招待席Ⅱ 歌仙ing「風眩し」の巻 三吟

歌仙ing(文音歌仙実況です。毎回候補5句からどれが治定されるか? お楽しみに)

招待席の第二弾です。驚いてください。なんと東明雅先生(蕉風伊勢派俳諧師。信州大学名誉教授)のご来場です。対するは招待席Ⅰでご存じやまねこ先生。蕉風伊勢派の俳諧を現代に伝える両俳諧師にめぎつねがしごかれる歌仙行ですーーその悠揚とした風格としたたかな遊び心、歌仙の序破急の自在な技、山場、そしてできあがった作品の底に流れる人生のあはれを感じていただければと存じます。いじわる山猫とめぎつねの闘いもあいかわらず、とくに校合時にはめぎつねの白桔梗の句についてひと論争あり(27~30)。最後部38以降校合もお見逃しなく。(そうそうーーこの連句はね、明雅先生の最初のFAXによる文音だそうですよ。コン)

治定作品:歌仙「風眩し」の巻

「歌仙」についてのルールはこちら→ ★歌仙式目 

南柏猫蓑庵
東明雅
北摂やまねこ庵(賀雀庵四世)
片山多迦夫
・・・そして、参州めぎつね
矢崎藍 コン!

■歌仙「春めくや」三吟実況

(FAX文音 2000,2,27起首 3,16満尾)

◆1発句

めぎつね通信to猫蓑庵(2/28)

二月深川例会にてはありがとうございました。このたびは三吟によるご指導をたまわります。どうぞよろしくお願い申し上げます。『猫蓑庵発句集』から、今の季節に合う句をと改めて拝読いたしました。たいへん迷いましたが、   

スニーカー風が眩しくなりにけり       明雅

の御句をいただき、脇句を摂津にお送りしました。
まだ小雪がちらつく寒い春。先生、奥様にはくれぐれもお風邪を召しませぬよう。

◆2脇

めぎつね通信toやまねこ庵(2/28)

先日は電話でのご快諾ありがとうございました。久しぶりにナマイキ狐をしごいてくださりませ。明るい春が恋しくてたまらぬ今日このごろに、明雅先生の次の句をいただくことにしました。

スニーカー風が眩しくなりにけり     明雅
         拙 次                  
幼なが声を放つ梅林            藍         
ミモザたわわに学園の坂       
下ってのぼるかたかごの谷       
雑木林にともすまんさく(金縷梅)   
ホップステップ咲けクロッカス 

「風光る」で、三春でよろしいでしょうか。それで、すべて初春の季語で付けました。スタート、わくわくしながらちょっと自信がありません。いけなかったらお返し下さい。

3(第三)

やまねこ庵通信to猫蓑庵(2/28)

拝啓 久しく御無音の段ご海容ください。先生の御近況は猫蓑通信誌上で承っていましたが、このほど参州の藍さんより三吟応酬のお誘いをいただきましたので、次のように認めました。よろしく御捌きの程、又、忌憚なき御批評を例によって賜りたくお願い申し上げます。日々零下何度という夜が続いています。御自保専一になされたし。

   「    ?   」の巻
1 スニーカー風が眩しくなりにけり          貴詠
2  ミモザたわわに学園の坂              藍
     第三試詠              
しゃぼん玉弾けし顔を拭ふらん              迦
登り窯火入れの式は清明に
料峭の草庵を訪ふ人もなし
何鳥か月日星とぞ囀りて
春惜しむ超新星の映像に

                              以上。

以下書簡作者名等敬語略、黄色枠は初心者をふくむホームページ読者向けの解説です。発句脇第三の形など基本ルールは「歌仙式目」参照 

4(四句目)

猫蓑庵通信toめぎつね(2/29)

   「風眩し」の巻
1 スニーカー風が眩しくなりにけり          明雅
2  ミモザたわわに学園の坂              藍
3 しゃぼん玉弾けし顔を拭ふらん            迦
     拙 次
缶詰開けて猫に餌やる                  雅
水を欲しがる籠の金糸鳥
探しあぐねた耳掻が出て
「飯だ飯だ」と炊飯器呼ぶ
五右衛門風呂は忽ちに沸き

●めぎつねは明雅先生との文音で、かなり緊張していたんですが、この最初にいただいたFAXが、「猫缶」に「飯だ、飯だ」ですものね。どひゃーと尻尾がのびました。
●もちろん「四句目はかるく」ここは典型的な「四句目ぶり」です

◆5(五句目)

めぎつね通信toやまねこ庵(3/1)

