『二番目が産めるか』2000.01.12 No.11

 この冬休みに本棚を片づけていたら十八年前に出た「2000年の日本」という本(経済企画庁総合企画局編)があって、つい読んでしまった。
 バブルと不景気は予想外だったのはともかくとして、情報社会、高齢化社会の到来などは予測されている。
でも、この時すでに出生率が低下しているのに、ずいぶん楽観的なこと。
ーー「高学歴化はいずれ頭うちになり女子の初婚年齢の遅れも止まるだろう」
 う、甘いぞ。
ーー「わが国には欧米とちがうアジア型の家庭観があるので欧米のようにはならないだろう」
 アジア型とは、どうやら家庭は女に任せておくということのようだね。
 私は学生時代「ポストの数ほど保育所を」というスローガンの実現を信じていた世代だが、結局は妊娠で仕事を辞め、再開は末子の入学後であった。。
 確かに女たちはここまでかなりアジア型家庭観でがんばってきた。しかし企業社会になって核家族化も進行。
育った土地を離れた妻の育児、介護には限界がある。ついに介護は社会化すべきだという結論が出た。多くの親たちも、娘を自立して生きる女として教育してきた。二十年たち、その娘たちが社会に出てきている。
 先日ある子育てシンポジウムで「どうしたら女性に子どもをたくさん産んでもらえるようになるでしょうか」という行政側からの質問が出た。ううん。「産んでもらえる」は男の視点ですねえ。パネリストの私はまず言わなきゃならない。「少子化が問題になっているのは、今後の経済政策に若い人口が必要だからでしょう。でも女はね国家の経済を支えるために子を産むわけではありません」「それから子どもは父母の共同生産ですよ」とも。 
 女も男も仕事と家庭を共に大事にする生き方が普通になりつつある。総理府の今年七月調べでは「子育ては夫婦が同じように行う」が40パーセント。「おもに妻がやり夫が手伝う」が36パーセントだった。 
 私の夫は三番めの子で初めておむつをかえたけれど、私の長男は第一子が産まれた日からおむつをかえている。この春は産休が明けるので、保育園の申し込みをしたところだが、通勤に便利なところは、三十倍という倍率になるという。彼らが二番目を産むか、いや、産めるかはいまのところ見当もつかない。
 改めて思うこと。女性はもちろんだが、若者がもっと政治参加しなきゃ。上の世代多数の感覚で、未来を決められていて、いいのかね。ほんとに。

(やざきあい作家桜花学園大学教授)