予報はずれの雪がちらちら けい (2009/1/8~2/26)

前句   予報はずれの雪がちらちら    けい

「募集」中日新聞2月26日(木)
 (予報はずれの雪がちらちら   けい)
高齢の犬はハウスに引きこもり     ジゲン
炬燵なしエアコンもなしひとり鍋  嶺澤由美子

 (予報はずれの雪がちらちら)
じゃまたねまたねの後がつづかない 寺田公仁子
つま先が炬燵の中で語り合う      遠江坊
帰るのか抱っこの重さ覚えとく     首長爺
 付け句多数多謝。辛い世相が目立つ冬でした。
さて、つぎは一気に爛漫の春にかけこみます。 
 もう息もできぬくらいに散る桜 みのり
 この五七五句をよく読んで、思い浮かべ、七七句を付けてみてください。
 (もう息もできぬくらいに散る桜)
あなたは男あたしは女           藍
 花の中の恋はいかが。ご経験でも。フフ、想像でも。場面を考えて、わくわく若返りましょ。  
 (もう息もできぬくらいに散る桜)
退院できるいのちふたつで       あづさ
 人生の感動の物語が付きますね。もちろんお花見風景でも。桜散る日のお弁当は? 音楽は? あたりの風景は? 時事句、大笑い句も歓迎。 
 (もう息もできぬくらいに散る桜)
稼働停止の工場の門          けんた
  付け句は葉書で〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネーム(なるべく5字以内で)の方は本名も必ず書いて。三月七日(土)までにご投かんを。七七句ですから気を付けて!
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「ラブゲーム」中日新聞2月19日(木)          第5回
 (予報はずれの雪がちらちら   けい)
ラガーマン熱き血潮が湯気となり  あたしんち
高三のラストシュートが決勝点     ふさ子 
 このエネルギーとファイト!
 (予報はずれの雪がちらちら)
寒すぎる口実できた縄のれん      浅野健
トイレ待つまたもあの人並んでる    小嶋武
 こちとら、まだ冷えますなあ。
 (予報はずれの雪がちらちら)
手つむぎの羊のマフラー織り上げる  ひでこ
「毎年100本が目標。プレゼント大好き」
 (予報はずれの雪がちらちら)
人生の脱線修正決めた日も      ウッチー
 みんな一直線には走れない、走らないよね。
 (予報はずれの雪がちらちら)
定年後愛のリメークするはずが     まさか
達人を気取って攻めるラブゲーム    寿美麗
 「恋愛馴れしてるつもりが逆転されたり」
アドレスの間違いメール行っちゃった   ナオ
 ああ。取り返しのつかぬミスになることも。
 (予報はずれの雪がちらちら)
黒牛を市に出す日の淋しさよ    佐藤智恵子
 三重県からです。
ばっさりと荒れた果樹園切り開き    タヌ公
習わしがもどりかまどに薪をたく  福井さき子
文明が行き過ぎて、今真剣に振り返る暮らし。
 (予報はずれの雪がちらちら)
堤防にかもめ騒ぎて春隣        ひよこ
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「さむいから」中日新聞2月12日(木)          第4回
 (予報はずれの雪がちらちら   けい)
ひな鳩のふたつ並んで親を待ち     ひろみ

