入選 歌仙 「島津雨」の巻 捌 間瀬芙美 島津雨いよよ耀く石蕗の花 間瀬芙美 石畳踏む音のさえざえ 由川慶子 ティバック湯呑茶碗に浮かびいて 芙 テレビドラマの続き気になり 慶 月を背に野良猫ひょっこり現るる 芙 案山子を真似て立つ男の子 慶 ウ ハロウイン母の口紅使い切り 々 嫌いが好きに変わる年頃 芙 獄中に恋しと届くラブレター 慶 クックドウドウルドウと鳩鳴く 芙 鉄骨の数が足らぬと噂され 慶 やらなきやならぬ猫の蚤取 芙 ムームーの袖緩やかに夏の月 慶 戦語らず父は居眠り 芙 地図にないバンザイ岬という地名 慶 土産売り場の客は速足 芙 春寒のうどんに揺るる花鰹 慶 天気予報の当たる梅東風 芙 |
ナオ堤防の凧合戦のにぎやかに 々 Uターンして増える人口 慶 売れ筋のイクメン雑誌積み上げて 芙 ゆっくり噛めば甘き玄米 慶 咳ひとつ下宿の窓に影ふたつ 芙 彼岸此岸を分かつ逢引き 慶 山間を掠め比翼の鳥の発ち 芙 漕ぎ出す前の月の隠れ屋 慶 荒削り盆の団子に菊の酒 芙 鹿も四足爺も四足 慶 優しさは介護する側される側 芙 笑えば揺れの止まぬ籐椅子 慶 ナウボサノバは夏の国より流れ来て 芙 母国語知らぬ移民三世 慶 頭下げ鸚鵡は客を歓待す 芙 きっと見つかる春の手袋 慶 この空を陣取っている花大樹 芙 乳母車行く陽炎の町 慶 平成二十七年十二月十八日満尾 文音 |