文部科学大臣賞 半歌仙 「母も子も」の巻 捌 石川 葵(愛知県) 母も子も勝気に生きる冬日かな 石川 葵 窓辺に飾る蝦蛄葉仙人掌 鳥海 唯 遊歩道珈琲の香の漂いて 佐藤ふさ子 アマチュアバンドのライブ始まる 葵 あごひげをくっきり照らす望の月 唯 小枝装う蟷螂の斧 ふ ウ 秋の湖キャラバンサライ夢の跡 葵 恋の遍歴重ねアラフォー 唯 君の傍ずっと居たいとくどかれて ふ 阿修羅の像にひそむ激しさ 葵 鉄棒で大技みごとエース決め 唯 ピルケースには痛み止めあり 葵 月の街商談終えて注ぐ麦酒 ふ あんばいの良い瓜漬の味 唯 神棚に 隠すへそくり楽しみで ふ 手にのるほどの雛の貝桶 葵 花びらの舞うさま媼ただ見蕩れ 唯 開聞岳にかかる初虹 ふ 平成26年12月9日 起首27年1月27日 満尾 文音 |
入選 半歌仙「春一番」の巻 捌 佐藤ふさ子(愛知県) バス待ちの衿立て直す春一番 佐藤ふさ子 黒土匂う市民農園 石川葵 親猫に甘える仔猫目を細め 鳥海唯 絵本に合わせ変える声いろ ふ 銀河から月へと向かう旅の窓 葵 膝を抱えて新走り飲む 唯 ゥ 大峰山女人禁制冬隣 ふ 青道心の捨てきれぬ娑婆 葵 夢の中ふうわりよぎる紅絹の色 唯 貂の足跡罠は見抜かれ ふ おじいさんの繰り言を聞くおばあさん 唯 座敷童は悪戯がすき ふ 月明り浜で始まる西瓜割 唯 蚊取線香僕が係りで 葵 エアポート鞄が廻るコンベアー ふ 物産展の幟あちこち 葵 花の奥訪ねて花にまた出会い 唯 佳句のうまれるのどらかな庵 葵 平成27年2月1日首 3月6日尾 文音 |
入選 半歌仙 「残雪に」 の巻 捌 碧(愛知県) 残雪に触れて戻るや風渡る 碧 つばくろの来る空の群青 雀羅 たんぽぽ酒色よき瓶に睡りゐて 常 テレビ横目に長電話する 碧 時刻表だけしか持たぬ月の宿 羅 いびつな花梨床に転がり 常 ウ 妖怪もボスも浮かるるハロウィーン 碧 まだ代筆の出来ぬ屋根裏 羅 すぎはひを支へ続ける細い腕 常 麦わら帽で隠すジェラシー 碧 噛み砕く氷菓は迷ひ断つ如く 羅 襲名披露幕の上がつて 常 響きくる火の用心の路地の月 碧 冬のブランコペンキぬりたて 羅 真つ白なお城の見える喫茶店 常 地産地消でつくる定食 碧 おばば等の結ひ頼もしき花の朝 羅 みそひと文字の旅立ちの春 常 平成二十七年三月十五日 起首五月四日 満尾 文音 |
入選 半歌仙 「サンバの背ナ」の巻 捌 山根敬子 (アメリカ) 夏の蝶サンバの背ナで揺れており 山根敬子 人で溢れる炎天の街 岡部七兵衛 博識の友の話はきりもなし 齋藤 桂 やりたい仕事刀鍛冶とは 棚町未悠 海茫々そろそろ月が昇る頃 城依子 鮭のマリネに酒は純米 敬子 ウ 初猟の銃声遠くはやる胸 七兵衛 氏神様へ今日もお参り 桂 留学生どこにでも行く人気者 未悠 優しすぎるが玉に瑕にて 依子 今でしょと急かれて懲りず再々婚 敬子 幼稚園かと紛う愛の巣 桂 満月をじろりと睨むかじけ猫 七兵衛 蓬莱山にむかう影冴ゆ 未悠 ジャケットのほつれ繕うこともせず 依子 ダリの時計はやわらかく溶け 敬子 花の下まどろむ頬に甘き風 桂 競漕会に送る声援 未悠 2014年7月5日起首 尾 8月14日満尾 文音 |
入選 半歌仙「連翹の」の巻 両吟 (京都府・滋賀県) 連翹の呼び寄せてゐる真昼の陽 齋藤桂 紋白蝶の見えつ隠れつ 上田真而子 母と娘と草餅作り楽しげに 桂 間遠にカチリ烏鷺の争い 而 居待月木地師の里は眠りたる 桂 やがて囲炉裏の欲しくなる頃 而 ウ 恵比寿顔思ひて新酒買ひ求め 桂 氏も育ちも問はず睦言 而 老夫婦新婚旅行なぞる旅 桂 荒き航跡薄れゆく海 〃 施無畏の手差し伸べ観音佇ち給ふ 而 はじめはグーとじやんけんの子ら 桂 連勝のナイター帰り大き月 而 友は自慢の薩摩絣で 桂 ぎつくり腰魔女が一突きしたさうな 而 身じろぎもせぬ傍らの猫 桂 帰り花宇宙への夢ふくらませ 而 師弟揃ひて囲む河豚鍋 桂 平成二十七年三月二十六日起首四月八日満尾 文音 |
入選 半歌仙「いつしかに」の巻 両吟(滋賀県京都府) いつしかに終の栖やほととぎす 上田真而子 新茶楽しむ穏やかな日々 齋藤 桂 無心の射甲矢も乙矢も中るらん 而 ぶれず迷はず先達の後 桂 山の撓赤らみ初めて月昇る 而 わが丈越すか紫苑一群 桂 ウ ハロウィーン化けて正体なほ露 而 見初めしはパリヴィーナスの前 桂 甘えても拗ねてもぼんは知らん顔 而 縁側の猫またもふて寝か 桂 コンサート和服姿も久し振り 〃 老いて矍鑠いまも晩酌 而 凍月にしんと鎮もる峡の里 桂 ぐつぐつ煮える冬至蒟蒻 而 テロといふ言葉もいまは映像に 桂 知覧を訪ね黙す他なし 而 花盛り飛行機雲はうすれゆく 桂 賑はひてゐる初磯の浜 執筆 平成二十七年三月七日 起首同二十四日 満尾 文音 |
入選 半歌仙「冬日かな」の巻 捌 石川 葵(愛知県) 筆一本虚実皮膜の冬日かな 葵 薄紅色の夢の山茶花 ひろみ 子供等の缶けり遊びきりもなし 葵 小さい順に分けるキャンディー み SLの煙にむせる昼の月 葵 水澄む川の流れ滔滔 み ウ ここかしこカメラ据付け鴨来る 葵 かなりイケメン地方紙の記者 み うはばみのあたしが惚れたあんた下戸 葵 愛の残渣を懐に抱く み お手前の茶筅の音の穏やかに み 隣の畑西瓜ごろごろ 葵 月光に繭となりつつ山蚕 み 修行の僧の皴の深さよ 葵 願はくは争ひのない世の中に み 紙雛飾る緩和病棟 葵 みちのくの友の嬉しき花便り み スタッカートで春のハミング 葵 平成26年11月23日起首 27年2月3日 満尾 文音 |