手で払ってる自転車の雪 芙蓉 (2011/1/6~2/24)

前句   手で払ってる自転車の雪   芙蓉

「募集 」中日新聞2月24日(木)      募集
 (手で払ってる自転車の雪   芙蓉)
さあ帰ろ玉ねぎお肉今日カレー       温
規格外野菜も出荷道の駅        小嶋武
 (手で払ってる自転車の雪)
まだやると粘る野球部見守って      奈緒
この時間行けばあの娘と出会う道   古田光男
 (手で払ってる自転車の雪)
立読みがちょっと長引きすみません  仲川昌一
自転車と仲良しのささやかな暮らし、いかがで
したか。さて、つぎの宿題ですよー。
  百まで生きる決心をする   葵
という七七句があります。いよっ。元気だね。これに五七五句を付けてみませんか。
 (百まで生きる決心をする)
若妻のショートパンツが眩しくて      甃 
 ウフ。付け句は事実、経験もよし。想像も自由です。今回はことに各年代で遊べそう。ご勝手な人生設計などいかが。未来社会図、夢、妄想も。
 (百まで生きる決心をする)
高額の羽毛布団を買わされて       のら
 ウハ。意地ね。人生の先輩はこの乱世で生きぬくアドバイスをぜひ。時事、大笑いも。
 (百まで生きる決心をする)
鉄棒をくるりまわって見える春     ドリー
嬉しい春も。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所、電話番号、ペンネームの方は本名も必ず。三月五日(土)までにご投かんを。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「気を付けて 」中日新聞2月17日(木)      発表5
 (手で払ってる自転車の雪   芙蓉)
玄関の灯りに溶ける白い息        小雪
暖かなこたつの中まで後五分    渡部もえ子

 ただいまー。
 (手で払ってる自転車の雪)
ポトフ煮ているかそれともお茶漬けか   猫夫
 「かみさんは料理の先生。うちでは、客が来る日だけご馳走なんでーー」
前向いて独居の今夜鍋物だ        普文
 ひとり暮らしには、気合いがいる!
 (手で払ってる自転車の雪)
妻がけさ断捨離するといってたが      巌
「大事な物捨てられてないか。もしやボクまで」
 (手で払ってる自転車の雪)
パンクして修理をしてはパンクして   ちひろ
巣立ちたる息子二人の愛用車     ロッシー
 ひきついで乗る。エコだけではない。
 (手で払ってる自転車の雪)
「気を付けて」亡き母さんの声がする  まりも
 「去年九月まで必ず出がけに聞いた声です」
 (手で払ってる自転車の雪)
老年の運転免許返上し        やすなお
 さて、交通手段はある? 公共交通機関が減っ
ているのに突入する高齢化社会。自治体の首長さ
ん、議員さん、仕事! 仕事!
 (手で払ってる自転車の雪)
悪友の見舞い安堵の窓灯り      小鈴卓央
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「自分らしく 」中日新聞2月10日(木)      発表4
 (手で払ってる自転車の雪   芙蓉)
ろう梅の香りほのかな曲がり角    塚本益美

 近くにきてるよ、春。
髪切って襟立てる朝氷点下       ひろみ
でも、油断しちゃだめ。。
あら見てたスッテンコロリあいたたた うさみん
 (手で払ってる自転車の雪)
きっと来るからもう少し待ってみる  ちほこ
逢えるかなまわり道して君探す    ドナルド
 「先日昔の彼の夢を見てしまいました。夢の中で私が少女だった!」
たいせつな過去は消えたのではなく、心に存在しているのかも。
 (手で払ってる自転車の雪)
つよがりを言った唇そっとかむ     三十路
喧嘩したあやまり方がわからない      暁
 経験回数かなあ。
飛び出した夫婦喧嘩であてもなく    かずこ
 お財布忘れた! ケイタイだけもって。
 (手で払ってる自転車の雪)
かけもちのバイトで払う授業料     眠り猫
ため息をひとつ呑み込み深夜勤    三島園子
 きりっと冬の中。
病む妻のメモを頼りの買出しに    岡田銕夫
 がんばってますよ。
 (手で払ってる自転車の雪)
自分らしく自分のためにまだ走る     ひわ
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「ストレッチ 」中日新聞2月3日(木)      発表3
 (手で払ってる自転車の雪   芙蓉)
朝靄の工事現場はまだ眠り        丁字            
ガードわきほつほつ梅のひらき初め   たまみ
 寒くても日に日に三分、あら五分咲き。
 (手で払ってる自転車の雪)
さっきまで彼女が座っていたサドル かきつばた
別れしなちょろっとピンクの舌を出し    竜
 それがけっこう胸にのこって。
 (手で払ってる自転車の雪)
バーゲンが待ってるんです迷わない    百合
買い溜めの煙草とうとう底をつき    ふさ子
 値上げ三ヶ月。くく、やめられないか。
九条葱これはこれはと鍋奉行    石田喜美子
 うっほ、肉より貴重な柔らかな青葱! 
 (手で払ってる自転車の雪)
あと何度定年間近い朝の駅     じいちゃん
 この寒さと緊張感ともお別れ。
新前の年金暮らしいざ行かん    アッチャン
 65歳という年齢。老齢年金がくる前に、介護保険料を差し引くぞと通知がきたりするんですよね。みんな行く道だけど、初めてのことばかり。先輩の皆さん、しゃっきりよろしくーです。
 (手で払ってる自転車の雪)
立ち読みの予定眼鏡をかけていざ   藤村力田
ストレッチしながら今日も生きている かぐやひめ

