招待席Ⅲ歌仙ing 「鷹柱」の巻 三吟

歌仙ing(文音歌仙実況中です。毎回候補5句からどれが治定されるか? お楽しみに)

招待席の第三弾です。山猫先生は十一月二十三日丸亀市浄通寺で挙行された「吉岡梅游十三回忌法要」の際、東明雅先生御講話により梅游翁の庵号「賀雀庵」四世を襲名されました。その折の俳諧の座(二十韻・後日詳細報告)で、めぎつねはちょっとお伺いをたてました。「山猫庵とはやや獰猛な庵号でございましたけれど、めでたい雀さんにおなりになるわけですね」めでたい賀雀庵四世はぎろりと目をむいて「いやあ、ちゃんと庵の裏には山猫の穴が掘ってあるよ。呵々」というわけで翌日から再開した両俳諧師のめぎつねシゴキにございます。伝統をふまえつつ21世紀の未来へ飛翔する両師の俳諧!南柏、北摂津、三河の上空を駆けるFAX三吟を、じっくりお読みくださいませ。
なお、今回は「歌仙の流れ」を主テーマの勉強になっています。

■読みどころ

(1)シシャモクイズ
つぎの治定2句を当てるクイズをしました。ご参加ギャラリーの皆さんの解答はこちらに掲載

(2)欲張りめぎつねの自業自得
ナウの述懐の処理

治定作品:歌仙「鷹柱」の巻 三吟

北摂やまねこ庵(賀雀庵四世)
片山多迦夫
南柏猫蓑庵
東明雅
・・・そして、参州めぎつね
矢崎藍 コン!

(FAX文音 2000,11,25起首  )

■歌仙「鷹柱」三吟実況 

◆1(発句)

やまねこ通信toめぎつね (11/25)

   雑詠
墨するや視野の隅なる尉鶲    多迦夫
夏蜜柑ぐしゃと墜ちたる憤り
名にし負ふ鷹柱見ついらご崎
鷹舞ふや鴉の上の鳶の上
逝く年の星びっしりと眉の上

右の他無之恥入申候

◆2 (脇)

めぎつね通信to猫蓑庵(11/25)

名にし負ふ鷹柱見ついらご崎     多迦夫 
   拙 次                      
冬の朝日のたゆたへる浪          (三冬)     
ひゅるひゅる風の冴ゆる暁
双眼鏡の曇る寒暁 
碑ひとつ冬晴れのなか

季寄せでは鷹は三冬になっていますが、鷹柱、鷹の渡りの見られるのは時期的には10月なので、初冬とみなしてはいけないでしょうか。もし鷹柱を三冬とするなら、

碑ひとつ小春日のなか          初冬                    
耳の奥なる凩の声                
旅の果てなる凩の声                

よろしくお捌きください。

☆鷹柱を私も数年前に伊良湖岬の鷹の渡りを見に行ったときに見ることができました。海の南上空のすこし明かるんだ光の中を鷹が、(蚊柱のように)群れて舞っているのです。こちらからは双眼鏡で見ても小さいはるかかなたなのですが、おそらく上昇気流に乗って羽ばたく鷹たちは豪快に風とたわむれているにちがいなく、ちっぽけな浜べにいる私にはそれは天上の遊びに見えました。いくつかの発句をいただいて、すぐ、この鷹柱というやや特殊な言葉に惹かれました。生き物はなぜか遊ぶのです。遊ぶってなんなのでしょう。生きているんだと確認しているんじゃないでしょうか。だから、命いっぱいに遊ぶんですよねえ。遊ぼう!

◆3(第三)

猫蓑庵to山猫庵(11/26)

名にし負ふ鷹柱見ついらご崎     迦
 碑ひとつ小春日のなか       藍
   付
ひょうひょうと能管吹くは誰ならん  雅
美しき市中の城仰がれて                   
市中に琴笛の音の流れゐて                
城中の野点の席に招かれて                
吟行に小学生も交りゐて                    

☆碑は伊良湖の浜べにある芭蕉の句碑「鷹ひとつ見つけてうれしいらご崎」 (この鷹はおそらく冬にいる大鷹。上記の有名な鷹の渡りはやや小型の鷹のさしばの渡り)

◆4

山猫庵toめぎつね(11/26)

名にし負ふ鷹柱見ついらご崎        迦
 碑ひとつ小春日のなか          藍
ひょうひょうと能管吹くは誰ならん     雅
   第四 試詠        
両掌に受けて握りめし食ふ          迦
海苔と梅干茶漬け一碗
床の茶掛は○の一文字
途中下車して友を尋ねる
腰にさげたるお天守の鍵

