月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫 真美 (2015/8/6~9/17)

前句   月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫  真美


「募集」中日新聞2015年8月6日(木)募集
 (あなたの気持きいてみたいの ヒロ)
蛍狩せせらぎだけがささやいて    柏原久子
クマゼミの声で聞こえぬプロポーズ かぐやひめ
 夏は蛍からいつか蝉へとバトンタッチ。ヒトの恋は夏じゅう、一年じゅう。  
つぶらな目大山椒魚何見てた   みの虫アッパ
 (あなたの気持きいてみたいの)
永遠に叫び続けるのかムンク       ひわ
 ちょっと難しい宿題でしたが、いろんな「あなた」が出た付け句バラエティーいかがでしたか。まだ力作を残し発表はここまで。ありがとうございました。
さて、おまちかね次の宿題です。
  月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫  真美
 この五七五句に七七句を付けてくださいな。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)             
母の入れ歯が笑う上段         千恵子
 うふ。お宅の冷蔵庫は何がはいってますか。 
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
氷のかげに逃げたペンギン         藍
 待てえ! 真夏の月夜の夢、メルヘンもどうぞ。ええ、恋句でも時事句でも。想像妄想たくましく。
付け句は、はがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。十六日 (日)までにご投函を。七七句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「しめきりですよ」中日新聞2015年8月13日(木)締切
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫   真美)
うなぎひときれ猫の朝食         文子
 付け句宿題はもう出されましたか。酷暑ですけど、いえ、酷暑だからこそたのしく脳の体操を。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
失くした恋のかけらさがして       聖子
 え、あった? 
ところで,お知らせを。愛知県連句協会主催の連句会が名古屋で開かれます。来年の国民文化祭あいちを盛り上げる「プレ連句大会」です。座の連句を経験されるチャンス! 初めてのかたも連句ベテランさんたちが親切に教えてくれますのでご遠慮なくどうぞ。もちろん愛知県外のかたも。
とき・九月二十七日(日)午前十一時―講話「芭蕉と名古屋」十二時―四時半実作連句会。ところ・名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール) 会費・三千円(お弁当つき)。終了後に懇親会あり(希望者のみ 五千円)。 申込みは電話ファクス052―806―0669(愛知県連句協会・青島ゆみを)へ八月三十一日までにご連絡を。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
妻のいびきがピタリととまる       義明
 付け句は、はがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。十六日 (日)までにご投函を。七七句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「支持率わすれ」中日新聞2015年8月20日(木)発表1
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫   真美)
お疲れさまのメモと枝豆        とよこ
 「お、ありがたい」
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
野球は勝ったし孫らも寝たし      たんき
冷や酒ちびり止まらずちびり     大畑杉子
 幸せってなあ、こんなささやかなものだよ。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
又吉さんにならい執筆        羽下正一
四度目の結婚明日に控えて       侘助  
 タフな人生もありーーね。 
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
ビール片手のお菊とお岩       橋本悟郎
 出たー、真夏の怪。じろりとお姉さまたち。
サラダ貪る狼男            彩由美
 「あなた怖くないわね」「今はやりの草食系なんです」 
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
冷凍したい法案もあり         ドロン
 「それが多くの国民の声です」と。
賞味期限の切れてる政治       位田仁美
支持率わすれ朝まで飲むぞ      ウッチー
 もっと下がりますよ。お覚悟!
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
凍土に眠るはらからあまた      山田登志
 八月にぶり返す深い悲しみ。戦地で奪われた命を肉親は決して忘れない。
    (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)
「桃と葡萄」中日新聞2015年8月27日(木)発表2
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫 真美)
ふわあーと冷気で失神寸前     木村れいみ
 だって熱帯夜ですもん。
冷やした下着クセになりそう     岩崎尚子
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
プリンの横に車のカギが         澄代
 わー、あった! 夕方さんざん探したのよ!
