平成26(2014)年国民文化祭あきた文芸祭「連句の祭典」大会

入選 
  半歌仙 「西行忌」の巻  膝送り  

 西行忌献歌一首を吟じけり      芙美  
  花の寺にはほのと墨の香      渥子  
 道標に弥生野越ゆる風吹きて     慶子 
  スポーツバッグに入れし餡パン    芙
月高く決勝戦に負けし夜          渥 
 少し寒げに玄関の犬           慶 
古窯の漏れ火のはねて秋暮るる    芙 
  土練る腕に小さき彫り物        渥 
 その昔カスバに捨てし女のこと     慶
  抱きあふのは眠りつくまで      芙
 酔ひ覚めの水をいつぱい飲み干さむ 渥
  ルンバが回るキッチンの隅      慶
 賑やかな御輿ながむる昼の月      芙 
  戦争だけはごめんだと祖父      渥
 終ひ風呂義足ゆつくり外されて     慶
  海鳴りのする宿の離れ屋       芙
 遠望の富士くつきりと冬桜       渥  
  紙漉の技代々に伝へむ        慶  
平成二十六年三月十三日起首 三月二十三日満尾  文音
入選 
 半歌仙「蕗の薹」の巻    捌 佐藤ふさ子 
  
 季の移り風が知らすや蕗の薹    佐藤総子
   春泥付けて鼻黒き犬         石川 葵
 入園に泣く子笑う子賑やかに         ふ
   汽車の形のバスに乗り込む        葵
 旅かばん異国の月に照らされて   鳥海 唯
   芳香満たし醸す葡萄酒          ふ
 亡き父に秋の叙勲を報告し         葵
   背骨の歪み正すリハビリ        唯
 江戸の町義賊を名乗るねずみ駆け    ふ
   とんぼ返りの影冴え渡る        葵
 スノボーの裏にあなたのイニシャルを   唯
    誤植あちこち恋の指南書        ふ
 髪型を新しくして姉帰省           唯
    雲間の月に放つほうたる        葵
 鐘楼に昇れば遠く波の音          唯
   舐めれば色の変わる飴玉        ふ
 花の蕊天使ほろほろ散らすらん      葵
   バルーンアートにあがる歓声      唯  
平成二十六年一月三十一日起首 三月二十六日満尾 文音
入選
半歌仙「手妻のごとく」の巻   捌 山根敬子

マジシャンの手妻のごとく春の雷  山根 敬子
 身じろぎもせず残雪の山      城  依子
のどらかにくさび形文字写しゐて  棚町 未悠
 うつらうつらはワープの兆し     齋藤  桂
月見酒夢と一緒に酌むならん   岡部七兵衛
 四重奏は街のこほろぎ           敬子
将門の首塚の辺の冷まじく         依子
 武器売る国になりそうな今         未悠
神の鈴鳴らすも恋を知りてより         桂
 ひまわりの中初めてのキス       七兵衛
愛の数かぞえて百の物語          敬子
 豪華客船遠ざかり行く            依子
かあさまの卒寿の祝ひ寒の月        未悠
 暖炉の前で猫はまどろみ           桂
放浪の旅はリスボン安ホテル       七兵衛
 ファドの調べの遠く哀しく          敬子
重箱に自慢の料理花筵           依子
 嬰のえくぼに日差しうららか         桂

平成26年3月3日首 平成26年4月16日尾 文
入選 
   半歌仙「春尽くや」の巻    高山鄭和 捌

 春尽くや大山道の賑はへり      髙山鄭和 
   リュックのややに重き草餅     坂本孝子 
 論文集めくる指先うららかに     鈴木善春 
   研究室に電子化の波        渡辺柚子  
 繊月は星座次々置いて行く      近藤礼子 
   磨いて寝む初猟の銃          孝  
 うそ寒の法話の長き和尚にて       仝  
   フェイスブックでつなぐ人の和      春   
 シルエットだけは自信があるのです    柚   
   恋愛専科免許皆伝            礼   
 剣豪の眼の一閃に倒されて         孝   
  川面に千々と月の涼しく          柚  
 此の年は梅若塚も雪が積み        孝 
   カタカナふって歓びの歌         柚   
 TPP合意も無しに離陸せり         春   
   宇宙旅行の予約上々          礼   
 酔ふほどに夢ふくらます花見酒      春  
  白蝶舞ひて米寿言祝ぐ         礼  
首尾 平成 二十六 年 五 月 四 日
 於 伊勢原シティープラザ(心敬忌)