以上よろしく。20世紀の有終の美を飾りたいものです。 呵々 

◆5

めぎつねto猫蓑庵(11/27)

 碑ひとつ小春日の中              藍
ひょうひょうと能管吹くは誰ならん       明雅
 海苔と梅干茶漬一碗              迦

ひとつと一が気になりますが、家の中にはいりたかったので。

   拙次      
液晶の画面に青い月が出て            藍
有明の市場の門はまだ開かず
  (小春日と月が時分のウチコシになるでしょうか)
木槿咲くバリアフリーの小住宅
コンビニの自動ドアより霧が入り
皮茸のしろのありかは秘密なり

どうも迷ってばかり、いけなかったらお返しくださるなり、お捌きください

☆前回ですでにお気づきかもしれませんが、歌仙の最中に俳諧師に式目のたぐいの質問をしても、返事はめったに理屈では返ってこないんですよね。「対吟してるときガキのような質問をするな」ってえわけではありませんが、私はやはりガキなのだと思わされます。で、答は選択された句にあるんです。読みとれなくちゃイケナイノダ ガキは。ああ、オモテ六句からかしましいめぎつね。

◆6

猫蓑庵to山猫庵(11/28)

ひょうひょうと能管吹くは誰ならん     雅
 海苔と梅干茶漬一椀           迦
液晶の画面に青い月が出て         藍
   付
侏儒の靴屋かこつ秋冷          拙次
床屋の親爺鋏研ぐ秋             
露の砂漠に眠るキャラバン
初猟前の銃磨く友
猪追ひて男四五人

◆7ウラ1

山猫庵toめぎつね

北摂は急に冷えてきて、昨日は炬燵を引張り出しました。歳時記に言ふ竈猫の心境がわかるというものです。ところでこの竈の文字は常用辞典の中で威張って存在している数少ない古い漢字のひとつで、見ているだけで欣しくなります。何もかも軽少短薄の世にあって 。
さて三吟歌仙いよいよ裏にさしかかったところで、第四の拙句改めます。脇句の「ひとつ」に遠慮して次のごとく

4  茶飯の膳に海苔と梅干        迦
5 液晶の画面に青い月が出て       藍
6 露の沙漠に眠るキャラバン       雅
   ウ1句目 拙次
秋惜しむモンゴロイドとコーカソス      迦  
贈られしマルメロ匂う旅鞄
紅葉散り且つ散り熟女かしましく
ポッケには木の実いっぱい頬赤く
秋深き黄河を上る釣紀行  

以上よろしくお捌きください。

◆8 ウ2句目

めぎつねto猫蓑庵(11/29)

海苔と梅干にわがままをもうしあげてすみません。おかげさまで茶飯にありつけました。

5 液晶の画面に青い月が出て      藍
6 露の沙漠に眠るキャラバン      雅
  ウ 1贈られしマルメロ匂ふ旅鞄    迦  
   拙次
くすくす笑ひ媚は天性 藍
髪をゆすれば男七人
垂らした髪をぐいと掴まれ
憂鬱な目が姉とそっくり
処女懐胎といいわけをする

よろしくお捌きください。

*ふふふ。明雅先生を誘惑できるめぎつねの至福!

◆9 ウ3句目

猫蓑庵to山猫庵(11/29)

6  露の砂漠に眠るキャラバン     雅
1 贈られしマルメロ匂ふ旅鞄      迦
2  髪をゆすれば男七人        藍
       付
身のうちの蛇性の淫をもてあまし     雅
おもざしはピエタのマリアそのままに
憂愁と倦怠ひめしまなざしに
世をしのぶ仮の姿のスチュワデス
ゴーギャンの島の娘のたくましく

以上よろしくお捌き下さい。

*やった。私も男七人をとってほしかったです。いい気分だもんねえ。

◆10 ウ4句目

山猫庵toめぎつね(11/30)

明雅先生からのFAXが到着したのが9時半。急に娘からのケイタイ電話で呼び出され、京都へ墓参に出掛けました。嵯峨野に近い丘の上に夢の一字を刻んだ小さな墓です。

1 贈られしマルメロ匂ふ旅鞄     迦
2  髪をゆすれば男七人       藍
3 憂愁と倦怠ひめしまなざしに    雅
   拙次試詠
モジリアーの「裸婦」に惚れ惚れ
ロ短調ミサアルト絶唱
老詩人黒のベレーをちょんとのせ
夢の一字の墓に額づく
心にひびく実朝の歌

以上よろしく吟味なさるべく候     迦

*詩人片山あさみさんのお墓には夢の一字を刻まれたのでしたか。1998年1月3日でした。ここはその事実にずいぶんひきずられたのですが、 ちょっとこらえてロ短調ミサ曲を捧げることにしました。

