信号待ちにどっと薫風 れい (2015/4/23~6/18)

前句   信号待ちにどっと薫風      れい


「募集」中日新聞2015年4月23日(木)募集
 (此やうな末世を桜だらけ哉 一茶 )
辺野古の海にジュゴンの涙        ひわ
黙祷の日の今世紀増え         やまだ  
赤い鳥居は津波忘れず           暁
 東日本大震災を人々と耐えた高台の鳥居です。
 (此やうな末世を桜だらけ哉 )
鍋磨いてる今日の仕上げに       とよこ
 ひと日ひと日をていねいに生きる。
地蔵菩薩も憩う黄昏         磯貝雅人
 二百年の時空をつなぐ一茶さんの句との交流はいかがでしたか。多くの佳句をまだ手元に残しつつ、つぎの宿題です。
  信号待ちにどっと薫風      れい
この七七句に五七五句を付けてくださいな。
 (信号待ちにどっと薫風)  
がにまたであかんべ顔のブルとぼく     葵
 いろんな人が気持ちよい風の中。姿それぞれ、思いそれぞれ。自由に想像してみてください。
 (信号待ちにどっと薫風)
約束の噴水広場にあと2分         藍
 恋句もぜひお楽しみを。発表は五月ですから輝く初夏の自然も感じて。もちろん時事句、お笑い句歓迎です。SFなど物語の場面作りも。付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。五月三日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)
「しめきりですよ」中日新聞2015年4月30日(木)締切
快い風の中、宿題はもう出されましたか。
 (信号待ちにどっと薫風    れい)
新人さん?スーツにしつけ付いたまま  モニカ
 「知らない人だけど取ってあげました。初々しい! がんばって! と心の中で」
 (信号待ちにどっと薫風)
ゴミを出す実は今日から課長補佐     芙美
 うふ。朝の出勤に袋をぶらさげてどすん。今日はやや緊張していじらしい中年さんです。
 (信号待ちにどっと薫風)
連休はちょっと渋滞田圃道         合
 この渋滞は田植のせいなのですって。田植機をのせた軽トラに、会社が休みで手伝いにくる息子一家や親族の乗用車。「今は機械だから一日でやれます」郷里へ帰る民族大移動にはこんな仕事もあるんですね。「だんだんなくなる風景ですけど」とも。でも、まだ残したいような風景。
 (信号待ちにどっと薫風) 
道祖神ほっぺに何の花つけて      あづさ
 かわいい道祖神ですね。桜が散ってもこれからいろいろな花の咲く季節。旅で見かけたひとこまもぜひ。もちろん経験だけでなく想像たくましく。恋句、時事句、大笑い句もどうぞ。
 付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。五月三日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)
「言ったの私」中日新聞2015年5月14日(木)発表1

