いち、にっ、さんしとつづく人生 おはぎ (2003/2/26~4/23)

『しめきりですよ』     4/29(火)東京朝刊・4/30(水)中日夕刊
   (ぜんぶ話すよ今までのこと   うさぎ)
あの夜の無言電話は私なの         ニック
 付け句は誰かの身になって、想像していいんです。(フフ、だからこそ、ほんとのことも安心して句にしてください。もっとも「家庭内の恥を句にするな」って怒られてるというお便りもありましたけど)  
 春うらら、新入一年生の「日本語表現Ⅰ」の授業も、教室80人満杯の女子学生の熱気にむせながら付け句開始です。でも、付け句? みんな知らない? 「まったく、この国の付け句する伝統文芸、連歌・俳諧(連句)が中学、高校の教科書に載ってないなんて!」と、慨嘆しつつ、二時間めにはこのコラムの過去のコピーを読んで楽しみ、さっそく今回課題句に挑戦。「難しいー」言ってるわりには笑ってる顔ばかりでした。   
   (ぜんぶ話すよ今までのこと)
握った手ぐっと力をいれる君         真帆
 う。実感があるなあ。
   (ぜんぶ話すよ今までのこと)
それぞれの宝を持って姫の前         那知
 これは『竹取物語』。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。紙上匿名の方は住所本名も明記。5月1日(木)までにご投かんを。五七五句ですよ!
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
募集『ぜんぶ話すよ』     4/22(火)東京朝刊・4/23(水)中日夕刊
   (いち、にっ、さんしとつづく人生   おはぎ)
ぼけたかなまだ大丈夫と笑う妻     ことぶきん
鯉のぼりノドンに見える夢を見た    伊藤千敏

星一つほしい愚かな星条旗       近藤辰春
 さいごにもう一句。十代から。
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
打ち合いの音が止まった卓球場     浦野修平
 訪れた静寂に、ふと今生きている途上の自分に気づく。年をとっても
蘇る記憶の一コマになりそう。
 投句多数多謝です。さあ、つぎの募集ですよー!
   ぜんぶ話すよ今までのこと     うさぎ
 この七七句に五七五句を付けて下さい。この会話は夫婦かな?恋人?
親子?それとも?自由にご想像を。
   (ぜんぶ話すよ今までのこと)
五人目の彼とはゆうべ別れたの        藍
 発表は5月からですから初夏の句もいいですね。
   (ぜんぶ話すよ今までのこと)
窓開けて退任部長青葉風          さとる
 時事句もぜひ。大笑い句歓迎。付け句には、前句にある(ぜんぶ・話す)など
同じ語を重ねないように。はがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。
紙上匿名の方は住所本名も明記。5月1日(木)までにご投かんを。五七五句ですよ!
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) 
『豹柄の 』     4/15(火)東京朝刊・4/16(水)中日夕刊
   (いち、にっ、さんしとつづく人生   おはぎ)
はしごかけ月へとのばす小さな手 五ツ葉のクローバ
いつのまに小さくなった鉄棒が      加納秀元

 自分の背が伸びてゆくおどろき。
よし鳴った!テスト終了告げる鐘       プー
 人生はテストとしめきりだらけ。レッツゴー。
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
彼女でき自動二輪でぶっとばし     坪井重光
太陽が僕の心を照らすんだ   loveライムスター
 ワオー。かっこつけちゃって。傷だらけなんだよね!  
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
節目には切り捨てられた秘書がいた  安達恒明
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
正社員辞めてのんびりパートです      由花
豹柄のくつした穿いて眠る夜         富子

