『アフガンの月』2001.11.16 No.41

afugantuki.jpg 同時多発テロがあった3日後に、インターネット連句の鎖に、アメリカから句がはいった。

  ニューヨークいざよいながら月が出て  雨乞小町

 ほんとうに月も目をそむけおずおずと出ただろう。  
 その日からCNNのニュース画面にはNEW WARというタイトルがついた。10月9日、アメリカの空爆開始からはWAR AGAINST TERRORになる。 月は二度満月になり、いま下弦になる。

  秋深き隣は何をする人ぞ          芭蕉
      ヴェールを透かす アフガンの月   渥子

 先日「市民キャンパス連句会」(豊田市・桜花学園大学)での投句である。
 アフガンの地で月をみあげる女たちがいま確かにいる。子どもを抱いて。「いやだいやだ。雄は嫌いだ」と私は口走ってしまう。テレビの画面はテロで都市を破壊する雄、報復爆撃に飛び立つ雄、闘う雄たちで満ちて見える。日本も特別立法で、対テロ支援に自衛艦がインド洋へ向かう。海外派兵じゃないというが。
 夏の靖国参拝問題からこのかた見えるものがある。
 もしも、憲法九条の条文がなかったら?――日本はいまアメリカを支援して、堂々とアフガンに出兵しているだろう。ベトナム戦争、湾岸戦争もしかり。
 9条がどれだけ日本の敗戦後の方向を決定したか。私たちにどんなに身近な憲法か。真剣に考えるときだ。
 戦争は女、子どもを犠牲にするーーといわれたのは20世紀まで。21世紀、国家の半分を占め、政策決定の権利をもつ女たちは、歴史の責任もとる。
 子どもたちに、どんな世界を残せる?

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)