 (信号待ちにどっと薫風    れい)
手にさげた菖蒲ちまきもスキップし   つとむ
兄妹のリュックになびく紙の鯉      八朔 
 連休はいかがでしたか。
 (信号待ちにどっと薫風)
スパッツを脱いで生足夏近し      ゆきえ
 まぶしい女たちの季節。
翻るすみれ色したオーガンジー    石川牧子
こちらはエレガントに。 
 (信号待ちにどっと薫風)
目が合った恋のアクセル踏み込んだ   ふさ子
 ドキン。
好きですと言ったの私返事して!  横山美枝子
 車の音で聞こえない? ふり?
 (信号待ちにどっと薫風)
君は右スクランブルで背を向けて  木村れいみ
 「別れなんてあっけない」と。
 (信号待ちにどっと薫風)
米袋抱え直して深呼吸        かーぽん
 「お米を切らしあわてて買いに走ったけど、十キロは重かった」
 (信号待ちにどっと薫風)
株上がる誰かの財布ドットコム    タイタイ
 混んだ財布を持ちたい。しばしでも。
官邸にドローンと忍者降りてきた  宇井美和子
 (信号待ちにどっと薫風)
アスファルト陽炎の先見えぬ国     マチコ   
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)
「ペタンコの」中日新聞2015年5月21日(木)発表2
 (信号待ちにどっと薫風    れい)
夏帽子ふわっと宙に舞い上がり    ハッピー 
羽音立てアシナガバチが家探し      ゆゆ
 あれー、私のうちの方へ来ないでね。
 (信号待ちにどっと薫風)
幌たたみ肩で風切るカブリオレ     美耶子
 お、オープンカー。お洒落!
軽なれど長距離飛ばすターボババ    お佐代
 負けずにGO!
ペタンコの自転車に乗るお相撲さん     暁
 これはまたいい風情。
 (信号待ちにどっと薫風)
プレゼンのシミュレーションは抜かりなし
                  あんでん
 「下を見てぶつぶつ会社員さん。がんばって」
 (信号待ちにどっと薫風)
帰ったらビール飲みたし徹夜明け   もっくん
 「仕事が明け方にようやく片付いて」
残業に比例している衝動買い      ミモザ
 ストレス解消なんですね。ああ!
 (信号待ちにどっと薫風)
どうしても右へ行きたい毛虫いて    眠り猫
 そっちの枝は危ないってば。
粛々と憲法ねじるへそ曲がり      やすを
 さあ、世論はどう対処する!
 (信号待ちにどっと薫風)
スマホ操る少女に揺れるイヤリング     紅
    (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「シンバルを」中日新聞2015年5月28日(木)発表3
 (信号待ちにどっと薫風    れい)
コンサート時間ぎりぎり駆け出して    はる
目の前の駅に電車が入ってく     ATOK
 わあ、間に合わなーい。
 (信号待ちにどっと薫風)
シンバルを背負う僕君はバイオリン    雨蛙
 ほほえましい音楽カップルに会いましたって。 
 (信号待ちにどっと薫風)
初恋はスクランブルの交差点        友     デートしたあの裏道も幻に       まつき       町は変わったけれど。
ジェラートの美味しいお店ホラあそこ 奥村勝志
 (信号待ちにどっと薫風)
おばさんは一期一会のプチ会話    エンゼル
 お互い忘れてしまうかもしれない。でも、ほら
誰かと通うなにか。すぎてゆく刻々。            (信号待ちにどっと薫風)
ひとりでも元気で歩くよ千の風     みのり
 「二年前に主人を亡くしました。毎日の暮らしの中で感じる季節にいろいろなことを思います」
 (信号待ちにどっと薫風)
花水木なんじゃもんじゃに藤の花   井口洋子
 なんてつぎつぎに花咲く季節でしょう。
根は闇へ若葉光へのびのびと        涼
 樹木の命のミステリアス。
 (信号待ちにどっと薫風)
リラの花零れる泣いてしまいそう     ひわ
    (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)
「スズランは」中日新聞2015年6月4日(木)発表4
 (信号待ちにどっと薫風    れい)
サングラスちとかけ直すほそい指     舞々    リバティーのワンピースの裾気にしてる ひろみ
 今流行の小花模様ですよ。
 (信号待ちにどっと薫風)
何だった朝一番のいさかいは     橋本悟郎
 明るい光に忘れちゃったー。
 (信号待ちにどっと薫風)
ドイツ語の試験「ダス・デス」ナニガデル 恵紅
 「ダス・デス・デム・ダスなど定冠詞を覚えるのが大変でした」はい、今もデス。
 (信号待ちにどっと薫風)
日本語がチョーわかりづらい女子の群 伊藤千敏
 「チョー」くらいは通じるんだけど。 
洩れ聞こゆ前はサッカー横演歌     たんき
 イヤホンさんたち。
 (信号待ちにどっと薫風)
七十路はそっと背伸びのストレッチ    夢子
足踏みで歩数をかせぐ万歩計     羽下正一
 運動しないと衰えるとは。老いも多忙。
 (信号待ちにどっと薫風)
スズランは震災思う里程標     かぐやひめ
 仙台から。「あの日から雪の積もる瓦礫にただ無我夢中の冬でした。気付いたら五月、庭に咲いたスズランの花のけなげな白さが忘れられません。おそらく何年たっても」
 (信号待ちにどっと薫風)
雨かもね低空飛行のつばめの子    塚本益美
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「スキ2文字」中日新聞2015年6月11日(木)発表5
 (信号待ちにどっと薫風    れい)
潔いショートカットは五年ぶり    大畑杉子
 さあ、夏ですもの。
ウインドにワイングラスの江戸切子  近藤富子    つかのま心を遊ばせて。
ウェディングドレス小さなブティックに 美恵子
  (信号待ちにどっと薫風)
片手あげ駆け寄る彼の白いシャツ     燈霞
そうなんだ!飛び込んできたスキ2文字  未那
 ららら。うれしく解けた謎。
 (信号待ちにどっと薫風)
武道館ポールマッカートニーがやって来た
                  山本尚子
 ビートルズの初来日から四十九年ぶりとか。世界をまきこんだ青春の嵐でしたね。
 (信号待ちにどっと薫風)
夜勤明け一眠りして学校へ         惠
 「朝と夜看護助手として働き、昼は正看免許を取るため通学」の日々。「自力で脱格差」と!
 (信号待ちにどっと薫風)
ヨチヨチの孫の手を引きヨロヨロと  やっさん
 これ、自然の摂理なり。
カップ付き下着ほしがる母の笑み   ウッチー
 「90歳で可愛いんだから、モー」って。女。
 (信号待ちにどっと薫風)
旗を振り九条護れのデモが来る      一誠
淡い黄の大輪薔薇の名はピース     たまち
    (矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)

「募集」中日新聞2015年6月18日(木)募集
 (信号待ちにどっと薫風    れい)
七人の園児を載せてベビーカー     まさみ    ベビーカー乗っているのはお犬様    由美江  
 大型はもちろん、ペット用もあるとは。
 (信号待ちにどっと薫風)
杖もなく縋る手もなく独り立つ      トム   
車椅子ブレーキ操作に汗かいて      冴子
 がんばってるかたたちの句がたくさんでした。    ミニふたり会話が途切れ墓参り    田淵義明
 青葉の信号待ちに垣間見る人生模様、いかがでしたか。御投句多数多謝。さて次の宿題です。       あなたの気持きいてみたいの   ヒロ
この七七句に五七五句を付けてみませんか。
 (あなたの気持きいてみたいの)
横顔が優しい雨のティールーム       藍     恋人でも夫婦でも、親子関係でも、この際ききたいことをどうぞ。事情や、場面なども自由に想像してください。シリアスでも、お笑いでも。
 (あなたの気持きいてみたいの)
鯰どの無念無想の沼の底          葵
 うふ。生き物たちも実は何考えてるか。さて今やこの国は大変なとき。政治も追究せねば。発表は七月いっぱいですから、梅雨明けの暑い句もどうぞ。付け句ははがきで〒460 8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛て。住所、電話番号、ペンネームのかたも本名を必ず。二十八日(日)までにご投函を。五七五句ですよー。
(矢崎藍 作家・桜花学園大学客員教授)