国民文化祭2008 いばらき

☆筑西市教育委員会教育長賞
半歌仙「河馬の鼻」の巻     八城水斎 捌

暑き日やじっと動かぬ河馬の鼻     八城水斎
 麦藁帽の子等の歓声         広中みずほ
新装のバーガーショップ列できて    大鷹詩葉
カラー舗道の模様いろいろ      原田なずな
月見台風さわやかに抜けてゆく      みずほ
 しばし聞きいる虫の合唱           水斎

菊枕ふたつ作りて父母へ          なずな
 じゃんけんぽんで介護当番        詩葉
裏窓にくっきり浮かぶ筑波山        水斎
 恋も科学もいわば冒険         みずほ
ナナハンの君の背中にしがみつき     詩葉
 下乗の石碑照らす寒月          なずな
般若湯楽しみにして鬼やらい        みずほ
 次期宰相の椅子狙いつつ         詩葉
ひもすがら太極拳にパワーヨガ      なずな
 雲ふんわりと水色の空          みずほ
出航の銅鑼鳴っている花の昼        詩葉
時を忘れてすごす野遊び          なずな
          平成19年6月10日起首 同 7月5日満尾
☆入選
 半歌仙「大獅子の」の巻      八城水斎 捌

 大獅子の跳ぶかたちして滝凍てり  八城 水斎
  なおなお遠し春の足音        広中みずほ
 ゴージャスなピザの焼けるを楽しみに 原田なずな
  ミニパーティーに揃いたる客      大鷹詩葉
 屋形船浮かべ名月ほしいまま       みずほ
  虫の合唱ふっと途切れて          水斎

 連れ立ちて上野の森の美術展        詩葉
   あなた好みの青いスカーフ        なずな
 バツイチの嫁の得意な拭き掃除     白木 薫風
   猫は遠慮し隅で小さく          みずほ
 茶を運ぶからくり人形すまし顔       なずな
  思いもかけぬ値のつきし競り        詩葉
 二胡弾ける青年僧に夏の月          薫風
  筑波嶺愛でつ浴びる行水           水斎
 旅の宿とっときの酒惜しげなく        みずほ
   郷土料理はどれも逸品          なずな
 いつかしら雨も上がりて花の夕        詩葉
  囀りの中渡る吊橋               薫風
             平成20年1月6日起首 同2月6日満尾
☆入選
 半歌仙「風の歌」の巻    岡部七兵衛 捌

 小春日や筑波の山に風の歌  岡部七兵衛
  水きらめかし洗う大根         齋藤桂
 ひさびさに留学子より便りきて   密田妖子
  忘れられてる読みさしの本    結城まゆ
 静々と観月楼は客を待つ      浅沼小葦
  胸の奥まで沁みる菊の香      七兵衛

 蜻蛉連れ古窯めぐりの旅つづく       桂
  チロルハットの似合う助教授      妖子
 乙女子は甘いベーゼの夢を見て    まゆ
   腹を空かせた獏がのっそり      小葦
 陰陽師声高らかに加持祈祷     七兵衛
   孫誕生を触れ歩く婆           桂
 うす絹の雲たなびかせ夏の月      妖子
  ミシュランガイド持って巴里祭     まゆ
 主治医からメタボ傾向注意され     小葦
  鏡抜きする髭の代議士         妖子
 老犬はうつらうつらと花の昼        桂
  田畑潤す暖かな雨           まゆ
     平成19年12月1日起首平成20年1月28日満尾
☆入選        
 半歌仙「ふくらむ辛夷」の巻    棚町未悠 捌

 雨やみて空にふくらむ辛夷の芽    棚町未悠
  囀り聴きつめざめゆく山         静美也
 バースディ春のスカーフ贈られて  八尾暁吉女
  動き軽やかケータイの指        斎藤桂
 街の底隈なく照らす月今宵     岡部七兵衛
  かぼちゃと小豆いとこ煮となる     未悠

 馬の居ぬ南部曲り屋そぞろ寒     美也
  同級生に碧眼の嫁         暁吉女
 蛮カラもはしかのように恋に落ち     桂
  夢を信じて駆けるナナハン     七兵衛
 風を切り助走をつけて信天翁      未悠
  岩噛む波の白き昂ぶり          美也
 異教徒も聖誕祭を楽しまん       暁吉女
  凍月を背にパブへ繰り込む        桂
 むせび泣くジプシーギター弾き語り 七兵衛
  世界遺産に決まる故郷        未悠
 花火果て静かになりし子供達      美也
  平和な寝息蛸壺の蛸         暁吉女
        平成20年3月7日起首 同4月10日満尾
☆入選
半歌仙「小正月」の巻       小野芳梅 捌
 