2  ミモザたわわに学園の坂            藍
3 しゃぼん玉弾けし顔を拭ふらん          迦
4  缶詰開けて猫に餌やる             雅
        拙 次             
回覧板たのまれてゐる留守の月            藍
小二階に月見の客はあとひとり
月見むと親爺に暖簾しまはせて
十五夜が出たと隣家の声のして
引越の荷のおろされて月の下

よろしくお捌きください。

◆6(六句目)

やまねこ庵通信to猫蓑庵(3/1)

3 しゃぼん玉弾けし顔を拭ふらん           迦  
4  缶詰開けて猫に餌やる              雅
5 月見んと親爺に暖簾しまはせて           藍
     第六試詠        
相撲番付やっと小結                  迦
舳先につるす灯火親しき
なべてもの澄むさいはての町
露地に並びし電照の菊
そぞろに歩く波止の露けさ

以上よろしくお捌きください。今日は久しぶりに寒気和らぎ助かりました。

●表六句● ここまで初折表(オモテ)六句は[序」、連衆の出会いの場です。「穏やかに」「神祇、釈教、恋、無常、述懐、懐旧、妖怪、病体、人名、地名など けやけき話題を出さない」など定式どおりにはじまっています。めぎつねもおとなしくかしこまり。しかし山猫句には早くも第三に「月、日、星」「超新星ーーという天体」が出てますね。もしこれをとると、5句めの月の座に月が出せません(天象ウチコシ)から、月の位置を後へ動かす(こぼす)ことになるんですよ。
●底にはそんな思惑もふくみつつ、あくまでも穏やかに穏やかに挨拶をかわしての六句でした。
●さてここからは初折裏(ウラ)。破一段です。表6句の禁はここからなくなり、「羽織を脱いでくつろいで」です。表六句で正座してきたので、この解放感がうれしいんですよ。

◆7(初折ウラ1句目)

猫蓑庵通信toめぎつね(3/1)

4  缶詰開けて猫に餌やる              雅
5 月見んと親爺に暖簾しまはせて           藍
6  露地に並びし電照の菊              迦
     拙 次          
べったら市押すな押すなの人通り            雅
秋場所は両国橋のももんじ屋
ちらほらと目くされ市の人通り
新蕎麦は神田の藪に限るなり
遠く来て秋田の宿りきりたんぽ

以上よろしくお捌きください

●先達の胸をお借りする幸せは、「付けたくてたまらない前句」に恵まれることです。例えばこのべったら市の句も付け句の想像の余地が実に広いのです。もう恋句を付けられます。おいしいご馳走の皿をかかえ、どこから食べようと、わくわくしながらうろつきまわってしまうめぎつねでありました。

◆8(ウラ2句目)

めぎつね通信toやまねこ庵(3/2)

5 月見んと親爺に暖簾しまはせて       藍
6  露地に並びし電照の菊          迦
ウ1べったら市押すな押すなの人通り      雅
     拙 次                     
ぼくらのキスを誰も見てない          藍
君を奪ってやると囁き
ハートを掏った女泥棒
ごめんの言へぬ肩のいかつく
失ひさうな運命の糸

◆9(ウラ3句目)

やまねこ庵通信to猫蓑庵(3/2)

6  露地に並びし電照の菊           迦
1 べったら市押すな押すなの人通り       雅
2  ハートを掏った女泥棒           藍
    拙 次         
裾さばき黒いタイツがちらちらと         迦
オードリー・ヘプバーンこそはわが命
金庫には名づけてミラノ・コレクション
あたふたとボードビリアン駆けてゆき
無口なるピエロ悲しき過去を持つ

●恋を受けてドラマが華やかに始まっています。ウラの恋は歌仙の流れの中でやってくる、最初の小さな山です。

◆10(ウラ4句目)

猫蓑庵通信toめぎつね(3/3)

   べったら市ノ次
1 べったら市押すな押すなの人通り       雅
2   ハートを掏った女泥棒          藍
3 裾さばき黒いタイツがちらちらと       迦
    拙 次      
醒めて悲しき老酒の酔              雅
貴州茅台酒が喉灼く
脚下照顧と廊の張紙
夢の一字が床の懸軸
壁にうなだれ磔刑の耶蘇

以上よろしくお捌きください


*猫蓑庵fax  本邦初公開!