◆11 ウ5句目

めぎつねto猫蓑庵(12/1)

2  髪をゆすれば男七人         藍
3 憂愁と倦怠ひめしまなざしに      雅
4  ロ短調ミサアルト絶唱        迦
      拙次  
成層圏氷点下なる闇をゆく          藍
天道虫せいいっぱいに翔びたって
回遊す魚群はひれをひらめかせ
樫大樹風にひかりをこぼすらん
空爆の廃墟にあそぶ子らのいて

◆12  ウ6句目

猫蓑庵to山猫庵(12/1)

3 憂愁と倦怠ひめしまなざしに     雅
4  ロ短調ミサアルト絶唱       迦
5 天道虫精いっぱいに翔びたって    藍
   付
朝草刈りの鎌照らす月          雅
草矢の少年帰る昼月
草刈籠の朝露の月
草刈機来る払暁の月
青刈りの香の空に昼月

以上よろしくお捌き下さい。

◆13 ウ7句目

山猫庵toめぎつね(12/1)

4  ロ短調ミサアルト絶唱          迦
5 天道虫精いっぱいに翔びたって       藍
6  朝草刈りの鎌照らす月          雅
   試詠           
母達者いもたこなんきん巨人好き        迦     
ボイジャーは天涯を航く方舟か
戦後間もなくカルメン故郷に帰りけり
喜寿の賀は冷酒と茄子の含め煮で
今世紀何惜しむべきものも無く

以上よろしく夜分の送信申し訳なし

◆14 ウ8句目

めぎつねto猫蓑庵(12/3)

5 天道虫精いっぱいに翔び立って     藍
6  朝草刈りの鎌照らす月        雅
7 母達者いもたこなんきん巨人好き    迦
   拙次 
端切れひろげて絹のお手玉         藍
外へ出たいと猫が呼んでる
社長譲って会長となる
首相も籤で決めたらばどう
仲良きことはしばしうつくし
忘却という幸せなもの

私の母も達者で85歳巨人好きなので付けてみたのですが、「いもたこなんきん」という言葉は関西弁? 解釈ちがいで付け間違いをしているかもしれません。お返しくださるなり、よろしくお捌きくださいますよう。

いもたこなんきんは東京では言わないんです 。句がたくさん並べてあるときは自信のないときです。ただ、そろそろ流れとしちゃふざけたこと言ってもいいと思ったんですけど。。いもたこなんきん、あらよって リズムいいもんね。ところでなんきんってなんだ?とよくもわかりもしないのに付けて怒られるかもしれないぞー!この連句毎日三人まわっちゃうでしょう。ここまでめぎつねは夜中に句を考えてFAXを書き、(真夜中に電話ベルを鳴らすのは失礼ですから)翌朝FAXをいれて出勤。帰ると、もう2枚はいってるんです。あわあわ。
句を考えてあとからお電話したら、南京はかぼちゃでした。「芋タコかぼちゃって女の好きなものでしょ。昔から」そうでしたっけ。あ、タコ焼きかなあ?
(メールから)伊勢地方では、芋、蛸、南京は女性の三大好物って聞いています。私の母も「いもたこなんきん巨人好き」です。「風眩し」の時のなんだか 畏れ多い感じから、今回はワクワクします。「髪をゆすれば男七人」に賭けていました。アタリ!(K)

◆15  ウ9句目

猫蓑庵to山猫庵(12/3)

6  朝草刈りの鎌照らす月         雅
7 母達者いもたこなんきん巨人好き     迦
8 首相も籤で決めたらばどう        藍
    付
大統領なかなか決まらぬ国もあり       雅
折角の不信任案否決され
猿山のボス争いもそのままに
世の中を塵のごとくに見下して
国会の目糞鼻糞いがみあい

以上よろしくお捌き下さい

◆16 ウ10句目

山猫庵toめぎつね(12/1)

ウ7 母達者いもたこなんきん巨人好き     迦
8   首相も籤で決めたらばどう?      藍
9  猿山のボス争ひもそのままに       雅 
   試 詠
テロップにまた地震情報             迦
太郎冠者より次郎冠者好き
悩み果てなし資源無き国
リンゴは墜ちぬニュートンの前
東でき(木)の芽西でこの芽ぞ

