今日をひたすら鳴いている蝉 京 (2006/7/27~9/7)

前句   今日をひたすら鳴いている蝉   京

「募集」中日・東京9月7日(木)
 (今日をひたすら鳴いている蝉 京)
好きだっていえない好きもあるのです  石ころ
合宿の大鍋にまでまぜる恋        佳代
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
草いきれ真っただ中の尾瀬の道     懐堂
夏にして暖とる海女の艶話      舘まもる
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
門柱の上を居場所と決めた猫      きみ子
蝉さんの句に付け句多数ありがとうございました。懸命に生きるわれら仲間たちでした。掲載できなかった佳句残念。次回をお楽しみにね。
さて、女子学生さんのこんな句を発見。
 思いがけない好きのスタート  さくら
 今度はこの七七句に五七五句を付けてくださいな。ご年配のかたもみずみずしい心で。
 (思いがけない好きのスタート)
星を見て今夜も君と長電話       美恵
 うまくいきそう? きっかけは? 相手の姿、性格は? 経験だけでなく、ひとさまの話、願望(!)の場面、物語。自由にご想像を。
 (思いがけない好きのスタート)
冥王星軌道ななめの美しさ        藍
「好き」の対象は食物、動植物、趣味、妖怪、なんでも。大笑い、時事句、秋の風景句歓迎。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を明記。九月十六日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「寝不足の」中日・東京8月31日(木)発表5
 (今日をひたすら鳴いている蝉   京)
夕暮れにぽつりぽつりと月見草        紅
車庫内で夜行列車が昼寝中       三日月 
さすがに秋の気配。蝉の声も油蝉さんからつくつく法師さんにバトンタッチですね。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
寝不足のティンカーベルはパックする  あおい
後朝のオフィスせつなさ噛みしめて  真宮天狼
 さあ、仕事仕事!
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
年金の目減りに耐えて昼茶漬け    岡田銕夫
好景気わが家の前を素通りし        飴子
 いったい何の数字が上昇したってのさ。
あき缶をのせたポストが笑ってる      喜水
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
爺婆がお手手つないでデイケアー     ゆうく
「私らも、今日一日をがんばっています」と。
ほどほどに義理は済まそうなあ婆さん   嘉男
 人情は残そうね。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
童には還らぬ母の車椅子         タヌ公
 意識が明瞭にあって、体が老いる。「年をとることは、その日の自分に耐えること」とは、ある90歳のかたの言です。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
足取りもスイングになるジャズフェスタ    暁
踊る阿呆あたしの年をきくなかれ     パオ
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「秒針の」中日・東京8月24日(木)発表4
 (今日をひたすら鳴いている蝉     京)
日傘さす母を眩しく見上げた日  なずな主婦
 母さん、きれいだったね。ある一瞬が子どもの記憶にのこるんですよ。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
炎天下自転車こいでスーパーへ      ベス
地にラジオおいて葡萄を収穫す     念仏利
汗かいて、夏まっさかり。
この暑さガンバだ明日は給料日     笠松孟 
あと五日はやく来い来い入金日      亀麿
 ATMという機械殿がジーコジーコと通帳記入してお金をくれるんだ。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
吾はいま癌と闘う真っ最中      後藤雪子 
日盛りの外気に触れて退院す     まころん
 ご本人、ご家族、この夏入院仲間の句たくさん。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
秒針の速度が違う僕と君         獅狼
背を向けてメールチェックをする君と  日々草
 ささやかな疎外感に耐える。これぞ現代人のストレス。「デート中はケイタイのスイッチをお切りください」ってアナウンスなかったっけ。
(今日をひたすら鳴いている蝉)
不老不死の妙薬咽に詰まらせて     ふさ子
 進歩はいつも両刃の剣。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
戦争をしなさい車も売れますよ      悪魔   
ゆくりなくよじれはじめる三次元  岩津志乃ぶ
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「黄昏の」中日・東京8月17日(木)発表3
 (今日をひたすら鳴いている蝉   京)
抜け殻がまたひとつ増え大合唱      洋一
クレーンがとまったままの雲の峰     西下
 お盆はいかがでしたか。先日は船で移動して送電線にひっかかったクレーンもありましたが。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
アサガオの花数えてる一年生     位田仁美
 朝顔は今なお夏休みの宿題の定番です。鉢に種まきして育て、花を毎朝数えるんですよー。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
娘来て八人分の夕ごはん       伊藤紘美
じいちゃんがねじり鉢巻きバーベキュー 小あき
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
エアコンを効かせゲームで遊ぶ孫    しろ子
 幸せそうな2006年夏。この暮らし方でよいのか、いつまで続くのかとも。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
クラス会思わぬ人と恋におち     やっと亀
黄昏の湯船にふたり音たてず      のりこ
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
新盆に般若心経青い数珠       塚本益美
 青い数珠が清らかで悲しい。
一周忌妻はあなたが好きだった    田渕義明
 む。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
西方の戦止めよと祈りの日        水瓶 
戦争を知らない人の反戦歌      村井照代
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授) 
「宵祭り」中日・東京8月10日(木)発表2
 (今日をひたすら鳴いている蝉  京)
汗拭い空見上げまた草を取る       とよこ
 このながい夏の日よ。私の時間よ!