 はーるよこい!
梅便り聞いていそいそ出る準備    北村貞信
そちら満開ですか? まだ一輪の山里も。
 (予報はずれの雪がちらちら)
一人きりハイテンションなバレンタイン まさ乃
ハートチョコ渡せないまま日が暮れて   泰枝
 うう。マイチョコにしちゃおうか。
 (予報はずれの雪がちらちら)
つないだ手彼の手袋鍋つかみ     鴨下伶奈
 わ、こんなにでかいんだ!
さむいから君のポケット借りますね   加藤祭
チャンスだね君の袂に手をいれる     金鶏
 少しでも接近をはかる恋人たちです。
 (予報はずれの雪がちらちら)
派遣切り横目に賃上げ叫ぶ人     渡辺直子
共闘は成立するか。ワークシェアリングか、セイフティーネットか。登場する単語は、市場任せだったこの国には不用意のことばかり。
 (予報はずれの雪がちらちら)
メタボ殿懐手して指図する       眠り猫
万歩計帰りはバスの世話になる      瓦鶏
 (予報はずれの雪がちらちら)
紅茶苦し九十四の母に苛立ちて     カズコ
子の歳も七十近く。お互い精一杯の日々。
 (予報はずれの雪がちらちら)
しんしんと夜中のラジオひとり聞く  池戸芳枝
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「現代史」中日新聞2月5日(木)          第3回
 (予報はずれの雪がちらちら   けい)
春待ちの雪割草もかくれんぼ     明ローズ
めじろ二羽餌台に来るミカン切る      紅
 (予報はずれの雪がちらちら)
寒さ耐えミニスカブーツ生足で     けいこ

