第17回国民文化祭とっとり

☆入選   
半歌仙「絵双六」の巻  岩手県 小山百合子捌
    
 山賊に出遭ってしまふ絵双六 小山百合子
   影燦々と揺れる繭玉     多村  遼
 街角にトランペットの響くらん   阿部  昭
   自販機で買ふ電車の切符       百
 月の客待ちきれず注ぐ純米酒      遼
   入れた襖に猫がじゃれつく       昭
ゥ磨崖佛蔦の紅葉を襷掛け        百
  いつか海へと巡る敦煌         遼
 寄り添ふて噂広がる船の旅       昭
   ラストダンスで誓ふ再会       百
 伏魔殿去りゆく人の刺し違へ       遼
   西部戦線何事もなし         昭
 夢色の薄翅かげろふ月に透き     百
   祖父の背中に眠る祇園会      遼
 公達の家系を誇るたいこもち       昭
   茶柱立ちしことは内緒に       百
 裂帛の気合花散る武道館       昭
   巣づくり励む軒のつばくろ      遼
起2002/1/26首2002/2/5於インターネット文音
 ☆入選       
半歌仙「冬麗や」    茨城県    城 依子 捌
     
 冬麗や鳩の声降る石だたみ        城 依子
     苑の隅には白き侘助        多村 遼 
 健やかに八十路の髪を結い上げて  山寺たつみ
     日々の楽しみEメールとか     齋藤 桂
 貴腐ワインとくとくとくと良夜なり         遼
     山のふもとの穴に入る蛇         依
ゥべい独楽の話は尽きず湯治宿         桂
     奥の廊下に見たる幻           み
 小悪魔に翻弄されているわたし         依
     君助手席にポルシェ発進        遼
 新婚のパリの土産はユーロ札           み 
     川面を渡る鐘は厳か           遼 
 夏の月いにしえよりの堂庇           桂 
     親鹿に餌をねだられており       依 
 ポスターの笑顔に笑みを返す嬰児        桂 
     きりりと佇てる緒方貞子氏        依 
 花爛漫一期一会の友ありて            み
     春の砂丘に描く風紋           遼
起2002/1/24  尾2002/2/8 於インタネットBBS
  ☆入選   
半歌仙「風花や」の巻カリフォルニア山根じゅりあ捌
  
 風花や山の便りを華やかに     山根じゅりあ
   身じろぎもせぬ沼の寒鯉      城 依子
 ホルン吹く少年の夢果てもなし     多村  遼
  街の広場にサーカスが来る           あ
 地球儀をゆっくり廻す月の卓           遼
   土瓶蒸しもう出来上がる頃          子
ゥ色と識違いを問うて残る菊           あ
   戸惑いながらくぐる枝折り戸        子
 モロッコへ片道切符懐に            遼
   ピロートークで習うフレンチ         町
 母方の奔放な血が疼くらん           子
   纏わる紐の固き結び目           遼
 夏の月朽ちた祭壇密林に            町
   野営テントで友と酌み交う          子
 ひたむきなNGOに期待寄せ           遼
   中吊り広告並ぶ地下鉄           町
 花爛漫そろりそろりと太郎冠者         子
   呼子鳥啼く倭まほろば            遼
起首 2002/1/28 満尾2002/2/20於インターネットBBS
 ☆入選
半歌仙 「棟木割く」   長野県  山寺たつみ 捌
                       
 棟木割く寒のもどりや人の声      山寺たつみ
   里の厨につくる蕗味噌         齋藤  桂
 たおやかに舞う初蝶を目で追いて     城  依子
   特急電車わたる鉄橋           多村  遼
 月まどか風も和みて眠る湖              桂
   絵筆を置けば炬燵恋しく             み
ゥハロウィンにハリーポッター仮装の子       遼
   威風堂々路次のボス猫             子
 風邪ですとためらう君に熱い接吻         み
    新妻残し遺跡調査へ              桂
 土塊の言葉あれこれ聞きたくて           子
   いのちをつつみ続く混沌             み
 百合匂う月の昇りし山の端に            子
    亡き友偲ぶギヤマンの盃            遼
 何時かしらロシア民謡口ずさみ           桂
    澱みを廻り笹舟のゆく              み
 御守りは蘇民将来花の寺             遼
    あちらこちらで励む畑打             子
起首2002/2/13満尾2002/3/7於インターネット文音
                         ☆入選
半歌仙「馬魂碑」の巻 岩手県 小山百合子 捌

 馬魂碑のうしろ渦巻く雪解川    小山 百合子
   梢を揺らし辛夷咲く丘      多村   遼
 春炬燵ぽつんと独り沙汰もなし  山根じゅりあ
   厚さ手ごろな本を枕に      生方   涼
 客眠る窓に月さすバス旅行     山寺 たつみ
   今年酒酌む村の若衆      棚町  未悠
ゥ伯林は「千と千尋」の芸術祭          遼
   タロットカード息つめて引く          子
 妻の背に密かな恋の物語           涼
   古傷ひとつまだ疼いてる           あ
 発掘の土器の破片に謎の種         悠
  次の教授は僕が本命             み
 青頸は夢うとうとと湖の月            あ
   夜啼き蕎麦屋の不意に現れ         遼
 朴歯下駄ならべいつもの柔道部        子
   醜の御楯となりし友垣           み
 ショパン弾くペンションの窓花吹雪       悠
   東風吹きなべて命革む          涼
2002/3/6 起首2002/4/11満尾於インターネットBBS
                         ☆入選
半歌仙「海の門」の巻   三重県  多村 遼 捌

 清明や海の門にある神の島       多村 遼
   乗込鯛のはねる舟板          山根敬子
 春障子新築祝いにぎやかに        城 依子
  ガーデニングに思い廻らし            遼
 未来図にひと色添える月明かり           敬
   人を吐き出すやや寒の駅            子
ゥ脈々と暖簾うけつぐ走り蕎麦           遼
   奥大山に名水を汲む              敬
 いとおしい女の平癒に願をかけ         子
   耳朶の翡翠は永久の契りと          遼
 オペラ座は幕開きを待つ桟敷席         敬
   羽ばたきやまぬ蝙蝠の群            遼
 夏の月少年の影真っ直ぐに            子
   爆撃の無いあすは来るのか          敬
 鍵穴の向こう蕭条たりし凍て           子
   こつこつ綴る古裂ちりめん            遼
 連覇なるタイガーウッズ花の笑み        敬
   グラス触れ合う陽炎の丘            子
2002/4/5 起首 2002/4/19満尾 於インターネット文音