第三十二回国民文化祭なら2017(平成29)年『連句の祭典』

◆第三十二回国民文化祭なら2017(平成29)年『連句の祭典』

入選 
二十韻「点滴の」の巻   捌  間瀬芙美 
   
 点滴の落つる遅さや春の雪   由川慶子
   窓の陽ざしに咲くクロッカス 間瀬芙美
  来客を告ぐる小綬鶏声高く     慶  
   県の境を記す役人        芙
ウ 国盗りに勝つも負くるも旗掲げ   慶  
   葦簀の陰に女匿ふ        芙  
  月までもバイクで逃ぐる麦藁帽   々  
   発電パネル海に向かひて     慶
  羊飼い犬と一緒に仕事終へ     芙
   スケボー残し子らは都会に    慶
ナオリビングの広さ感ずる大晦日    芙 
   信心なくも上手く綯ふ注連    慶 
  在庫品宣伝通りには売れず     芙
   気になるあの娘旧姓のまま    慶
  五線譜の上で月恋ひ踊るらん    芙
   かぼちゃに描きしへのへのもへじ 慶
ナウ会議後にテーブルに出す新走り   芙
   壁の写真は初代頭取       慶 
  小川より大河に向かふ花堤     芙
   ビルの高さに漕ぎしふらここ  執筆
平成二十九年二月二十二日起首三月六日満尾 
     於 藤田保健衛生大学病院ロビー
入選 
二十韻「北窓を」の巻  長坂節子捌

  北窓を閉ぢて客人待ちにけり   長坂節子
   冬の苺の運び来る幸      西田一枝
  チューバ吹く子の横顔の晴れやかに   節
   声の大きい髭の校長         枝
 波が波追ひかけてゐる月の海      節
   触るれば冷やり長い黒髪       節
  さね蔓逢へねばいよよ恋深む   石川 葵
   とうに忘れた君の優しさ       枝
  路地裏をのしのし歩く猫のボス     節
   金蔵ねらひ作る合鍵         葵
ナオ算段は焼酎とにかく干してより     節
   月も涼しと飛ばすドローン      枝
  世渡りは下手で頑固で轆轤蹴る     葵
   膝すり切れしジーパンをはく     枝
  あどけなく白い歯こぼす君が好き    節
   セピアの写真は十七のまま      葵
ナウ文豪の気鬱の虫も治まって       枝
   鳥雲に入る里の山々         枝
  旅の果て夢も現も花の中        葵
   路面電車の揺れのうららか      節
         平成二十八年十二月九日首尾  
         於 みよし市カリヨンハウス
入選
二十韻「初夢や」の巻     捌 宇井 希

  初夢や大当たりした宝くじ     宇井希
   陽を包み込み福寿草咲く    近藤とみ子
 おしゃべりをしつつ編み針動かして森田美耶子
   奥の和室は物置と化し       とみ子
 ため息は月の光に吸い込まれ  松井文子
   出合いは十九秋の夕べに    原田徹夫
  近江の海二人で渡る葦の船      美耶子
   ブラックバスのしたたかに増え   とみ子
  青空へ折鶴はばたく原爆忌      とみ子
   世界平和を握るトランプ       文子
ナオ家事すませ自己満足のプチ家出     希
   マイセンで飲むブルーマウンテン  板倉合
  相乗りのバイクで街を走り抜け   富田八穂
   久々に塗る赤い口紅       塚本益美
  狐火に誘われるように月揺れて     文子
   祖母の作った蕎麦掻の味        希
ナウ検診の結果を待ってクイズ解く     益美
   ぶらんこの下水溜まりあり      徹夫
  城跡の堀を染め行く花吹雪      とみ子
   ハーモニカ吹くうららかな午後     合
平成二十九年一月一九日 起首 同二月一六日満尾   
於 竜神交流館

入選
二十韻 「土筆摘む」の巻   中森美保子 捌
   
  そよ風や童に返り土筆摘む     中森美保子
   耳に囁く水温む川        伊藤  航
  リビングに蝶の写真の飾られて   間瀬 芙美
   新聞の記事スクラップする      保 
 月入りて迎ふ沖縄慰霊の日       航 
   浴衣の似合う君は十八        芙 
  触れた手をぴくりと引いて恥ぢらひぬ  保
   ポケモンGOでポジティブになり    航
  ジオラマの鉄橋渡る電車汽車      芙  
   翁の跡を辿る旅人          保 
ナオ離鴛鴦おひとり様もいいもんだ     航 
   いま神の留守石畳踏む        芙
  街中に異国の言葉飛び交いて      保             
   利酒に酔い奪う唇             航           
  影ふたつ沈むソファーに真夜の月    芙                         
   露けき庭を過ぎる黒猫        保                         
ナウ冠木門年代物であるさうな       芙 
   ここらの蕎麦は喉ごしが良く     航 
  見渡せば花真っ盛り県境        保 
   朝寝の夢に競ふマラソン       芙 
     
  平成二十九年三月十七日起首同四月六日満尾