以上よろしく山猫庵Ⅰ世賀雀庵4世   迦

時宜こそ連句の一巻の山場をつくると瓢左翁常々言われてました。ウ8句目と9句目を呼び出した7句目のいもたこなんきんは見直しました。パソコンの入力ミスで処方箋を誤り、患者を殺したという大病院の事故を今ニュースで聞いたところ。IT革命などと浮かれているこの国の指導者たちは本当に信頼できるのかなあ。今の臨時首相はちゃんとパソコン打てるのかなあと庶民は疑っていますね。                                      以上

◆17 ウ11句目

めぎつねto猫蓑庵(12/4)

ウ8  首相も籤で決めたらばどう?      藍
9  猿山のボス争ひもそのままに       雅
10  テロップにまた地震情報        迦
   拙次 ウ8句め  
花の日の御堂は暗き弥勒象
花ほろろ夢違観音に逢ひにゆく
簪は珊瑚で留めし花衣
花どっと浴び北国の船溜まり
退院はまださきなれど花の窓

よろしくお捌きくださいませ。

5句候補をあげると自分のとってもらいたい句と、とられる句のちがいがおもしろいのです。両俳諧師の個性は対照的なところがありますしね。明雅先生はつぎが付けやすい句を下さる。山猫一世は「おい、これが付けられるか。呵々」ってのがくるんだなあ。

◆18と19ウ12句目と名残オモテ折立

(初折オモテ・ウラが終わり名残の折オモテにはいるところは漁り場で、付け順がかわるので、明雅先生が2句付けます。

猫蓑庵toめぎつね(12/5)

10  テロップにまた地震情報         迦
11 花ほろろ夢違観音に逢ひにゆく       藍
12  はんこたんなで種を蒔く人        雅
   付
男らのやたら忙しかまひ付け(種付け)      雅
男らに鰊取れそれ鰯取れ            
牛車の要らぬ耕し早く済み           
一ヘクタールの耕しあっけなく済みて      
百姓は昼寝蜂蜜巣にあふれ           

以上よろしくお捌き下さい

◆20 ナオ2

めぎつねto山猫庵(12/5)

11  花ほろろ夢違観音に逢ひにゆく       藍
12 はんこ(半纏)たんな(頭巾)で種を蒔く人  雅
ナオ1 男らに鰊取れそれ鰯取れ          々
     拙次
海の底ひに戦闘機朽ち
廚を映す画像衛星
空港タワー湾ににょっきり
夫婦喧嘩は仲がいいから
夫婦茶碗もいづれ絶滅  
浜の焚火にほめく情念

ここで山猫庵にたまたまお電話して、「鰯とれ」の句おもしろいですねえという話になりました。「そうだね。恋だね」あれ、私はウラ2句目も恋なのでまだ恋の出所とは思わなかった。でも、ちょっと考えて恋句を付け足しました。さていつものとおり朝FAXをいれて、夜帰ってきたら、つぎの2枚のFAXがはいっていました。あれれれ?どちらも私の句への付けです。実は私がうっかりしてこれまでどおり明雅先生にもFAXを送ってしまっていたのです。
道筋が二通りできてしまいました。
しかし、ここは両者の俳諧の見所ですね。

◆21  ナオ3

山猫庵to猫蓑庵(12/5)

不眠気味の目をこすりつつ掃除していたら、はやばやと明雅先生からの付け句のパンチを浴びてびっくり。慌てて次韻いたしました。よろしくお捌きください。

ナオ1 男らに鰊取れそれ鰯取れ       雅
2    浜の焚火にほめく情念       藍
     試詠
一生の流離今更悔やまじと
国境をひそかに抜けてきしふたり
逃避行このみち遂にゆきづまり
流感はソ連A型威をふるふ
年取に平家冒頭吟じつつ

以上                   迦

◆21ナオ3

猫蓑庵toめぎつね(12/5)

  花ほろろ夢違観音に逢ひにゆく      藍
   はんこたんなで種を蒔く人       雅
1 男らに鰊取れそれ鰯取れ         々
2  海の底ひに戦闘機朽ち         藍
   付
天国に一番近い神の島            雅
血の色に梯悟今年もひらきそめ         
知らぬ同志椰子酒を酌み交しつつ        
この夏はニューヨークより定期便        
慟哭の摩夫仁の丘をひとめぐり         

で、どういたしましょ。お電話しよう。明雅先生は「そりゃあ、ここは海の底ひだよ」とすましておっしゃる。山猫先生は「男らに鰯とれ っていう句は浜の太い声の女たちを彷彿させるじゃないか。恋でゆくべきと思いますがね」

ここで歌仙勉強クイズ!
ナオ1「男らに鰊取れそれ鰯取れ」のつぎのナオ2、ナオ3は結局どう治定されたでしょうか?
ナオ2は「浜の焚き火」「海の底ひ」のどちらかです。
それが決まればナオ3は、それぞれに付いている5句の中の1句をあててください。(*もし自分が捌きだったらこうしたいという案もどうぞ)
★あてた方の中から1名様に北海道産ししゃも1箱をお送りします。
メールでキツネスタッフ宛(Staff_KITUNE!<kon@bk.iij4u.or.jp)28日まで

ご応募ありがとうございます。皆さんの各説解答発表!(←クリック)読んでえ!おもしろいよー!