 なんだか豹柄が楽しい。ひとそれぞれの眠り方で。
 (いち、にっ、さんしとつづく人生)
花盛り女盛りはとうに過ぎ           麻子
 あら、花のあとに降る赤い桜しべもきれいですよ。
後一歩ピンクの杖で八十路まで       留美子 
    (いちにっ、さんしとつづく人生)
さらさらと減りゆく地球の緑たち      バンビ
 人類なるものの主としてなすことーー殺戮と破壊。
     (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『背を流す』     4/8(火)東京朝刊・4/9(水)中日夕刊
  (いち、にっ、さんしとつづく人生     おはぎ)
泣きまくり笑いまくりの十七歳      高津香織
カラフルなペンでつづった日記帳     山口早織
 新学期。パワフル、カラフルな若さに負けそう。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
背を越され体重だけは母の勝ち      三島園子
ねえ友よ娘盛りもあったよね       矢野節世
 あった。みんなあったのよ。ただ過ぎただけです。
大正と昭和平成どっこいしょ       荒井正二
 お疲れさまでした。
老いたるはなお麗しと背を流す      塚本益美
子と孫と玄孫も祝う父卒寿          旦喜
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
ブランコに思い出のせて老後漕ぐ     石井信子
恋せし人指折る指の足りぬごと      松本太一

 あらま。恋の思い出は老いの花となりけり。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
あなたより一日早く死にたいわ        美典
「愛する人とは同い年の六二歳。いちにっさんしと百まで行きたいけれどーー」
と美典さん。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
花の下老いし夫婦の小休止       矢頭美代子
「英知ある筈のこの世に危機去らず」とも矢頭さん。
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)

いち、にっ、さんしとつづく人生   おはぎに付けてみませんか
  (2月25日-)

『やめなさい』     4/1(火)東京朝刊・4/2(水)中日夕刊
   (いち、にっ、さんしとつづく人生   おはぎ)
寄り道も一緒にしよう手をつなぎ      サトミ
アリさんはがんばってるの踏まないで     Pィ
 優しい高校生さんたちですよー。
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)  
更年期ここが我慢のしどころか     ミーニャン
くたびれたちょっとしゃがんでいいですか    順
 親の世代は、ただいま人生登山多事多難です。
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
背を丸め上司の愚痴でコップ酒     福井さき子
パソコンのできる嫌味な部下ばかり      嘉男
 お互い様なのだ。
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
晩学のダンスステップもどかしい       三子
還暦はスローライフにギアチェンジ    山田登志
   (いち、にっ、さんしとつづく人生) 
白い筋スペースシャトル散華せり      佐藤功
 21世紀、見たくない進歩を見てしまっている。  
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
片足を地雷で失くす国の児も         桂丸
戦争をしたがる人よやめなさい      坂巻静江
赤い靴はいたこの子に春の風         幸枝
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
母さんの呼んでる声のする方へ       美比古
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『今までは』     3/25(火)東京朝刊・3/26(水)中日夕刊
  (いち、にっ、さんしとつづく人生     おはぎ)
桜もちだんご筍豆ご飯    もっちゃんふうちゃん
焼き立ての麺麭買う列の春めいて      ひつじ
 ここは極東の島国。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
下萌えて恋のはじまるベンチあり      加藤博
リハビリの声掛けあって木の芽道     村井照代

 ひとりひとりがもっている大事な束の間です。
すりへって足にぴったりスニーカー    青柳善作 
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
知らぬ間に声が出ているドッコイショ   渡邉安代
墓場での朝の体操きょうもまた         桂丸
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
老眼をわずかにもどす目の運動      宮脇正仁
「妻の白内障の手術のあとのケアの大変さを見て、目の運動を始めた」と。   
まだまだと転移たのしむガンのヤツ     池上智
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
母逝きて孫生まれたる浅き春        源内節
今までは無縁で済みし事件事故       増田正
 あすは知れぬぞ。
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
ゆうべより今朝のカレーがまた美味し     仁太
    (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『反戦旗』     3/18(火)東京朝刊・3/19(水)中日夕刊
  (いち、にっ、さんしとつづく人生     おはぎ)
麦ばたけ巣作りまだかピチクルピッ        友        
雲がゆく私もゆくぞどこにだろ        目玉焼き 
 春ですね。若い人たちには未来とゆとりがある。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
気がつけばファンの前で演奏中       YU-KI
 夢がついに実現するとき。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
親が呼ぶ説教までのカウントダウン   井上慎太郎
 おやおや。お互い苦労しあうのが家族。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
更年期めまい肩こり花粉症       神谷小百合
妻病んで悪戦苦闘の主夫になる       加ツ光
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)  
上向いて何度も歌うケセラセラ           直
「幸も不幸も気持次第。百のうち一つでも良いことがあれば、ラッキーと思って」 
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
お隣の目覚まし時計止められず     菅野八重子
 日々できること、できぬこと。自分のこと、他人のこと。自国のこと、他国のこと。もどかしい!
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
反戦旗春の嵐に煽られて             恵子
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授) 
『ごでもなく』     3/11(火)東京朝刊・3/12(水)中日夕刊
  (いち、にっ、さんしとつづく人生      おはぎ)
ランランラン春風待ってるランドセル    のざわな
後輩に譲るロッカー掃除して          三日月
 三日月さんは高二ですって。先輩をそっと見ている。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
新園児抱っこと笑顔でいざ勝負         まるひ
「現在は卒園準備中ですが、四月からはまた宇宙人が大量侵入」―送り出し、受け入れる、先生の春。抱っこの体力、笑顔の精神力がいりますねえ。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
桜もちお茶も飲んだしさあてっと!    木村れいみ
寝不足はお墓の中で取り戻す         勝助利