 わずかとはいえ、腿が出せるのが若さネ。
ババシャツを着ててもおちる恋ありて 外川菊絵
 ふふふん。
 (予報はずれの雪がちらちら)
歌ってよあなたは来るとアダモさま   遊節子
 「雪が降るーあなたは来ない」日本語で歌って
くれた声、耳にのこってますね。
 (予報はずれの雪がちらちら)
不況風ポッケの中まで入りこむ     ふきよ
自販機のまえで考えこむ男     岩津志乃ぶ
 一万円札しかない人か。 百円玉一つの人か。
 (予報はずれの雪がちらちら)
仕事ないそれでも明日はやってくる    久美
ワーキングプアに違いないわが子   ダンカン
「時給なので仕事が少ないと家賃天引きで給料が
なくなるという。さすがにショックです」
 (予報はずれの雪がちらちら)
一問もとけぬ入試の現代史        恵紅
難しい。この続きの明日を解くのはもっと難しい。
 (予報はずれの雪がちらちら)
ぶらんこに忘れたままのぬいぐるみ     暁
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「孤独にも」中日新聞1月29日(木)          第2回
 (予報はずれの雪がちらちら   けい)
ヘイ!らっしゃい!やってきましたインフルエンザ!   ジョガー
「予防接種しないで気力で頑張ってきたのに。夫第一走者、小五次男から小一の三男へリレー」
ほいさ、みんなで風雪乗り越えなくちゃ。
 (予報はずれの雪がちらちら)
しょうがするお紅茶いれるかぼちゃ煮る  ベス
落とし蓋味のしみこむ金目鯛     近藤富子
 冬の台所のこのやり甲斐! 生き甲斐!
 (予報はずれの雪がちらちら)
年金のほんの楽しみ株買えば     サフラン
 む。まさかこんな事態になるとは。
仏壇に相談してる給付金       小林きね
「当家、さもしいといわれたくはありませぬ」
 (予報はずれの雪がちらちら)
大キライあかんべすると至近距離     ちか
 キャ、実はスキだったみたい。
 (予報はずれの雪がちらちら)
孤独にも馴れて孤独な君と逢い     まりも
「四十路でとうとう」―祝福の雪ですね。孤独を知って、心から求めあう人に会える。
 (予報はずれの雪がちらちら)
鬼が出るころには祭も寒さ増し    滝川善久
 愛知県北設楽郡東栄町から。有名な厳冬期の花祭です。深夜の鬼の舞がクライマックス。
 (予報はずれの雪がちらちら)
灰色の空見上げれば浮遊感        徒夢
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「キムチ鍋」中日新聞1月22日(木)          第1回
 (予報はずれの雪がちらちら    けい)
肉まんにあんまんピザまんカレーまん  原浩大
カレー鍋予定変更キムチ鍋      マコママ
 より熱く、より辛く。はふはふ。
 (予報はずれの雪がちらちら)
タバコやめて何でこづかい減るんだよ  頑張君
 「ありがと、助かるわーってモー」
お年玉合計金額ウッシッシ     なずな主婦
 子どもはいいな。でも今年は下方修正みたい。
 (予報はずれの雪がちらちら)
渋面で解雇告げられ初仕事      伊藤紘美
「年頭の挨拶のあと呼ばれたら今月いっぱいでと社長」解雇のテーマの句がどっさり来てます。付け句を遊ぶ元気な中学校の教室からも時事句が。
 (予報はずれの雪がちらちら)
就職も政治の世界も氷点下      飯田英雄
寒い中仕事なければ家もない      森直輝
ニュースの伝える社会をじっと見つめる目。
麻生さんこたつの中でマンガ読む   山田侑汰
 当初は親近感のあるイメージ狙いでしたよね。
 (予報はずれの雪がちらちら)
主夫の背が少し疲れて夕支度     ボチボチ
「私が手術後の療養中で夫が家事。感謝です」
 (予報はずれの雪がちらちら)
一人鍋君の遺影が隠し味        タマ助
 食卓に小さい写真をいつも置かれてるとか。
 (予報はずれの雪がちらちら)
水仙がコップの水を吸っている シルバーキング
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「しめきりですよ」中日新聞1月15日(木)
付け句宿題はお出しになりましたか。
 (予報はずれの雪がちらちら  けい)
信号の赤を見つめている寒さ       節子
 立ってると冷えこみますよね。実感の句。
 (予報はずれの雪がちらちら)
サヨナラは慣れっこだって言ったじゃん ときよ
これはカップルの場面ですね。「いいよ、わかったから行けばいいじゃん! 気にしないでよ。私、へーきだもんね。またやってける」「―ごめん、じゃ、元気で」明るく別れて、へっ、何が元気だよー。後で泣くのね。ああ、予報はずれの雪。積もるかなあ。前句が背景になって情緒的でしょ。―付け句って二句で物語になるんです。
 (予報はずれの雪がちらちら)
電線のふくら雀も宿無しか       もりえ
 つぶやいているのは誰でしょうか。住む家がないなんてことが、突然こんなに身近なできごとになっている。連句(付け句)では自分のことだけでなく、今生きる人の身になって句作りもします。連句は共生の文芸なんですよ。
 (予報はずれの雪がちらちら)
もの干しで洗濯物がちぢこまる      楽遊
ささやかな暮らしにも価値をもとめて。くすくす笑いも歓迎。付け句は葉書で〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネーム(なるべく5字以内で)の方は本名も必ず書いて。一月十七日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「募集」中日新聞1月8日(木)        
 (人生という遠い道のり     ひわ)
頂上で百歳が手を振っている       豊親
登り切る自信半々八十路坂     水野幸治
あけましておめでとうございます。
 (人生という遠い道のり)
あの頃もまだまだ遅くはなかったと   ミモザ
 八十歳から見れば六十も青春。まして四十、五十は可愛いもんなのだ。さあ、いつでもスタート。
転職がこんなに寒い朝にする     嘉男
 それにしても金融危機が露呈したこの冷酷な社会。みんなで助け合っていくあったかなシステムを作らねば。政治を動かすのは私たち。
冬の陽の光背となる古稀の母      Ree
 さて、宿題ですよー。
  予報はずれの雪がちらちら   けい
この七七句に五七五句を付けてくださいな。
 (予報はずれの雪がちらちら)
お揃いの白いマフラー駆けてゆく      藍
09年の町、海山の風景、このご時世。ささやかな暮らし、思い出のひとこまを。付け句は想像でも結構ですから小説の場面を考えたり、恋句作りも楽しんで。今年も脳の柔軟体操をどうぞ。
 付け句は葉書で〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネーム(なるべく5字以内で)の方は本名も必ず書いて。一月十七日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)