(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「アンドロイド 」中日新聞1月27日(木)      発表2
 (手で払ってる自転車の雪   芙蓉)
暖かい缶コーヒーをポケットに    近藤富子
 つかのまだけどぽかぽか。
 (手で払ってる自転車の雪)
偵察が来てからみんなでくる雀     たんき
 「小さな庭の餌台に野鳥がやってきます」
初氷割る子滑る子舐める子も     加藤晃弘
 冬の朝の元気さんたち。
 (手で払ってる自転車の雪)
すっぴんの彼女の顔を思いだす     七八六
「なんか雪の払い方も優しくなります」って。
つけ睫毛とってぷっくり可愛い目     卓郎
ほんとの彼女を見た感動ですって。えへ、もしかしてゆうべ?
 (手で払ってる自転車の雪)
妻もなく恋人もなき年男         恵紅
 うん、今年こそ。ぴょん。
帰るのか? あの妻のいるあの家へ  近藤スズ
む。こういうさだめも覚悟して。
 (手で払ってる自転車の雪)
新名所テレビでできたピラミッド   あんでん
 「アナログテレビが大量に捨てられているんですね」回収の一方、不法投棄で積まれるテレビたち。予想してましたよね。かくして常に新しい機械がぞくぞく生産されるのを、発展という。
 (手で払ってる自転車の雪)
泣くすべをアンドロイドは知らなくて   獅狼
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「ハロワだよ 」中日新聞1月20日(木)      発表1
(手で払ってる自転車の雪   芙蓉)
新聞の天気予報が当たってた       星子
球根の芽を寒風がなでていく      由美江
 クロッカス、チューリップ、みんなこの寒さに充分耐えて初めて咲く。ううう。雪の下で我慢。
(手で払ってる自転車の雪)
氷点下ミニスカートでカイロ持ち     めぐ
ババシャツを乙女のハートで着こなして  ぐー 
行くぞー!  
(手で払ってる自転車の雪)
好きですと言い出せなくて立ち話    ゆあな
 ついひきのばしちゃってー。
君の鼻ほほに冷たいくすぐったい    モニカ
 なんで鼻がほほに? うふんーーこういうの考えオチの句っていうんでしょね。
(手で払ってる自転車の雪)
就職も決まらずバイトもう四十路   鈴木正子
 いまの就労構造に本人と家族たちと、どれだけ多くが苦しんでいるか。!
卒業がイコール無職では辛い     マイババ
 政治ってなんだ。改革ってなんだ。
(手で払ってる自転車の雪)
お出かけはハワイじゃないよハロワだよ 段々     
ハロワってハローワークなんですって。すこし明るく聞こえる?
(手で払ってる自転車の雪)
凍て空を囲ひつくせる四方の山     みゆき
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「しめきりですよ 」中日新聞1月13日(木)      締切
宿題付け句はもうできましたか。
 (手で払ってる自転車の雪   芙蓉)
登りきれ!スカートひらり運試し    ドリー
「高校が坂のてっぺんなので、途中で降りずに登りきれるかがんばっちゃいました」って、私のゼミ卒業生、元気な保育士さんです。
 (手で払ってる自転車の雪)
とぎれては続く雁木のうす明かり    あづさ
 新潟からの便り。「雁木って分かりますか? 雪国の商店街はひさしを長くして(アーケードみたいに)通路を確保します。屋根まで届く大雪のときはトンネルの中みたいです。古い商店が新しいビルに建て変わると、そこだけ雁木がなくなって、とぎれとぎれだったりします」自転車はときに引っ張ってよいしょよいしょですって。
 (手で払ってる自転車の雪)
山眠るたぶん帰れば女房も        侘助
 「山眠る」という冬の季語を、こんなふうに使うのもいとをかし。さて、一便到着です。
 (手で払ってる自転車の雪)
予備校の終了間近すべらんぞ    とだちゃん
春見たさ選んだはずの民主党     伊藤千敏
 付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所、電話番号、ペンネームの方は本名も必ず。一月十五日(土)までにご投かんを。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「募集 」中日新聞1月6日(木)      募集
 (お互いにいろいろあって明日がくる たつみ)
フラれた私とフッたアイツと    秋田美の里
必死で生きた落盤の中        森下衿圭
 (お互いにいろいろあって明日がくる)
みんなの朝日がのぼりはじめる      のり
君によく似た賀状の少女         更紗
明けましておめでとうございます。この付け句コラムも二十二年めです。今年もともに語り合う五七五句と七七句、普段着の庶民詩、いえ、もしかしたら庶民史をどうぞよろしく。
さて年明けの宿題ですよ。
 (手で払ってる自転車の雪   芙蓉)
 この七七句に五七五句を付けてくださいな。
 (手で払ってる自転車の雪)
寄せ鍋の材料うふふ二人分        葵
 いよいよ寒さも本番です。2011年私たちの冬の暮らしをぜひ。街の風景、故郷の風景。そしてこの厳しい時局の句もどうぞ吐き出して。
 (手で払ってる自転車の雪)
白ブーツ襟に兎の毛のボンボン      藍
 経験だけでなく想像もご自由に。老若男女いろ
んな姿を思い浮かべて、物語、場面を作りましょ。
恋はもちろん、お笑い句も歓迎。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所、電話番号、ペンネームの方は本名も必ず。一月十五日(土)までにご投かんを。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)