万物がうきうきする春。この欄でときたまご紹介するインターネットの長い長い鎖連句もますます元気で、いま、9000番に迫ってますよー!
8550 ニャンニャンニャンと今日は猫の日 未悠
8551 爪たててほしいと彼がいったから 藍
ふふふ。私の句は「いまから恋をやろうよー!」と誘う句である。フェロモンをかきたてるのは体にいい。連句ではこういう句を昔から「恋の呼び出し」といってだいじにする。
それで、お次の人。
8552 中途半端な恋はご辞退 麦
8553 不倫でも罪でもいいのあなただけ たつみ
こりゃたいへん。
8554 刹那の薔薇が紅く咲く宵 小晴
あらら。いけない恋人たちは薔薇に同化してしまい、刹那を紅々と咲いた。つまり、その夜は行きつくところまで行ったのですーーというの、おわかりでしょうか。
こういう想像遊びを皆で続けるのが連句である。おつぎは明るい春の恋。
8578 東の窓に笑う山々 むう
8579 ナマ足のまぶしい季節になりました みのり
8580 なんでそんなに君はキラキラ ミャーママ
8581 遠くから見つめるだけの僕の恋 雪兎
優しい展開になった。各句の作者たちは全国各地からの接続で、お互い知らない人ばかり。年齢性別も不詳! でも、それはどうでもいい。前の人の句を読んで、想像したら、それに自分の物語をつけくわえてゆく。
つぎの人も。つぎの人も。俳句のように一句で完結するのではなく、帯のように流れてゆく世界―――。
もちろん恋だけでなく、社会の話題も織りこまれる。
8562 三浪生に届く吉報 タマ助
8563 遅咲きのしだれ桜はそりゃ見事 わび太
そりゃあ見事だと思うところに人生の価値観がこぼれる。
つぎは三月二日。
8825 遍路道後ろ姿はきんとぎん ひわ
8826 心に残る暖かな笑み 霞
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)