 小正月雑穀粥の熱きかな      稲垣渥子
  淑気ほんのり黒の紋服      谷口守枝
 島離る連絡船の澪ひいて      石川 葵
  テトラポットの鴎西向く      小野芳梅
 月今宵オンザロックとモダンジャズ 繁原敏女
  胡桃一つを握る掌             梅

 
遼かなり紅葉かつ散る伊吹山       渥
  忘れるという仕合せもあり         守
 薬指わざわざ見せた記者会見       渥
  恋の火傷の癒えぬ踊子          葵
 天安門アイスクリーム売る屋台       梅
   蟻の行列月の影さす           敏
 わが町の下に延びてる活断層       葵
   伽羅の念珠かブレスレットか      渥
 眼科歯科買い物ついでの寺参り      敏
  格安切符春のあけぼの          渥
 花浴びてはにかみ君のプロ宣言      敏
    猫の子じゃれる玉のころころ      梅
               平成20年1月15日首尾
☆入選
半歌仙「波の音」の巻       大鷹詩葉 捌

 陶枕や休むことなき波の音     大鷹詩葉 
  朱夏の座敷を抜けてゆく風   広中みずほ
 寡黙なる庭師の技は見事にて   八城水斎
  父子代々守る老松        原田なずな
 終電の人を見送る十三夜        みずほ
  都会の隅で蚯蚓鳴きおり        詩葉

 爽やかにチェスとワインと愉しまん   なずな
  チャイナドレスのよく似合う女     水斎
 幸せの薄そうな肩そっと抱く       詩葉
  細く一筋上る香煙           みずほ
 杖置きてしばし安らぎ常陸蕎麦     水斎
  賢い犬が傍を離れず         みずほ
 首相立つ月の凍てつく突堤に      水斎
   懐手して振り返る過去        なずな
 どこからとなく聞こえ来るカンツォーネ  詩葉
  聖母子像を囲むエンジェル     みずほ
 花の山お服加減を問われいて     なずな
  地平はるかに種を蒔く人        水斎
            平成19年8月9日起首同9月2日満尾
☆入選
 半歌仙「地球昇る」の巻      森本多衣 捌

 我が住める地球昇るや月の朝    森本多衣
  くるり複眼回す蜻蛉           鈴木漠
 そぞろ寒父母はいかにか在すらん  在間洋子
  小学唱歌ハミングをして      三神あすか
 新しき駅舎で記念スタンプを       山名才
  現代アート啜る水洟         安丸てつじ

 愛犬と鍋の雑炊分かち合ふ          漠
  放浪の身に友はいらない         多衣
 無一物とても恋慕の灯は消さず     あすか
  指切り交す島の桟橋            洋子
 月涼しよくぞ男は昔事           てつじ
  憂さ晴らしにと麦酒ぐいぐい         才
 蝦蟇睨む今更俺が変れるか        多衣
  背負ひ投げにて柔ら極めん         漠
 産土の神の社は深閑と           洋子
  かたびら雪も解けて流れて       あすか
 フルートは音色も妙に花明り         才
  魂響かせる杜の鴬           てつじ
  平成19年12月18日起首  平成20年1月15日満尾
☆入選
 半歌仙「蟷螂の斧」の巻     福井直子 捌

 蟷螂の斧まで淡く枯れにけり     加藤真美
  しぐれの濡らす庭の飛び石     二村鉄男
 寄せ裂の彩縫い合わせお手玉に 山内多美子
  ひぃふぅみぃと指を繰りつつ     福井直子
 楼門の高きにのぼる小望月         鉄
  新酒携え友の訪なう             多

 きりたんぽ母の味にはまだ遠く       真
  長距離電話切るにしのびず        真
 偶然の出会いとみせて駅で待ち      多
  帰りたくない帰したくない          直
 国々の歴史うずまくインド洋         真
  仏法僧の声と名は別            多
 月涼し浮世のしばり解き放ち        直
  ニートの息子今も独身           多
 欲深のねらい当たらぬ万馬券        真
  韃靼の野に春の風吹き           多
 はるかなる富士を隠して花霞         鉄
  陽炎追いて明日へ駆け出す        直
                平成19年11月13日首尾  
☆入選
 半歌仙「川蜻蛉」の巻       福井直子 捌