●かるい、たのしい恋が、やがてしみじみと人生の曲折をかいま見せることになる。しょせんそれを繰り返して人は生きる。ーー毎回前句5句の付け味をそれぞれ吟味して選ぶ時間は、そんなことに思いを馳せる時間でもあります。

◆11(ウラ5句目)

めぎつね通信toやまねこ庵(3/4)

2  ハートを掏った女泥棒         藍
3 裾さばき黒いタイツがちらちらと     迦
4  醒めて悲しき老酒の酔         雅
   拙 次          
唐三彩馬は砂丘をたどりつつ         藍
運河ゆく舟に蘇州のうたをきき
兵俑と馬俑列せし二千年  
松籟に御栄転てふ美辞麗句
局長の接待麻雀あばかれて

明雅先生の老酒にふっと誘われて付けましたけれど、「夢の一字」が凄くって、「脚下照顧」のひねりにも心をのこしています。よろしくお捌き下さいますよう。

●この晩やまねこ庵よりめぎつねへ電話あり。兵俑と馬俑ーーつまり始皇帝陵の句がとりたいが、「兵馬俑」としないかと。めぎつねは以前発掘中の始皇帝陵で大量の兵俑と馬俑の列を見たのです。しかし兵俑と馬俑という言葉自体は一般的でないかもしれません。一直了解ということになりました。ところで「脚下照顧」は禅だそうな。これをとると付け句候補5句のうち3句は釈教で付けるべきとか。ううう。危いとこであった。ーーめぎつねは釈教はにがてです

◆12(ウラ6句目)

やまねこ庵通信to猫蓑庵(3/4)

3 裾さばき黒いタイツがちらちらと    迦
4  醒めて悲しき老酒の酔        雅
5 兵馬俑土に埋もれし二千年       藍            
    拙 次      
大きな嚏まるで神鳴            迦
一閃せしは寒の翡翠
白誇りかにゆりかもめ飛ぶ
顱頂にひびく杜鵑一声
冥途の鳥は血を吐くといふ

以上よろしく御批正ください。夜分遅々失礼。

◆13(ウラ7句目)

猫蓑庵通信toめぎつね(3/5)

4  醒めて悲しき老酒の酔       雅
5 兵馬俑土に埋もれし二千年      藍
6  大きな嚏まるで神鳴        迦
      拙 次                    
極北の寒満月に息を呑み         雅
石焼藷売りて世渡る月のもと
寒月光第九の曲の盛りあがり
寒泳の終りて帰る月のころ
ぐらぐらと狸汁煮る寒月下

以上よろしくお捌き下さい。

●老の字のある老酒は醒めて悲しい述懐で、ついに土に埋もれる二千年の時まで流れるのですが、やっほほほ、そこを大きな嚔でふっとばしちゃった!ーこういう転じは実に豪快ですねえ。

◆14(ウラ8句目)

めぎつね通信toやまねこ庵(3/5)

5 兵馬俑土に埋もれし二千年       藍
6  大きな嚏まるで神鳴         迦
7 寒泳の終りて帰る月のころ       雅
   拙 次                    
コンビニの灯のともる山裾         藍
仏蘭西料理おごるグランマ
とぢこもってる長男の窓
準急電車がらがらで行く
郵便局の白いカーテン

どうぞよろしく。

やまねこtoめぎつね(3/5)

★おごるグランマ→つくるグラ・マ

めぎつねtoやまねこ(3/5)

★わお。寒泳を見た帰り、お腹ぺこぺこで「おごり」たいんですけど。ダメですか?

やまねこtoめぎつね(3/5)

仏蘭西料理つくるグラン・マと改めるわけは、
①「おごる」と言われても、おごるに三義あり。奢る、傲る、驕るです。どの意味にとっていいかわからない。
②前句の月のころのニュアンスを玩味したら、素直に料理を作って待つグラン・マと付けるべし。    以上。

めぎつねtoやまねこ(3/6)

★ははあ、ばあさまじゃなくグラン・マっていうと情緒ゆたかな「月のころ」に「誰が支払う」などとはいわないかもしれませんね。ううう。育ちが出ましてあいすみません。コン。 

●グランマなんてつかいつけぬ言葉を使ったのが運のつきです。(ほんとは5句のうち、私の場合いつも自分の本命は2-3句、いや、1句のこともあります。そのほかの句に手をぬくと、思いがけない句をとられ、こうやってさしこまれちゃいます。用心用心)

◆15(ウラ9句目)

やまねこ庵通信to猫蓑庵(3/6)

6  大きな嚏まるで神鳴         迦
7 寒泳の終りて帰る月のころ       雅
8  仏蘭西料理つくるグラン・マ     藍
     試 詠        
エスプリは落語の下げと違ふなり      迦
古き良き時代の粋がなつかしく
白樺を愛読したることも夢
白樺の創刊号を秘蔵され
建て増しのロッジは木の香新しく

お捌きよろしく                     以上

16(ウラ10句目)

猫蓑庵通信toめぎつね(3/6)

7 寒泳の終りて帰る月のころ        雅
8   仏蘭西料理つくるグラン・マ     藍
9 建て増しのロッジは木の香新しく     迦
      拙 次           
お玉杓子もいつか尾が取れ          
琴弾鳥の晴れを呼ぶ歌
春の外套淡き空色
窓をあければ笑ふ山々
早寝早起頭寒足熱

以上よろしくお捌き下さい

●流れは冬の月の暗さからぬけでて、あかるくさわやかな風が吹いてきています。ロッジもそろそろ春ですねえ!