 そ、そんなにがんばっちゃだめ。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
五里霧中七転八倒まあだまだ          まいく
 霧中に六がはいってるんですよー。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
五分咲の淡き想いをウソが食べ    みの虫アッパ
 桜の蕾を食べてしまう鷽。淡い恋をつぶしてしまったちいさな嘘。凝った句ですねえ。
  (いち、にっ、さんしとつづく人生)
ごでもなくろくでなしとはブッシュなり       耕人
 言ってやった! 戦争はなんとしても回避を。 
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『しめきりですよ』     3/4(火)東京朝刊・3/5(水)中日夕刊
  (いち、にっ、さんしとつづく人生  おはぎ)
白梅が散りクロッカスは黄金色に      れいな
 年度末の春ですね。私のゼミ生たちも、句をさんざん作り、住み慣れた研究室から出ていきます。短期日本語研修の韓国留学生、韓雄煕くんともお別れ。彼はね、芭蕉の「奥の細道」の韓国語訳を読み、感動したのがきっかけでとうとう日本へきたのだそうです。付け句や連句の実作もしました。(もちろん日本語で)
 先日、お別れの連句会にやってきて、「あまた」という言葉を最近知ったといって句を作りました。
 (いち、にっ、さんしとつづく人生)
イルボンの思い出あまた月おぼろ      韓雄煕
 イルボンは韓国語で日本のことです。その晩は十六夜、ほぼまんまるな月が、春のきた雑木林の上にややかすんでかかっていました。「あれがおぼろ月」というのは、その場で皆に教わったのです。「きれいな言葉ですね」こうして日本語のボキャブラリーをまたひとつ増やし、彼は数日後帰国しました。いい人生続けてね!
 付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。紙上匿名の方は住所本名も明記。句数制限なし。三月六日(木)までにご投かんを。五七五句ですよ!
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
募集 『いちにっさんし』     2/25(火)東京朝刊・2/26(水)中日夕刊
  (恋情のただやるせなき雪ぐもり     聖子)
一羽のみ来し白鳥の啼く          渡辺朝
戦地に向い走り去る汽車           獅狼
 まだ世上は雪曇りです。戦争という集団殺戮。いま「お待ちなせえ」
とどめる日本であってくれえ!
 さて発表しきれず残念な佳句多数手元にのこしつつごめんなさい。
つぎの募集ですよー。
 いち、にっ、さんしとつづく人生   おはぎ
 この元気な七七句に五七五句を付けてください。 
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
終了の合図鳴ってる洗濯機         聖子
 なにげない音で気づく日常の一刻です。
   (いち、にっ、さんしとつづく人生)
外科病棟みんなで花見してる窓       晴彦  
 人生、山あり谷あり、恋あり、失敗あり大笑いあり。いろいろ想像して
五七五句を付けてください。時事句もぜひ。発表が四月にかかるので
春らしい句も歓迎。付け句には、前句にある(人・生・つづく)など同じ語を
重ねないよう、最後に点検ご推敲もよろしく。 
 付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。
紙上匿名(ペンネーム)の方は、住所本名も明記。句数制限なし。
3月6日(木)までにご投かんを。五七五句ですよ。
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)