 濃く淡く葉を揺らしおり川蜻蛉     小野芳梅
  送りの梅雨のあがりゆく里      福井直子
 垣越しに聴くソナチネの滑らかに        芳
  梨むく母の横顔やさし        森岡しげる
 命一つ生れ出づるあり月まどか        直
  案山子すっくと田を護りいて      正木克彦

 旅先の御当地料理ひとり酒           し
  ただひたすらにかけるケータイ        し
 流し目のチョイワル男に気もそぞろ       克
  惚れた弱みを嘆く寒風             直
 分かれ道石地蔵にも雪降りぬ          し
  アンドゥトゥロワで決める順番         直
 赤い月無言で仰ぐ原爆忌            し
  もみの大木泰然と立ち             直
 この選挙介護と年金焦点に           克
  丘を描けゆく遠足の子ら            克
 カリヨンの響く尖塔花吹雪            し
  夢大空に満ちてうららか            直
                 平成19年7月10日首尾
☆入選
 半歌仙「水平線」の巻    小山百合子 捌

 船虫の散ってかたむく水平線  小山百合子
  苫屋の軒に干さる甚平       静美也
 大家族カメラの前で微笑みて     野崎健
  カラオケ好きな祖母は九十    太田ふく
 太古より湯の湧き溢れ月の峡   佐藤敏勝
  茸籠背に渡る吊橋             子

 SLに手を振りながら秋逝かす       也
  阿久悠という天才の詩          健
 抽斗に盗んだハート溢れてる       く
  アキバ系カフェ萌える美少女       勝
 うっかりと河馬の欠伸をうつされて     子
  森の小径に迷い込みたる         也
 酉の市手締めしゃんしゃん福を寄せ    健
  月の屋台に酌みし熱燗           く
 胡同(ふうとん)も北京五輪でビルとなり  勝
  魚氷に上る方丈の池           子
 そぞろ行く前も後も花爛漫         也
  都踊りは「よういやさあー」        健
   平成19年7月18日起首 同9月20日満尾
☆入選
 半歌仙「剣玉の」の巻    小山百合子 捌

 剣玉のひょいと載りたる文化の日 小山百合子
  子らにぎやかに鉢のゆで栗    岡部七兵衛
 十三夜岬をめぐる船ならん       沢藤蓑助
  丘にぽつんと建ちし銅像         静美也
 散策のふところにある鳥図鑑         衛
  炭出す橇と擦れ違いたる          子

 雪催マイク片手のリポーター          也
  またはぐらかす恋の本命           助
 偽りの愛とて神に許し乞い           子
  鬼怒の河原に一管の笛            衛
 鶴翼の大軍ひたと静まりて           助
  村を総出のエキストラ陣           也
 安酒場月に汗飛ぶフラメンコ          衛
  紫煙の奥に狂う灯取蛾            子
 唐突に巨匠黒川紀章逝き            也
  靴音ひびく早春の街             助
 ふうわりと着る新調の花衣           也
  仔猫じゃれ合う午後の縁側          衛
    平成19年9月6日起首  同10月30日満尾
☆入選
 半歌仙「冬落暉」の巻      齋藤 桂 捌

 なだらかな尾根際立つや冬落暉  齋藤桂
  窓辺の壷に香る臘梅       密田妖子
 黙々と墨磨る翁は端座して   岡部七兵衛
  インタビュアーも声をひそめる  浅沼小葦
 月見舟思いがけなきほどの揺れ  結城まゆ
  浜荻の上ふわり薄衣           桂

 裏方も大奮闘の文化祭          妖子
  主演女優にひと目ぞっこん     七兵衛
 放つ矢をちょっと外したキューピッド  小葦
  ロトシックスはキャリーオーバー    まゆ
 溜息と夢ないまぜて独り酌む       桂
  籠の鸚鵡と時にたわむれ      妖子
 荒神輿前へ後ろへ昼の月      七兵衛
  氷あずきに虫歯ずきずき       小葦
 英雄も偉人にもある泣き所       まゆ
  実家にいまも残る落書き       妖子
 パンダ舎の柵の中まで花吹雪      小葦
  上野の森の春は爛漫         七兵衛
  平成20年1月30日起首 同 3月16日満尾