おまちどおさまでーす!
実際の歌仙では、上記直後にたちまち山猫先生からFAXがはいり、めぎつねまでまわって同日12/5中に決着がつきました。。

◆22ナオ4

山猫庵to猫蓑庵(12/5)

1 男らに鰊取れそれ鰯取れ          雅
2  海の底ひに戦闘機朽ち          藍
3 慟哭の摩夫仁の丘をひとめぐり       雅
   付
大向日葵は門にうなだれ            迦
ハイビスカスの挿頭似合へる          
ハンモック吊り白日の夢            
汗拭ひつつ叫ぶ女よ              
はだしの少女水汲んでくる           

以上よろしくお捌き下さい。

<二伸>名オ2句目 何故恋の呼び出しが欲しいと思ったのか 。それは一句目の漁師の女房達が亭主を指図している諧謔味を大切にと考えるからです。
つまり、山猫先生が上記を治定されたということです。私も(もちろん明雅先生も)賛成の流れです。しかし決定までの数時間、めぎつねも皆さんのようにあれこれと計10種類の組み合わせに迷いましたし、別の流れもありえましたよ。それぞれのおもしろさがあるでしょう。 私がこの両先生との歌仙でいかに毎回ご馳走に迷って(悩んでる )かを、皆さんにいっぺん味わってもらいたいと思いついたのがこのクイズを出したわけなんです。
 で、シシャモのお皿にありつくのは抽選でひとりと言いましたけど、今回アタリはお二人きりだし、両方にお送りしますね。イッカさんと未悠さん、おめでとう。送り先のお名前、ご住所と電話番号を Staff_KITUNE!<kon@bk.iij4u.or.jp にメールしてください。
 皆さんの名論議、両先生にFAXでお送りして楽しんでいただいています。山猫先生からはもう「呵々々」と呵が三つ笑い(つまりご満足)のFAXがきましたよ。(なお、今回の治定は当座の付け順にこだわらなかったということですね だからクイズにできたともいえるかな?コン)

【追記】
クイズ結果発表のあとのBBSで「結局は当座付け順にもしばられない。内容ということですね」(麦)というご発言がありました。そうだとおもいます。俳諧師が選択する流れは理屈ではありませんから、正答ひとつというわけではありません。ことに山場をどう扱うかに作者としての個性がはっきり出るのがむしろ当然です。たまたま私のうっかりのせいで、それが見えた(あるいは、めぎつねの勉強のために、あえて見せてくださったようにも推察いたします)のが今回です。もちろん違いを理解し尊重しあえるのも、連衆としての信頼が底にあるからです。
 ★めぎつね自身は「戦闘機朽ち」に、5句の中で最もこだわりをもっていたので、ほっとしています。前句の「男らに鰯とれそれ鰊とれ」という句では、男と女が、めずらしく集団としてつかまれています。この国の歴史を作ってきたのは確かに男たちです。しかし、社会の半分をしめてきた女たちはただ、か弱いしいたげられた存在だったのか。男たちに鰯とれということもあった。戦争に行けとまでは言わなかったかもしれない。しかし戦争に行く男をとどめることはしなかった ー朽ちた戦闘機を私は男たちだけの責任とはやはり思えない ー20世紀の終わり、男女平等社会にいる私は、そんなことが言いたかったのでした。「血の色の梯悟」も華やかで私も惹かれました。でも「慟哭の摩夫仁の丘」の、「ひとめぐり」は、さらりと今に戻る追憶。まるで風が吹いてくるようです。
左は、干物のししゃも(柳葉魚)イッカさん画

◆23ナオ5

猫蓑庵toめぎつね (12/5)

2  海の底ひに戦闘機朽ち        藍
3 慟哭の摩夫仁の丘をひとめぐり     雅
4 ハンモック吊り白日の夢        迦
   付
天外の風をまともの夏館          雅
ケアセンター呆けを憐れむ呆けの人       
雀荘の親仁も既に喜寿を越え          
徹マンにみな疲れ果てバンガロー      
瀟洒なる林間学校杜の奥