◆17(ウラ11句目)

めぎつね通信toやまねこ庵(3/7)

8  仏蘭西料理つくるグラン・マ     藍
9 建て増しのロッジは木の香新しく    迦
10  琴弾鳥の晴れを呼ぶ歌        雅
      拙 次                    
嬰児は揺れる花房見てゐるか        藍
祝婚の花びら永遠に降るごとし
われもまた歩き遍路ぞ花の道
嵯峨野ゆく花ははるかにふり返り
花婿の育児宣言花笑ふ

よろしくお捌きください。

◆18(ウラ12句目)

やまねこ庵通信to猫蓑庵(3/7)

9 建て増しのロッジは木の香新しく       迦
10  琴弾鳥の晴れを呼ぶ歌           雅
11 祝婚の花びら永遠に降るごとし        藍
       拙 次      
復活祭へ急ぐ農婦ら               迦
あにいもととも女夫雛とも
谷から山へ苗木植ゑゆく
干潟にあそぶ園児百人
一幕ものの春興の夢

● 歌仙の半分がきました。●真新しいロッジから琴弾鳥が晴れを呼ぶ高らかな歌声。どんどん盛り上がってきた波の高まりに、花の句を詠むのはとても気分がいいんです。「花の座だから詠む」という義務ではなく、花をこうして自然に詠める楽しさ。(ああ、ふだんの連句でも、そういうふうに捌かなくちゃーーつくづく思います)●そんなわくわくも胸にして、いよいよ名残の折表(ナオ)破二段にはいります。おもしろさの限りを尽くします。あばれどころともいいます。全開で行くぞ!
●付け順が代わり、文音は逆回りになります。ーーー漁り場(あさりば)

◆19(ナオ1句目)

ねこみの庵通信toやまねこ庵(3/9)

10  琴弾鳥の晴れを呼ぶ歌        雅
11 祝婚の花びら永遠に降るごとし     藍
12  あにいもととも女夫雛とも      迦
     拙 次   
安達太良の山麓なる隠れ里         雅
隊商は落日追ひて絹の道
ベネチアングラスに注ぐロゼワイン
幾年かエデンの東さまよひて
樓蘭の砂の都に眠る人

以上よろしくお捌き下さい。
藍さんの花の句は恋句とみて、掲上の貴句を頂戴致しました。

●ウラでは一度恋をしましたがあれはコケティッシュな恋。ここは満ち足りた恋です。葛藤なくかろやかに見せてつぎのドラマへ。

◆20(ナオ2句目)

やまねこ庵通信toめぎつね(3/9)

11 祝婚の花びら永遠に降るごとし      藍
12  あにいもととも女夫雛とも       迦
ナオ1 隊商は落日追ひて絹の道         雅
     試  詠   
真紅のワイン翳す乾杯            迦
ロゼのワインは十樽もある
捕虫瓶には蠍三匹
確かに丸き水の惑星
砂塵に堪ゆる六字名号

以上

◆21(ナオ3句目)

めぎつね通信toねこみの庵(3/9)

12  あにいもととも女夫雛とも      迦
ナオ1 隊商は落日追ひて絹の道        雅
2  確かに丸き水の惑星         迦
    拙 次         
ふと消えしインターネットの交信者     藍
キー叩く無辺の自由わがものに
朱鷺一羽フェンスに首をさしのべて
揺り篭とブランドバッグと銃声と
クリオネてふ幽けき天使囚はれて
ご不要の肺を少うし下さいな
小ざかなの大群右へゆき左

よろしくお捌き下さりませ。

●きたぞ、きたぞ。まさにあばれどころ。砂漠の落日からでかい世界がひろがってきました。水の惑星とはもちろん青い地球。人類の今をつきつけてくる前句。この転じに、いま、小さな私たちの存在を考えようと、つい7句も駄句を並べてしまいました。

◆22(ナオ4句目)

ねこみの庵通信toやまねこ庵(3/10)

