『若者のすなるオフ会』2000.10.6 No.23

ofukai.jpg 五月に、学生に連休の予定を聞いたら数人が「オフ会」と答えた。
「オフ会って何?」「インターネットで知った人と実際に会うことです」ははあ、オンラインでなくオフラインで話すのね。チャット画面を見せてもらう。
「今セントラルパークから」
「私、研究室から」
「へえ、怒られないの?」
「なんで?」
「うちの先生、研究室のパソコンでチャットやるの禁止だよ」
なんて短い会話をやりとりしている。そうか。確かに楽しすぎるわい。うちも禁止じゃあ!
 若者たちがインターネットをもう出会いのチャンスとして使いこなしているのはさすがだ。
 ところがこの九月、私の連句ホームページのBBS(掲示板)で活躍しているカリフォルニア住まいの雨乞小町さんが日本に里帰りし、豊田市に遊びにくることになった。在米二十二年、貿易関係のスペシャリストで、昨年市民権をとったんだよね。
 この際彼女に私の講義でスピーチしてもらおう。題は「何て不思議な連句縁」ね!
 さて、現れた彼女は想像通りのいきのいい女盛り。授業は大成功だった。
 彼女の勤務する会社に多様な国籍の人がいること、アメリカでは日本の会社のように求人に年齢制限はないという話。市民権をとることの意味――。刺激的な話を聞く学生たちの後ろには、参観日みたいにお姉さん、お兄さんたちが十数人も座っていた。実は小町さんの話を聞きにBBSの参加者が、中部はもちろん、北海道から、東京からやってきたのだ。
 お昼は学生食堂のテーブルでみんなで自己紹介する。小町さんもだが、杏さん、タマ吉さん、カンちゃんー
ーとか皆ネット上のハンドルネームでしか知らなかったどうしだ。
「ええっ。女のかただとばかり思ってました!」
 と爆笑されてる人もいる。年齢も会うとばれるんだ。
 でもびっくりした場合でも、少し話をしだすと、相手が女だろうが男だろうが、BBSで見てきた句の作者――
どこか懐かしいその人にちがいないことがわかる。機械で打ち込む文字だけで、私たちはずいぶん多くの自分を表現できているのだ。性差もこえるつきあいはやはりある。
 ええ、私が若者のすなるオフ会をやっちゃったって話です。

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)