凩の街それぞれの窓明かり 唯 (2012/11/8~1/24)

前句   凩の街それぞれの窓明かり     唯

「募集 」中日新聞1月24日(木)      募集
 (凩の街それぞれの窓明かり 唯)
小さなミトンはピンクのモヘア      更紗
杖で廊下を歩くリハビリ         太助

 知らぬ同士の窓明かりだけれど、同じ時間を生きているなかまたち。たった今も。
     歳旦三つ物
元旦へ地球じはりと回りけり        藍
 屠蘇で酔ってもをれぬ御時世       々
音合わせオペラボックスざわめきて     々   
 大変おくれてのご挨拶ですみません。今年も付け句をよろしくお願いします。さて、エンジン始動。お待ちかね。次の宿題です。
 なぜかこの世に人と生まれて   合
 この七七句に五七五句を付けてみませんか。
 (なぜかこの世に人と生まれて)
足の爪パチンと切れば心地よく     芙美
 こうして今存在することの不思議な実感をどうぞ。喜怒哀楽いろいろ付きますね。もちろん経験だけでなく、ほかの人を登場させるのもよし。
 (なぜかこの世に人と生まれて)
とめどなく白梅の散る夕映えに      藍
 目の前にある自然への感動も。発表は三月までですから春の句も。恋句、時事句、爆笑句も。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず。二月三日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「眠る兄妹 」中日新聞12月20日(木)      発表5
 (凩の街それぞれの窓明かり 唯)
あと十分で降りる高速         美耶子
後部座席で眠る兄妹          たなか