ナオ1 隊商は落日追ひて絹の道         雅
2  確かに丸き水の惑星          迦
3 キー叩く無辺の自由わがものに      藍
   拙 次    
生涯の友芭蕉西鶴              雅
食ふ寝る遊ぶ罔両(かげぼし)を友
頭痛肩凝り魔女の一撃(魔女の一撃―――ぎっくり腰のこと)
神の諫めか頭痛肩凝り
悠々自適すごす仮の世

以上よろしくお捌き下さい。

●「キー叩く」をとられて「やった!」とうれしいめぎつね。(ところが御両師はさるものひっかくものなのだなあ)

◆23(ナオ5句目)

やまねこ庵通信toめぎつね(3/10)

2  確かに丸き水の惑星        迦
3 キー叩く無辺の自由わがものに    藍
4  頭痛肩凝り魔女の一撃       雅
   拙 次               
老僧の一喝喰うて侍者涼し         迦
震災後五年の月日重かりし
寝ねがての噴水の秀に躍る月
月の汗原爆の碑にしたたるか
八月の補修講座は方丈記

以上。これより先の佳什の数々期待に胸ときめき居申候

●キー叩くは地球をかきまわすハッカーであったのに、魔女の一撃とは! どうも今度は日々キーを叩くめぎつねが「ご苦労さんね」とからかわれたらしい。ほんと、パソコンのせいで頭痛肩凝りです。
●そして、23やまねこfax「以上」のあとの一行の付け加え。これは「おい、めぎつね、佳い句ださないとしょーちしねーぞ」と読み替えます。しかしねえ、きれいな噴水の月。月の汗ーーー、魅力的な夏の月が並んでるのにびっくり。こりゃあ、なんだ。なんだ?


*山猫faxの署名はいつもちと獰猛!

◆24(ナオ6句目)

めぎつね通信toねこみの庵(3/11)

3 キー叩く無辺の自由わがものに    藍
4  頭痛肩凝り魔女の一撃       雅
5 老僧の一喝喰うて侍者涼し      迦
   拙 次      
紫蘇を漬けこむ梅干しの壺         藍
緋鯉ゆらりと浮上する沼
越前海岸くらげ名物
植田を西へ過ぎるスコール
竹林の雨夢の滴り

よろしくお捌き下さいませ。
それにしても山猫原野には地雷があちこち仕掛けてあるような― 夏の月を踏んだらどうなるのでしょう...。


*めぎつねfaxは しっぽマーク

やまねこtoめぎつね(3/11)

★やまねこの仕掛けを怖わ怖わと避けて通るので、ちっとも面白くない!

めぎつねtoやまねこ(3/12)

★怖がってなんかいないですよー。コン! 落日があって水の惑星がありますし、月はとらずに老僧に行ったんです。あ? 山猫が月夜に地雷を埋めてるらしいって、噂ですけど。

●夏の月の解説●
もしここに月をひきあげるとどうなるか。このあとナオはもう月が出せません。ということはナオで秋が出せなくなります。(秋の句つづきの中で月を出さないのは素秋(すあき)といって式目違反)歌仙全体ではもう1回は秋がしたいので、後半の季節バランスが難航します。
●なんでやまねこは地雷をしかけたかって、そりゃ、嵐の難航がお好みだし( 招待席Ⅰ参照)、そしてここできつねがもし踏んだら「地雷が見えなかったのかね!呵々々」ーーーなんでしょ。フン。そりゃないぜ。

◆25(ナオ7句目)

ねこみの庵通信toやまねこ庵(3/12)

4  頭痛肩凝り魔女の一撃           雅
5 老僧の一喝喰うて侍者涼し          迦
6  越前海岸くらげ名物            藍
   拙 次               
様々に浮世の恋をしつくして            雅    
潮騒の胸にとどろく午下がり       

なかなかに別れ話の切り出せず
藻汐焼く中に恋文投げ入れて
ドサ廻り女座長に化かされて

以上、よろしくお捌き下さい。

◆26(ナオ8句目)

やまねこ通信toめぎつね(3/12)

5 老僧の一喝喰うて侍者涼し      迦
6  越前海岸くらげ名物        藍
7 潮騒の胸にとどろく午下がり     雅
   試 詠         
男一匹嫉妬などせず            迦
打顫へつつ鳴らぬ「ケイタイ」
大事な刻にシャンソンなんど
同期の名簿戦死半ばす
不吉なりしか零戦のゼロ

以上よろしくお捌きください。

めぎつねtoやまねこ(3/12)

★潮騒のとどろきに「男一匹嫉妬などせず」がどうしてもいただきたいのですが、「老僧の一喝」「魔女の一撃」の一があるので思い乱れております。
やまねこなまねこ様まゐる

やまねこtoめぎつね(3/12)

★男いっぴき嫉妬などせず
としておいてください。
藍さま参る

●男一匹の嫉妬。私しゃ気に入っちゃってモー。「せず」といばってるかわいらしさは、ほんとにどこかの山のーーー?

