ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月 (2006/6/8~7/20)

前句   ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月

「募集」中日・東京7月20日(木)
 (ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月)
流れ星三秒間の願い事          えり
w杯頼まれずとも愛国心      菅野八重子
グリンピア廃墟に増える猫の数      草蝉
白い粉運ぶ稼業のこの俺さ        耕人
(ちょっと待ってと呼びとめる声)
見わたせど蟇が居るのみ昼の怪      JUNE
 付け句たくさんありがとうございました。掲載できなかったかたは次もどうぞチャレンジを。
 さて、夏到来。次の宿題です。
  今日をひたすら鳴いている蝉   京
 この七七句に五七五句を付けてみませんか。蝉さんたちが鳴いている夏、どうお暮らしですか。
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
大鍋でそうめんゆでる五人前    敬子
がんばってるか、のびてるか(笑)。何の花が咲き、なんの仕事中か、恋愛中か。愚痴も、嘆きも、哲学も。われらが夏のひとこまを二句で見せてくださいな。大笑い歓迎。鋭い時事句ぜひ。
(今日をひたすら鳴いている蝉)
お別れの快速船は水脈ひいて     藍
 夏の旅の風景も。地名をいれたり。もちろん付け句は経験だけでなく想像ok。SFもどうぞ。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を明記。七月二十九日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「本能寺」中日・東京7月13日(木)発表5
  (ちょっと待ってと呼びとめる声   蘭月)
夏の風僕の後ろをついてくる    諸田健伍
キャミソール白き二の腕夏は来ぬ   まさこ
 さあ、梅雨明け!
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
振り向いた彼の横顔好きなのよ   熱田ひろ子
 何度も呼んじゃう!
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
良き昭和とうふしじみを売りにくる  えごの木
 家族がちゃぶ台を囲んでいたころですねえ。
別れぎわいつも小遣い呉れる母    村井由郎
 「いいってば」「いいから」
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
光秀は馬首めぐらせて本能寺       風歩
無一文三途の川で回れ右        あおい
 じゃあ家に帰って、えーと、幽霊になろっか。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
名も知らぬ小花が咲いたプランター  武田礼子
 今は外国の花が多くなって。あなた誰。どこからきたの。
同じ地上に生をうけた仲間。 
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
メーカーを確認して乗るエレベーター   泰枝
出会い系山ほど届く書き込みに       晶
 何か難しい世の中で。
負担増背負いきれない負組は        武
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
編み笠の行脚僧十字路に立つ    岩津志乃ぶ
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「陽電子」中日・東京7月6日(木)発表4
  (ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月)
マイペース農道横切るかたつむり   田口寒村
一日に一往復の山のバス       まころん
 ああ、行っちゃった。時がゆっくり流れている空間ですねえ。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
ただいま!と同時にほおるランドセル   翔馬
分ってる後ろに母の鬼の顔      山本広大
 へっへ、毎度のことで。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
小学生防犯ブザー引き抜いた       洋子
 う。危険は自ら感知せねばならぬ時代。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
基地移転3兆円は誰が出す       タマ助
共謀罪井戸端会議に法の網     渡辺多美子
 ニコニコこついていかないこと。大人も今。
青い空九条だけは守りたい        飴子
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
飲み屋街素通りできぬ訳があり     非真人
引き止めて帰りたくない終電車   小林亜紀子
 うふん。夜更けの演歌です。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
あなたなら「お茶などどうか」と又言って 洋子
 「お互い忘れちゃうほど年とっちゃって―」ですって。
わーん、わが脳の未来がこわいよー。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
加速器の中すれ違う陽電子      石田吉保
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「一呼吸」中日・東京6月29日(木)発表3
  (ちょっと待ってと呼びとめる声   蘭月)
梢揺れ淡黄玉の杏かな            水瓶
もぎたての立派なゴーヤお裾分け   松山みわ
 自然の恵みはなんでこんなに美しいの。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
蛙鳴く田を埋めたてた土の中     鈴木正子
檻の中ペットショップのつぶらな目  矢野節世
 人間たちのしてることだよー。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
雑踏の中でも君は鮮明で       大杉ゆな
小麦色ビキニの肩に髪がゆれ    塚本益美
 私をうつオーラ。これも生き物だからね。 
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
ありえない期待を胸に耳澄ます    斎藤花奈
あ、あのねあなたのことが好きだから  チャン
 初々しい。学校の授業からの投句です。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
死神を振り切って胸なでおろし    宮脇正仁
 「通学の列車から振り落とされた時、両親が
続いて死んだ時、胃ガンで手術した時――」
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
911テロの犯人俺じゃない       堺リアン
 いまも容疑者たくさんつかまってるそうな。
