたりになって胸がどきどき)
曼珠沙華どうしてここにいるのかな     幸
 そう、いま逢っている不思議。この宇宙の片隅、赤々と曼珠沙華が咲くところで。
 (ふたりになって胸がどきどき)
きゃしゃだけどこっち見る目は肉食系  まりあ
 ――うん、好み。
若ければ君の彼女に立候補        村良
 「私は君のお母さんより年上でえーす」
 (ふたりになって胸がどきどき)
奴と俺窓際の椅子あとひとつ       嘉男
 窓際だろうがとにかく机と椅子がほしい。
年下の社長面接小企業        羽下正一
 (ふたりになって胸がどきどき)
チチロ鳴く明かり一つの無人駅    田口洋子
思い出は裸電球の下宿部屋        瓜也
 昭和の青春ですね。電灯はひとつが効果的。
 (ふたりになって胸がどきどき)
カップ麺座敷童とすする夜      田宮圭照
 ズルル。ああ、こういう夜も味がありますねえ。私たちの愛惜する暮らし、じっと考える。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「しめきりですよ 」中日新聞9月20日(木)      締切
 (ふたりになって胸がどきどき ドリー)
自転車のブレーキ直してくれる君     ゆめ
稲妻が光ればそれがGOサイン     あづさ  
 「キャーッ、ひしっ」ですと。さまざまな場面を想像、妄想(?)してお楽しみを。
 ところで「中国日本友好協会」の招待で九月上旬訪中された国際連句研究会の近藤蕉肝さん(成蹊大学教授)からメールがきました。北京と西安で日中連句を巻いたご報告。西安(昔の長安です)はもうすっかり秋で大雁塔も霧の中だったそうな。
 大雁塔東西南北霧深し   近藤蕉肝
と詠んだら、すかさず西安交通大学の金教授が
  我が肩に降る木犀の花     金中
と日本語で七七句を付けられた。木犀の匂いも濃い出会いだったのですね。こんな五七五句と七七句の挨拶で心がかわされる。蕉肝さんによれば連句は「共同制作の叙情詩」です。金先生は日本古典文学研究者で「八代集」和歌の「秋の夕暮」が博士論文のテーマだったとか。文学に国境はありません。
 (ふたりになって胸がどきどき)
ぶらんこを漕ごうよ星がおちてくる   MMT
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず。九月二十三日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「募集 」中日新聞9月14日(木)      募集
 (真っ白な雲暑くなりそう  ゆき)
ジョギングも喘ぎ喘ぎの3キロです  鈴木正子
面をとる流れる汗の武道館        廻利
 (真っ白な雲暑くなりそう)
まっ黒な戦火のなかを港まで     川原清子  
 「六歳の時母に手をひかれ、頭巾を防火用水にしっかり浸けて火の中を逃げました。その後今は亡き父の故郷に疎開」――夏となれば甦る敗戦、焼け跡での記憶の句をずいぶんいただきました。 
母に告ぐ小梅10キロ漬けしこと  石田喜美子――受け継ぐ、伝えることが生きることかも。
今回も多数御投句多謝。さて、次の前句です。
  ふたりになって胸がどきどき  ドリー
この七七句に五七五句を付けてみませんか。
 (ふたりになって胸がどきどき)
カーブする電車吊革揺れている     藍
 場所を付けるだけで恋の場面になりますね。もちろん「ふたり」の設定しだいで。恋以外の場面もいろいろできます。ご自分の経験を句にしてもよし。想像たくましくドラマ作りも楽しんで。
 (ふたりになって胸がどきどき)
ひょっとして党首候補の要請か      克人 
 発表は十月いっぱいなので秋の自然もぜひとりいれて。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず。九月二十三日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)