やまねこtoめぎつね(3/12)

★私の付け句で思い悩まれては困るので次の如く一直します。よろしく。

名オ4 老僧に大喝喰うて侍者涼し     迦

遅い昼食を食べ、些か酒をたしなみて帰庵。なんだか酔っています。

春一番衝動買ひの書を抱へ。        迦

◆27(ナオ9句目)

めぎつね通信to猫蓑庵(3/13)

6  越前海岸くらげ名物         藍
7 潮騒の胸にとどろく午下がり
      雅
8  男いっぴき嫉妬などせず       迦
   拙 次     
抱きしめて背徳の香の匂ひたつ        藍      
家を出るノラなりガスの火を止めて
誰をのせ赤いシビック発進し
「あなただけ」言うてピーマン割ってゐる
紅芙蓉キスもじょうずになりまして
死にたいと電話してゐる白桔梗

もうちょっとでしょうか。いけませんでしたら再考いたしますのでどうぞお返し下さい。

●気に入り恋句をかかえたのはいいけれど、今度はそれだけにプレッシャーになりました。この歌仙ナオのもっとも大事な恋句です男の恋句に女の恋句で応じたい。まず3句を雑の句でつくったのですが、華やかさが足りないので、季語の助けを借りようと考えました。そろそろ秋になってもいいころです。

◆28(ナオ10句目)

猫蓑庵通信toやまねこ庵(3/13)

7 潮騒の胸にとどろく午下がり       雅
8  男いっぴき嫉妬などせず        迦
9 死にたいと電話してゐる白桔梗      藍
   拙 次        
銭が欲しいと螻蛄が鳴くなり          雅
勝手にしろと屁こき虫行く
案山子も今はリストラの世か
人の世の秋夢の浮橋
雌蟷螂が雄をがりがり

以上よろしくお捌き下さい。

●よかった。白桔梗とっていただけた。ホッ。(でもこのとき摂州に大風が吹き、山猫は不機嫌なのであった)

やまねこtoめぎつね(3/13)

★27の貴句、雑の句はよし。秋の句白桔梗、ピーマン、紅芙蓉の季感に問題ありと考えます。

めぎつねtoやまねこ(3/13)

★ーーーちょっと考えさせてください。

◆29(ナオ11句目)

やまねこ庵通信toめぎつね(3/13)

8  男いっぴき嫉妬などせず       迦
9 死にたいと電話してゐる白桔梗     藍
10  人の世の秋夢の浮橋         雅
   付5句                
今日の月長明が見し吾(あ)も仰ぎ     迦       
蛾眉眺め在五中将思へらく
平成の風羅坊にも月澄めり
夜々の月せめて澄めかし世紀末
雲走り今宵の玉兎奔放に
                         
月の座をこぼして、名残の花の座で結んではと、例によっていたずらごころをおこしていましたが、前々句に秋季を出されたので、上記の如き付句と相成りました。よろしく。

◆30(ナオ12句目)

めぎつね通信to猫蓑庵(3/14)

9 死にたいと電話してゐる白桔梗        藍
10  人の世の秋夢の浮橋            雅
11 雲走り今宵の玉兎奔放に           迦
   拙 次              
ビルの頂上(orてっぺん)シャベルカー居る   藍
滑り落ちてくパチンコの玉
田んぼの中に灯す自販機
上野の山の象の咆哮
島にあふるる民は一億

ああ!人生に、秋のゆめのうきはしがあったのですねぇ。雲は走り玉兎は跳ね、ゴージャスな俳諧のゆめにひたり、ぼうっとしているめぎつねです。ふぅ。

● この歌仙の山場です

 男いっぴき嫉妬などせず         迦
死にたいと電話してゐる白桔梗       藍
 人の世の秋夢の浮橋           雅
雲走り今宵の玉兎奔放に          迦