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
ねえ食べてよとタルトが誘う      みゆき
透きとおる肌ゼリーぷるぷる     たなたな
 なまめかしいこと。
甘く冷えてるひと夏の恋    竹子デラックス
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
並んだアジと目が合いドキン     かーぽん
 「夫が大漁の晩。釣りたての魚の目はそれは美しくひきこまれて見てしまいます」――ボクヲタベルノ? わあそんなこといわないで。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
桃と葡萄がお見合いしてる      みどりん
 「しょせん短いおつきあいですが」お互いよく熟れてジューシーなときですしね。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
妻のへそくりきっとあるはず      非真人
 隠すほうも探すほうもよく思いつくこと。
シャケの切り身の下に通帳       モニカ
 これはごっそりだぞ。
へそくりないかアチャ遺書が出た   もと爺ぃ
   (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)
「悪魔一匹  」中日新聞2015年9月3日(木)発表3
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫 真美)
女ひとりの寂しさあふれ       鈴木正子
 ついまた開けている白い扉―。
百日紅の音もなく散る          泰枝
 暑い盛りもようやく過ぎましたね。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
医局の奥の卵子のねむり        らむね
 「冷凍されている未受精卵子」。自分のDNAをのこしたいヒトの願いを医学が追う。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
サヴァランできたかラム酒しっとり    玲      
 ブランディーでも。フランスの食通で『美味礼賛』の著者の名をもつおとなのケーキです。
パテシエになる夢の始まり         暁
 お菓子の職人さんはのぞきと味見からだもん。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
キューブとなって眠る夢たち      タヌ公
 正立方体の無機質な氷。この美しさは!
マンモスの夢じわり溶け出す   みの虫アッパ
童話かきたい夢を解凍        伊藤紘美
 むむ発想がわいてきた。書けそう。
解凍できぬ恋の真実          たまき
 なんだか不思議な空間にきてしまいましたね。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
冬眠不足の熊がうとうと        ふさ子
 あらっ、こんばんは。
残暑を避けて悪魔一匹         眠り猫
 皆さんも今夜お宅の冷蔵庫をこっそりいかが。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)
「還らぬ人 」中日新聞2015年9月10日(木)発表4
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫 真美)
きょうが期限のエクレア見っけ    加藤典子
鎮座してます宝くじ様        あっぷる
 大事に冷やしておくと当たるんですって?
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
辛子蓮根馬肉の刺身          浅やん
熊本の郷土料理は冷酒で。ふう、ごつうまか。
冬瓜くず煮姑料理          塚本益美
 薄い出汁の味がひやりと。わが家の味です。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
安売り買いの品なだれ落ち       お佐代 
 デパ地下のタイムセールでしょう、もー。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
ゴキブリ親子それっととび出す       涼
迷子の蟻が凍死寸前         加藤晃弘
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
やめた筈だがサプリあれこれ       嘉男
じっと出を待つ座薬カプセル     奥村勝志
 坊やの風邪にそなえてますー。
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
君への手紙クールダウンさ       未那
 悪いけど夏の恋は終わるの。
冷めた心をそっと取り出す       むゆう 
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
戦渦の声を聴く深夜便        エンゼル
 七十年前を語るラジオ。さて、終わる夏よ。
還らぬ人が望んだ平和         ミモザ
    (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)
「募集 」中日新聞2015年9月17日(木)募集
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫 真美)
かくしておいたプレミアムプリン    ひろみ
アイスに名前皆書いてあり        めぐ
 日ごろの家族のたたかいが見えるー。
監視カメラに映ってますよ       やすを
完全犯罪までの秒読み         獅狼
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
横に見張りのヘルスメーター       節子
検診結果は今宵不問に         マチコ
 (月の夜のこっそりのぞく冷蔵庫)
異次元への口ぽっかりと開き       座利  
 愛しの冷蔵庫への想いはいかがでしたか。楽しい句をまだ多数残しつつ発表ここまで。ありがとうございました。さて、つぎの宿題です。
  (ひとつ飛ばしで上る階段   やっこ)
この七七句に五七五句を付けてみませんか。
 (ひとつ飛ばしで上る階段)
すれ違いさらりとなびく君の髮      未那     
 階段の日常には時に小さなドラマも。なぜいそぐの。どこへゆくの。自分のこと、他人さまのこと。想像も自由に。時事、SFも、お笑いも。
 (ひとつ飛ばしでのぼる階段)
新しき命授かるこの良夜          葵     
 良夜は十五夜ですね。秋の句もどうぞ。付け句は、はがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。二十七日 (日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)