以上よろしくお捌き下さい。

◆24ナオ6

めぎつねto山猫庵(12/6)翌朝

3 慟哭の摩夫仁の丘をひとめぐり      雅
4  ハンモック吊り白日の夢        迦
5 瀟洒なる林間学校社の奥         雅
   付
あたしは猫科あまい愛咬           藍
目玉焼きって怖いお料理            
嫉妬焼いてる熱い天板             
秘密は甘い蜜のしたたり            
つぶてが飛んで愛の発覚            
非常階段かけおりる罪

以上よろしくお捌き下さいませ。
私めのうっかりによる混線のおかげで、ぜいたくな句をいっぱいいただき、幸せにひたりつつ。...今から出勤します。ありがとうございました。

さて、いっぺん抑えた恋ゆえに、やるぞー! と改めて恋を呼び出すめぎつね。歌仙の流れはこういうふうにお互いを動かしてゆく ー

◆25 ナオ7

山猫庵to猫蓑庵(12/6)

4  ハンモック吊り白日の夢        迦
5 瀟洒なる林間学校社の奥         雅
6  あたしは猫科あまい愛咬        藍
   拙次 
水槽に飼はれてあはれ紅葉鮒
磧湯に魔女の蛇身の透きとほり
ペルシャ産これほどの美酒あるものか
なんにでもとびつくおいらはだぼ鯊さ
照紅葉天衣無縫の抱擁に

以上よろしくお捌き下さい

◆26 ナオ8

猫蓑庵toめぎつね(12/6)

5 瀟洒なる林間学校社の奥         雅
6  あたしは猫科あまい愛咬        藍
7 磧湯に魔女の蛇身の透きとほり      迦
   付
珍陀の宵に頭くらくら            雅
「高野聖」の書割りの月      
玉三郎の肌照らす月
新酒に酔いし悔の数々
泉鏡花は下戸なりしとか
珍陀は赤葡萄酒の古名

以上よろしくお捌き願い上げます。

◆27 ナオ8

めぎつねto山猫庵(12/7)

6  あたしは猫科あまい愛咬        藍
7 磧湯に魔女の蛇身の透きとほり      迦
8  珍陀の宵に頭くらくら         雅
   拙次
地下室の阿蘭陀時計鳴りやまず        藍
全財産のせ回り出すルーレット
そして誰もゐない故郷の曼珠沙華
民は死に民は生まれて二千年
二千三百二年元旦

なんかむちゃくちゃで申しわけありませぬ。よろしくお捌き下さい
頭くらくらで、むちゃくちゃやりすぎたか、山猫先生一直ありがとうございます。魔女のウチコシだから、もう現実にひきもどるべき。
鳴りやまぬ時計は行き過ぎでした。。

◆28 ナオ10

山猫庵to猫蓑庵(12/8)

今日は太平洋戦争突入のニュースで学校中大騒ぎだったことを鮮明に思い出します。黒板の落書きを英国人の教師がやってきて悲しそうに拭いていました。
閑話休題:

7 磧湯に魔女の蛇身の透きとほり      迦
8  珍陀の酔いに頭くらくら        雅
9 螺子捲けばオランダ時計鳴り出して    藍
   拙次
ミレニアムとか一夜明ければ         迦
ビルの狭間の聖樹点灯
波打つごとし初雁の天
旧盆支度念入りにする
ルオーの道化なにか悲しげ

◆29 ナオ11

猫蓑庵toめぎつね(12/8)

8  珍陀の酔いに頭くらくら       雅
9 螺子捲けば阿蘭陀時計鳴り出して    藍
10  ルオーの道化何か悲しげ      迦
   付
手を振りて帰る燕を送る子等        雅
うそ寒をみな詫ち合う老いし友
うつそ身に刻々迫る老いの翳
あっけなく十字架祭も終る秋
かそけくも漂っている薬の香

以上よろしくお捌き下さい。

こうして、さわやかな秋がやってきました。このしみじみとした季節感の流れこそ歌仙の魅力です。

◆30 ナオ12

めぎつねto山猫庵(12/9)

9  螺子捲けばオランダ時計鳴り出して   藍
10  ルオーの道化何か悲しげ       迦
11 手を振りて帰る燕を送る子等      雅
   拙次
単車を停める黄落の街            藍 
刈田にならぶ分譲の旗
秋の祭りの回覧がくる
草紅葉して単線の駅
線路のどてをおほふ葛の葉
 
よろしく捌き下さい

◆31 ナウ1

山猫庵to猫蓑庵(12/10)

10  ルオーの道化何か悲しげ      迦
11 手を振りて帰る燕を送る子等     雅
12  単車を停める黄落の街       藍 
   拙次
月明し高層ビルがにょきにょきと      迦
仰ぎつつ月へメールを送るらん
まほろばの夕月の冷え覚えつつ
まほろばの満月よぎる航空路
出雲路は神有月の良夜にて