ほら、もう少しで帰るわが家。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
家族合奏暖炉の前で          美恵子
外から見たら幸せ家族       竹村日出子
 「愚痴をひとつ、三人の子まだ結婚せず」と。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
待っているのは猫のメイちゃん   松村さつき
 「猫だけが家族。55歳の独り言」今回は92歳まで男女問わぬ独り暮らしさんの句がたくさん。 
 (凩の街それぞれの窓明かり)
手袋ぬいで手術成功           ケン
 ああ、神様ありがとう!
六人部屋の早い夕食          らっく
 (凩の街それぞれの窓明かり)
じいちゃんはもう夢の中です      もみじ
やった当たったなんて夢見る    小枝ちゃん
 浮世じゃ。せめて夢じゃ。動転の政治を前に越す年。何としても共に生きるささやかな暮らしを守らねば。――今年も付け句して下さったかた、読者の皆様ありがとうございました。年明けに次の前句募集でお目にかかります。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
満月よぎるはぐれ雲あり       石川牧子
雪虫誘う異次元のドア         ふさ子
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「サイレントプア 」中日新聞12月13日(木)      発表4
 (凩の街それぞれの窓明かり 唯)
漬け物の出来ちょっとお味見     大畑杉子
 「木曽の冬は長いです。野沢菜、赤蕪、大根と
桶が並んでいます」
声を残して焼き芋去りぬ         田螺
 (凩の街それぞれの窓明かり)
踊る宴会イチニイサンバ       えこりん
 今年の憂さ払いといこうか。
バツ2になってからの妖艶      ゆきまろ 
 ほっほ。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
あなたが帰るあの人の部屋      ふみっち
 なんか複雑な事情ですねえ。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
ソーラールーフどこだ煙突       ちひろ
サンタ行き交うバーゲン売り場     後高爺
 売らなくては。この不景気。寒いわ、お財布。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
母住む施設に聖夜のイルミ       モモ助
電飾つけてジジババふたり       ダチ公
 (凩の街それぞれの窓明かり)
バイト契約今年いっぱい         零人                  
サイレントプア届かぬ叫び      エンゼル
 明日へのわが一票! 戦争のできる国にしないよう。311のあの恐怖を思いだして。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
天使が撒いた星くずの空         泰枝
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「楼閣 」中日新聞12月6日(木)      発表3
 (凩の街それぞれの窓明かり 唯)
ホーロー鍋にミルクのにおい       流星
生姜をきかせホット甘酒         節子
 体に優しくしましょうね。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
美白洗顔保湿クリーム         みゆき
 ぺったぱたぱた明日のために。    
 (凩の街それぞれの窓明かり)
冬物捜しアウトレットに       松浦邦子
 輝くウインド。夜のショッピング族。
カラオケに飽きゲームセンター    山崎四郎   
 「私のような若者もはまるゲーム」と68歳。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
マンボにジルバあの日は遠く       めぐ
バーブ佐竹のネオン川だわ        神馬
 灯には各世代の思い出の曲が揺れて。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
おそい夕食さがすコンビニ        K
節電に慣れきょうも外食        のり
 (凩の街それぞれの窓明かり)
誰が使うの復興予算       かぐやひめ
仙台からの句です。全国民のけぞった。
肩を寄せ合う仮設住宅        たんき
 (凩の街それぞれの窓明かり)
活断層の上の楼閣           ひろみ
 とにかく原発をやめよう。子々孫々のために。
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「ランドサット 」中日新聞11月29日(木)      発表2
 (凩の街それぞれの窓明かり   唯)
ねぼけ雀がさわぐ街路樹       大野ゆか
 「街灯が明るいからでしょうか、ときどきにぎやかに騒いでいます」
一服つけてふるえるホタル       とむ
 寒いベランダ。それでも禁煙しないで。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
時間指定で走る宅配         羽下正一
 暮れても町は働く。
電信柱に防犯カメラ           洋一
 (凩の街それぞれの窓明かり)
豚汁の湯気届く玄関        懐しい実家
となりはもつ鍋我が家はシチュー  木村れいみ
 あったかーい。
キャベツ玉葱コンソメスープ     あんでん
 え? これは「冬のダイエット」ですって。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
君が隣にいたらいいのに        三十路
何にもしないそばにいるだけ     塚本益美
 そう、それでいいの。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
解散選挙日本のゆくえ       コーチャン
私利と私欲と党利党略         MMT
 それしかないの? ないです。ああ、国民は困りはてている。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
ランドサットの捉えた日本      石田吉保
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「竪穴住居 」中日新聞11月22日(木)      発表1
 (凩の街それぞれの窓明かり 唯)
揺れるぶらんこ無人の公園     水谷三和子
落ち葉の丘を下る自転車        ひとし
 寒くなりましたねえ。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
角を曲がれば彼の待つ部屋     宇井美和子
チャイム押す指ためらう私      ひまわり
 始まる物語。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
デキチャッタ結婚あさって挙式     ウサギ
 いろいろあったけど、よかったよかった。          
 (凩の街それぞれの窓明かり)
納期せまりし工場残業        伊藤紘美
車線規制で渋滞の列         ハクテン
 「年末のかけこみ道路工事がはじまって、なかなかたどりつけないわが家です」
 (凩の街それぞれの窓明かり)
一人前のコンビニおでん        サトー
婚活帰路に一人鍋食う          まさ
 ひとり暮らしさんも多くなって。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
仲間求めて開くパソコン       ハッピー
 インターネットがひろげたつながりの可能性。たったいまも地球上をゆきかう無数の電波。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
竪穴住居いろりチロチロ     みの虫アッパ
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「しめきりですよ 」中日新聞11月15日(木)      締切
 (凩の街それぞれの窓明かり 唯)
うまいラーメン開店の列        あづさ
 付け句はもう出されましたか。 
 ご報告。三日に豊田市で開いた「とよた連句まつり」。このコラム投稿の方がおもなお客さまでしたが「付け句はしないけれどこのコラムは必ず見てます」という読者さんたちもみえていとうれし。伝統連句の座、現代連句の座、言葉遊び連句の座、皆さんあちこちの座で遊んでいただきました。私の座はね「妖怪尽くし連句16」。全句に妖怪をいれるルールです。その一部。
 6  おんぶおばけはイケメンの背に    高須
 7 叶わない恋とは知らずウンディーネ 草笛奏
 8  河童の皿にメルティーキッス     ドリー
 9 ドラキュラが八重歯を立てる首筋に  千夢
 10  炬燵で眠る猫娘です    みの虫アッパ
「このおんぶおばけって女ね」「実は水の精ウンディーネで、失恋!」「じゃ、日本の河童からチョコレートをあげる。お皿にのせて」――つぎの句が付くたびに思いがけぬ(勝手な?)展開に笑う秋の午後でしたよ。おっと第一便到着です。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
きょうは旦那が食事当番       三島園子
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず。十一月十八日(日)までにご投函を。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「募集 」中日新聞11月8日(木)      募集
 (ふたりになって胸がどきどき ドリー)
放課後の風にカーテン舞い上がる   平田知子
終電の空っぽ車両の対角線      モッチー
 今回は「全国高校生付け句コンクール」一万五千五百余句のごく一部もご紹介しました。
 (ふたりになって胸がどきどき)
人生が変わってしまう取調べ     治田孝志
はっとする鋭い時事句もありました。北は福島県から、南は鹿児島県まで、若い付け句仲間たちの広がりがうれしい秋。
さて、つぎの宿題です。
  凩の街それぞれの窓明かり     唯     
この五七五句に七七句を付けてくださいな。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
残業パパのただいまの声       芙美
 どの窓にもそれぞれの人生が進行中。自分のこと、思い出、お隣さんや誰かさんのこと。想像していろんなドラマの場面を考えてくださいな。
 (凩の街それぞれの窓明かり)
雲のマフラー巻いた三日月       葵
 風景句、恋の句、時事句も。発表は十二月までかかりますからクリスマスネタもいいですよ。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず。十一月十八日(日)までにご投函を。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)