男いっぴきから白桔梗の女句に、つぎの2句がFAXで送られたときは、最初ぼうっとどころででなくぞくっとしました。

夢の浮橋といえば、『源氏物語』の最後の巻名であり、薫との恋に身を投げた浮舟の女のことが浮かびます。そして、それをふまえた藤原定家の「春の夜の夢の浮橋とだえして峰にわかるる横雲の空」なんですよねえ。これを秋にひきこんだ手法は、水無瀬三吟の冒頭をも思い出させます。ええ、時はすぎ秋になっても、その夢の浮橋は、とだえとだえつ、やはり「死にたい」とつぶやく女のなかにただよっているのですよ。かくてつぎは月の座、定家の幽玄を意識して、しかし白桔梗の弱々しさから転じて、雲に激しい動きを見せました。月の異名、玉兎がこれだけ生きている句はそうないでしょう。

こういう連句の旅に背伸びしながらも加わっている幸せがあるのです。やはり連句をやってきてよかった。そしてもちろんこの歌仙の旅はここに最高潮をきわめたのです。始まる前はどんな句に出会うか見当も付かぬのが連句です。でもここに至って、ああ、この付け合いに出会うためにここまできた旅だったんだーーとわかるんです。

◆31(ナウ1句目)

猫蓑庵通信toやまねこ庵(3/14)

10  人の世の秋夢の浮橋           雅
11 雲走り今宵の玉兎奔放に          迦
12  ビルの頂上シャベルカー居る       藍
   拙 次               
オリンピック景気に市(まち)は湧きかへり    雅
シドニーで旅の土産を買ひ漁り
漸くに地震のストレス薄れつつ
争ひて仕上げを急ぐ競技場
石流れ木の葉は沈む御代に住み

以上よろしくお捌き下さい。

●楽しさの限りを尽くし,ほっと一息。これからの名残の折裏(ナウ)6句は「急」「すばやく舞納める」です。旅が終わりに近づく哀惜をいだきながら、さらさらと流れるのみ。

◆32(ナウ2句目)

やまねこ庵通信toめぎつね(3/14)

11 雲走り今宵の玉兎奔放に             迦
12  ビルの頂上シャベルカー居る          藍
ナウ1 オリンピック景気に市(まち)は湧きかへり    雅
   試 詠
煙草濛々怒号喊声                   迦
ちんどんやにもすこし陽が差す
南と北で気候逆しま
遺伝子実験すすむ不気味さ
評論家みな傍目八目

以上よろしく。

◆33(ナウ3句目)

めぎつね通信to猫蓑庵(3/14)

12  ビルの頂上シャベルカー居る         藍
1 オリンピック景気に市(まち)は湧きかへり   雅
2  遺伝子実験すすむ不気味さ          迦
   拙 次   
納豆は小粒におかかときざみ葱           藍
小糠雨園児迎への母の傘
やみさうにない雨見てる珈琲店
牧羊神遠く吹いてる葦の笛
地震ひとつ昼の紅茶の手をとめて

よろしくお捌き下さいますよう。

◆34(ナウ4句目)

猫蓑庵通信toやまねこ庵(3/15)

1 オリンピック景気に市(まち)は湧きかへり   雅
2  遺伝子実験すすむ不気味さ          迦
3 納豆は小粒におかかときざみ葱         藍
   拙 次
日本贔屓の青い瞳の客                雅
お巡りさんも忙しの項
校長先生早寝早起
ゴルフ仲間は元の戦友
やっと実現弥次喜多の旅

以上よろしくお捌き下さい。

◆35(ナウ5句目)

やまねこ庵通信toめぎつね(3/15)

2  遺伝子実験すすむ不気味さ        迦
3 納豆は小粒におかかときざみ葱       藍
4  やっと実現弥次喜多の旅         雅
   試 詠  
花の雲地図の日本は何故赤き           迦
大津絵の鬼が爪弾く花の下
散る花にパントマイムの顔白く
隠れん坊枝垂るる花の中がよし
薪能蒼穹の花散りかかり

以上よろしく願います。。

税の確定申告本日駆込みにて投函して、つくづく思い知ったのはごっそり財布が軽くなったのもさることながら、配偶者の死がこれほど重税になるということでした。阿呵々。

◆36(ナウ6句目)

めぎつね通信to猫蓑庵(3/16)

3 納豆は小粒におかかときざみ葱    藍
4  やっと実現弥次喜多の旅      雅
5 大津絵の鬼が爪弾く花の下      迦
   拙 次                     
豊葦原を亀の鳴く声           藍
徳利ころがし春のうたた寝
牛蛙鳴く土堤の夕暮
蝶ひらひらと越ゆる神垣
しだいに遠し芹を摘む影

なんとかここまでまいりました。よろしくご指導をたまわりますよう。

◆37(ナウ6句目)

猫蓑庵通信toやまねこ庵&めぎつね(3/16)