以上よろしくお捌き下さい。

◆32 ナウ2

猫蓑庵toめぎつね(12/11)

ナオ11  手を振りて帰る燕を送る子等     雅
ナオ12   単車を停める黄落の街       藍 
ナウ1  まほろばの夕月の冷え覚えつつ    迦
   付
塀だけ残る古郷の家              雅
竹馬の友と出会ふホスピス
旧里に昔を語る道祖神
旧里の家棲む人もなし
父の形見と残る井戸塀

以上よろしくお捌き下さい。

めずらしくナオの月がウラにこぼされました。こういうときもあるのですね。かろやかに過ぎた秋が終わり、歌仙のこの位置は述懐の出所です。
しかし述懐5句のうちどれを選ぶか。すでに序破急の急にはいっているところで述懐をどうおさめるか。これが大事なところでした。
油断していためぎつね苦戦します。

◆33 ナウ3

めぎつねto山猫庵(12/11)

ナオ12  単車を停める黄落の街       藍 
ナウ1 まほろばの夕月の冷え覚えつつ    迦
2    竹馬の友と出会ふホスピス     雅
   拙次
繰り上げのたすきを継いでゆく駅伝      藍    
マラソンの並んで走る息づかひ
走者しか知らぬゴールの大歓声
新聞のちらしの多き師走なり
雑煮とは丸餅ぐらり煮るべきぞ

よろしくお捌き下さい

山猫庵toめぎつね(12/11)

付句について質問
ホスピスとスポーツの関聯が唐突。テレビでも見ている情景?雑煮は丸餅に限る、それもぐらぐらと煮てほしいと解してよろしいか?
以上教示を待ってから南柏へ送信します。

めぎつねo山 猫庵(12/11)

人生しょせんマラソンというつもりでした。ホスピスで竹馬の友と会えたのは、そんなに暗く取らないでいいのではないか。いっしょに走ってゴールへいこうというつもりでした。舌足らずだったでしょうか。お餅の句、直します。

雑煮とは丸いお餅を煮るべきぞ
or
雑煮とは切餅にして焼くべきぞ

めぎつねto山猫庵(12/11)

追伸 もう一案

焼いている豆餅ぷっとふくらんで

◆34 ナウ4

山猫庵to猫蓑庵(12/11)

1  まほろばの満月よぎる航空路     迦
2   竹馬の友と出会ふホスピス     雅
3  走者しか知らずゴールのよろこびを  藍 
   拙次
湖は穏やか諸子釣れそめ
初船乗りの湖に漕ぎ出す
ほほくすぐって貝寄風が吹く
魚入 (えり) 挿してよき湖の眺めぞ
霾 (つちふ) る中を嫁っこがゆく

以上よろしく加朱願います。典型的な西高東低の気圧配置とか切角御加養の程。 

お世話をかけてしまいました。「走者しか知らぬゴールの大歓声」は確かにもうひとつでした。「よろこび」とひとりの人生に集中したほうがいいですね。「竹馬の友と出会ふホスピス」にあえてとりくまんとして、人生未熟をおもい知らされためぎつねです。次にひろびろとした(走者の沿道の)風景がついてようやく救われたのでしたが。
●山猫先生に「駄句ばかり並べてご迷惑をかけました」と申し上げたら、「最後の追伸の豆餅の句のFAXがまにあっていたら、あれをもらってたけどね」ということでした。合格点はあれ1句だったか。ご見物の皆さまもどうぞめぎつねの失敗をお笑いください。コン。
●で、明雅先生「あそこはねえ、ホスピス以外は軽い述懐ばかり並べておいただろう。あれくらいでいいんだよ。名残の裏まできて、重述懐のホスピスで新しい物語をはじめたら、後がないんだからそりゃあ、苦労するよ」
はい。ほんとうに苦労いたしました。歌仙の流れの「急」 ーすばやく巻き上げるべきところで、じたばたしためぎつね。コン。いまだ俳諧の道遠し。

◆35 ナウ5

猫蓑庵toめぎつね(12/13)

2  竹馬の友と出会ふホスピス       雅
3   走者しか知らぬゴールのよろこびを  藍 
4  初船乗りの湖に漕ぎ出す        迦
   拙次
咲きみてる花は昔の長等山(ながらやま)   雅
海苔の香の大握り飯花の昼
花盛りここは芭蕉の住みし跡
鴎群れ遊覧船も花盛り
蛤焼きの香の芬々と落花霏々(ひひ)