加速してグローバル社会に突入し    多美子 
 今、私たちどこにいるのかわかる?
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
一呼吸青の信号瞬いて        脇田鴻洋
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「ワンコイン」中日・東京6月22日(木)発表2
 (ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月)
ハナミズキ雨がさらさら降っている   三日月
うつむいて薄桃色のペディキュアに   日々草
 濡れてる街の風景ももうしばらくですね。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
出勤のパパにチュッてお見送り    もっふう
ほほ笑んで差し出す手には可燃ゴミ    天使
 「主人に感謝しています」
節約ね今日もお昼はワンコイン     小嶋武
 き、きびしい。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
ロスタイム勝利の女神背を向ける    草笛奏
 最後の10分の悪夢もあったよー!
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
雨の日にブランドパラソル借りて行く   洋一
 濡らしちゃだめですからねっ!
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
上手すぎて盗作疑惑かけられる     相坂康
「私の場合なら、ありがとう」だそうです。 
 (ちょっと待ってと呼びとめる声)
失業中NHKは見ないったら      ベンベ 
三ヶ月働きつぎの職探し        さとる
 「ここ五年ずっと派遣と失業の繰返しです。今もこのまま社員にとか、せめて期間延長をといわれたいと期待してる自分がいます」
 (ちょっと待ってと呼びとめる声)
六本木ヒルズの屋上夏の月        恵子
  (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) 
「目を閉じる」中日・東京6月15日(木)発表1
  (ちょっと待ってと呼びとめる声   蘭月)
紫陽花の葉っぱの上のかたつむり    まりこ
じゃが薯のうす紫の花が好き    石田喜美子
 たちどまっている、なつかしいひととき。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
名古屋巻うしろ姿は二十代  あたしんちのママ
 いまどきお嬢さまふう髪型よー。見て見て!
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
似てますがそれは私の靴でして     眠り猫
 うっかりなのか、老いなのか。
笑顔見せ記憶の底の名をさぐる    ふくふく
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
彼の顔近付いてきて目を閉じる    プルート
いけないわ私は二児の母だもの    大岩恵子
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
昼下りそのひと口が豚になる     山田登志
酔ってないビールに焼酎ブランデー  よしみつ
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
妻よりも金を愛したことがある     喜久男
 心に深く仕舞うゴメンナサイ。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
いつの間に疎遠となりて夏来たる      紅
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「しめきりですよ」中日・東京6月8日(木)
 宿題はお出しになりましたか。
 (ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月)
せっけんの香り残して初浴衣      ふさ子
 蒸し暑くなりました。お風呂あがり、ぱりっとした浴衣の夏姿。呼びとめられますよねえ。
 ところで今回の前句の作者蘭月さんは女子学生です。私の「日本語表現Ⅰ」という授業は連句の実作をさせるんです。他の人の句に自分の句を付けるなんて、それまで経験したことのない創作行動のよう。でも、友だちどうし助け合うので、じきにノリノリになって楽しみますよ。 
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
広場には名前知らない夏の花       珊霞
 留学生も五七五句、七七句を指折りかぞえます。江戸時代に俳諧(連句)は「俗語を正す」といわれました。特別な文人でない一般の人が、ふだんの言葉を、リズムにのせて付け句するからですね。近年は高校などでも付け句、連句授業の実践が報告されるようになって、うれしいことです。
 さて、蘭月さんの句に、はがきが飛来中。  
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
懇願を無視して増えるシミこじわ    平敏彦       
下校時が逢魔が時になる怖さ       一服
 付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号、ペンネームの方も本名を明記。六月十日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「募集」中日・東京6月1日(木)募集
 (泣きながら一人生まれてきたんだよ)
嫁に行っちゃう私の娘       熱田ひろ子
孤独ひきずりいつしか五十路     ロッシー
俺ロボットだ工場の隅         真理利

うちにも寄りゃあコウノトリさん   あんでん
「love×2なのに8年子供がいないんです」と。まだまだ佳句たくさん、人生たくさん。胸いっぱいのおはがきもご紹介したいけど、ここでうちどめ。滴る緑美しい季節につぎの前句ですよー!
  ちょっと待ってと呼びとめる声  蘭月
 この七七句に五七五句を付けてみませんか。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
店長が残業たのむときの笑み     啓  
 ごく日常的なひとこま。二句でひとつの場面、物語を作ってくださいな。爆笑句できるかな。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声) 
颯爽と白馬に乗った王子様     サラ
 想像はご自由に。恋句歓迎です。どうぞ夢と期待をこめて。ロマン、メルヘン、SFも。
  (ちょっと待ってと呼びとめる声)
ふるさとの駅に青田をわたる風    一
 夏の季節もおりこんで。さて我らが世の中への鋭い時事句も期待してます。
 付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所と電話番号、ペンネームの方も本名を明記。六月十日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)