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
干したての梅を一つぶつまみ食い    たかこ
「梅雨が明け蝉が鳴くのを待ってました。干したてのほかほか梅おいしいんですよ」
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
冷房の中の仕事もきつかとよ     鈴木正子
大失敗ひたすら詫びて日が暮れる  水谷三和子
 組織の中で全うする一日。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
円満に会社を去った日妻も去り   水野千恵子
 ありゃ、そんな。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
紺浴衣糊付けアイロンきっちりと     さなえ
 女のたしなみ。
宵祭り麻の単衣に身を焦がす     近藤スズ
 男の粋であった。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
週寿過ぎ矍鑠として木に止まり  おめゃーさん
「蝉の地上での平均寿命の俗説七日間を週寿と独断で命名しました」と。
力尽き目にした最後の木々の青    松山みわ
 蝉さん御最期。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
首だけがすげかわっても戦好き      かり
空爆と赤いドレスのブラームス      真太
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「見いん見ん」中日・東京8月3日(木)発表1
(今日をひたすら鳴いている蝉  京)
朝顔が少ししおれて昼の月     宇井美和子
スーパーが三店あってはしごする   佐藤澄子
さあ、夏を生きなきゃ。
エコバッグさげてじわじわ歩く道     圭子
 世のためわが身のためです。
(今日をひたすら鳴いている蝉)
ひらひらとわたしかわいい!ジョーゼット 奈実
 透ける布地がはやってますねえ。薄色をなびかせて、若い生き物たちが街をゆく。
  (今日をひたすら鳴いている蝉)
黒日傘黒いパンツの君は魔女     まさくん
 「お尻ぷりぷり。いけてます」
(今日をひたすら鳴いている蝉)
湯の宿に老女集いて肌自慢     河田せき子
 女のオーラ発散。
(今日をひたすら鳴いている蝉)
人はなぜ争うのかと見いん見ん    山田登志
靖国の森は自―自か民民か      水谷允子
 どっちもこっちで。
ニーニーと親のすね食うパラサイト   ゴロー 
  (今日をひたすら鳴いている蝉)
働けどワーキングプアという格差    ひわ
日々働いていれば、世の中よくなるはずと思いこんできた世代。忘れていたものは何。
(今日をひたすら鳴いている蝉)
廃線跡ここから希望が走ってた     青麦
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「しめきりですよ」中日・東京7月27日(木)
ようやく蝉さんたちの合唱が始まりましたね。宿題はもうお出しになりましたか。
(今日をひたすら鳴いている蝉  京)
紺スーツめざす会社の自動ドア    内定法師
 今年は梅雨のさなかも蒸し暑くて、授業でも暑い句に脱線しましたよ。江戸時代の有名な連句。 
市中は物の匂ひや夏の月    凡兆
  あつしあつしと門々の声   芭蕉
         (歌仙「市中は」の巻より)
凡兆さんの句に付けた芭蕉さんの七七句、いかがですか。今の時代にも実感があるでしょう。
それに、私たちはたいてい「暑い」のをいやがって暮らしてますけど、その「暑い」ことが俳諧(俳句・連句・付け句)では価値があって、季語になってるのも、今更だけどおもしろいですよね。もちろん蚊にくわれるのも夏らしい、一句作ろう、ぼりぼりという、これ、風流。季節の移り変わりを感じて生活して、共感する文芸なんです。
ところでこの句、家の中にいると暑いので外へ涼みに出てるんですね。だから月を見上げる。冷房よりよさそう。
おっと、蝉さんの付け句もよろしく。
(今日をひたすら鳴いている蝉)
廃線のレールは草に覆われて       聖子
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号、ペンネームの方も本名を明記。六月十日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「募集」中日・東京7月20日(木)
 (ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月)
流れ星三秒間の願い事          えり
w杯頼まれずとも愛国心      菅野八重子
グリンピア廃墟に増える猫の数      草蝉
白い粉運ぶ稼業のこの俺さ        耕人
(ちょっと待ってと呼びとめる声)
見わたせど蟇が居るのみ昼の怪      JUNE
 付け句たくさんありがとうございました。掲載できなかったかたは次もどうぞチャレンジを。
 さて、夏到来。次の宿題です。
  今日をひたすら鳴いている蝉   京
 この七七句に五七五句を付けてみませんか。蝉さんたちが鳴いている夏、どうお暮らしですか。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
大鍋でそうめんゆでる五人前    敬子
がんばってるか、のびてるか(笑)。何の花が咲き、なんの仕事中か、恋愛中か。愚痴も、嘆きも、哲学も。われらが夏のひとこまを二句で見せてくださいな。大笑い歓迎。鋭い時事句ぜひ。
(今日をひたすら鳴いている蝉)
お別れの快速船は水脈ひいて     藍
 夏の旅の風景も。地名をいれたり。もちろん付け句は経験だけでなく想像ok。SFもどうぞ。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を明記。七月二十九日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)