以上、よろしくお捌き願上げます。
*長等山は滋賀県大津市三井寺の背後にある山
古への志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな(平忠度)

◆36 挙句

めぎつねto山猫庵(12/13)

3 走者しか知らぬゴールの大歓声       藍 
4  初船乗りの湖に漕ぎ出す         迦
5 咲きみてる花は昔の長等山(なからやま)  雅
   拙次
五平餅売る旗のうららか            藍 
受話器を置けば舞ひこみし蝶
回廊ぬらすあたたかな雨
回廊づたひあそぶ蝶々  
土蔵の奥の雛の彩り
猫のお産にさんざめく宿

◆満尾

山猫庵to猫蓑庵(12/15)

16  初船乗りの湖に漕ぎ出す          迦
17 咲きみてる花は昔の長等山          雅
18  回廊づたひあそぶてふてふ         藍 

以上、只今満尾致しました。丸亀における三吟・二十韻「梅游忌」にひき続いての歌仙張行にて、さぞかしお疲れのことと恐縮に存じています。一段落したところで校合稿をお届けしますので、忌憚無きご意見をお願いします。

めぎつねto猫蓑庵・山猫庵(12/16)

花の御句を一昨日いただきましたのに、挙句案がおそくなり申しわけありませんでした。ご助力によりなんとかの満尾。いつもながら、身に余るぜいたくな歌仙行のご指導をたまわりありがとうございました。

猫蓑庵 to山猫庵(12/16)

先日の 梅游忌の巻に続いて本日鷹柱の巻首尾よく満尾おめでとう存じます。

◆推敲

1山猫庵 to猫蓑庵(12/16) 

初校案
第六「露の沙漠に」→「沙漠露けく」では?
名オ4「白日の夢」夢違観音近いので、「ハンモック吊りタイムスリップ」としたし。
名オ12単車
名ウ2竹馬
名ウ4初船乗り
            乗り物三打越し、訂正致したし。
以上とりあえず私見です。再校、三校よろしくお願いします。

2めぎつねto猫蓑庵 、山猫庵(12/19)

名オ6案  甘い愛咬→かるい愛咬
ではいかがでしょうか。

3猫蓑庵 to山猫庵、めぎつね(12/20)

鷹柱の巻初校拝見私見を申し上げますのでご検討下さい。

第六「露の砂漠に」→「露の野末に」
ウ9ボス争いもそのままに→ボス争いも酣に
名オ6甘い愛咬→きつい愛咬
名オ11帰る燕を→牧場帰りを
名ウ2竹馬の友→竹馬は子供の玩具なれば乗り物としないでも佳いのではあるまいか。
名ウ4初船乗り→魚入挿す人の位に直せないか。

以上よろしく。

めぎつねto猫蓑庵 (12/20)

今回はことに歌仙一巻の序破急の展開、流れの面でたいへんべんきょうになりました。
三省堂からついに明雅先生の連句歳時記。決定版ですね。佛渕氏よりは「只今校正追いこみ中」とおききしていました。本当にご多忙の中をありがとうございます。出版の日を待望しております。寒い冬でございます。どうぞおすこやかによい年をお迎えくださいますよう。

猫蓑庵 toめぎつね(12/20)

20世紀も遂にあと4,5日と思うと急に名残惜しい気がします。今年は大変ご縁があってこのつい一ケ月のうちにも山猫先生を交え三吟を二巻も巻くなんて本当にすばらしい年でした。来年もぜひ今度はめぎつねさんの発句でFax文音致したく、よろしくお願い申し上げます。本日はお心尽しの特選子の日頂戴致し有難う存じました。いつもいつも飲んだくれのしょうもない老人に対していたわりのお心遣いうれしく存じております。時候柄風邪などひかれぬよう、またご自愛ご加餐されよい年をお迎え下さい。

山猫庵 to猫蓑庵、めぎつね(12/20)

一応、本日三校の上送信します。尚、好案がありましたら、四校よろしく。
以上

山猫庵 to猫蓑庵、めぎつね(12/29)

ご厚志の酒肴致着致し候、山猫早々に坐右を整理し、一献乾杯しながら参州めぎつねと南桃の猫師両庵の幸弥長からんことを祈念可仕候
思いもかけず、後二日にて新世紀を覗くこととなり、喜寿の耄碌やまねこ些かひげを繕うて、新年の発句を待受け居申候。故よろしく願上候。猫蓑庵先生も伊丹の銘酒と参州子の日」をこもごも乾杯し乍ら手ぐすねひいて相待構えらるることと推察仕候。末筆ながら佳き歳をお迎えの程祈念如斯御

治定作品:歌仙「鷹柱」の巻 三吟