4  やっと実現弥次喜多の旅          雅
5 大津絵の鬼が爪弾く花の下          迦
6  牛蛙鳴く土手の夕暮            藍

藍さんから戴いた五句のうち、上記のものを挙句として頂戴致しました。
一巻満尾おめでとう存じます。

◆38

やまねこ庵通信toめぎつね(3/16)

山猫庵主敬白、三吟歌仙風眩しの巻、2/28起首、3/16満尾の段、まずは御同慶の至りに存じます。明3/17は誕生日なので(何度目かは忘れましたが)何よりの祝福でした。  以上

◆39(校合・下段)

猫蓑庵通信toやまねこ庵&めぎつね

「風眩し」の巻について。

一直 ナウ4  原句 やっと実現弥次喜多の旅
        一直 やっと叶った弥次喜多の旅
         (打越に遺伝子実験があるため)

初めて体験したFAXの文音、手紙や葉書によるものよりずっと迫力があって楽しかったです。
ありがとう存じました。
この一巻の付合のおもしろさ(付味)を、インターネットの読者が理解して下さればうれしく存じます。
    三月十七日   猫蓑庵    東明雅 

◆40

やまねこ庵通信to猫蓑庵&めぎつね(3/17)

只今明雅先生よりの清記校合稿を拝見、有難うございました。いつもながら猫蓑庵先生との文音作品には改訂箇所が少いのにおどろきます。丁度、彼岸入りと重なったわが誕生日への何よりの贈りものとなりました。
貴一直の名残裏四句目上七の改訂、諒解いたしました。こまかいことを言うひとが時々あるので、あらかじめ申しあげておきますが、老酒から遥か遠くに老師、一撃の三句去りにいっぴきがあり、共に拙句です。只一句、改めてほしい名残表九句目の白桔梗については既に藍さんに指摘していますから、いずれ改訂されるでしょう。発句と第三以外は二章体の表現は避けるべきだと考えています。
まずは以上御礼旁々。    敬具

◆41

めぎつね通信to猫蓑庵&やまねこ庵(3/17)

白桔梗の拙句につきまして、やまねこ先生よりピーマンの句とともに季感がないという御意見をいただき、ずっと考えておりました。私としては二章体というよりむしろ、白桔梗のような女性(門のわきにふっと咲いている、昭和の時代を男の人のかげで生き、楚々として美しく、しかしいまの時代にふっと愚痴もいうような)という表現のつもりでしたが。(決していいかげんに放りこんだ花ではありません。)もちろんそうしじゅうやってよいこととは思っておりません。「男いっぴき」の張りのある句と、「秋の夢のうきはし」にうけとめられてようやく生かしていただいた句と存じます。☆ ピーマンの句の季感のなさ(新しさを狙ったのですが、ピーマンは季寄せでは秋でも、秋らしくなどない)は、仰せのとおり、失敗作です。軽率な句をお送りして反省しております。

◆42

猫蓑庵通信toやまねこ庵&めぎつね(3/17)

ナオ9  死にたいと電話している白桔梗

に対して、私が

ナオ10 人の世の秋夢の浮橋

と付けたのは白桔梗を源氏名(もちろん遊里での名ではなく、女性のニックネーム)と見て、平安時代もミレニアムの現代も、ともかく女性は悩みが多いものだなという解釈からでした。だから、この時は私はこの句を二章体とは考えていなかったわけです。言われてみれば二章体とも取れない事はありませんが、白桔梗を女性のニックネームとする方がおもしろいではありませんか。私の知人の俳句に「歌膝の男は好けれ白桔梗」(さとる)と言う俳句があり、これははっきり二章体で季感もありますが、連句では、季感についてはすこし位大目にみてもよいのではないでしょうか。(たとえば"有明の主水に酒屋つくらせて")

◆43

やまねこ庵通信to猫蓑庵&めぎつね(3/18)

続・名オ9句目について

死にたいと電話している白桔梗          藍

この白桔梗が人名と解し得るとは思いも寄りませんでしたが、指摘されてみると、ひとつの解釈として成立しますね。そう言えば――今も憶えている歌仙の一節に(うどんげ名オ)  

6  瞳に沁むばかり青き六月        迦
7 身を投げてすき透る魚になりましょう   藍
8  浮名もゆかし夕霧といふ        迦
9 臥待の語り尽せぬ艶話          藍
10  濁酒を呷りし闇市のころ        迦

という件りがあって、ああ私も若々しい頃があったのだとなつかしむ次第ですが、冗談は措いて、この9句目はその曖昧さに依って次の「夢の浮橋」という佳什を引張り出したのだから、怪我の功名と言えるでしょうか!

◆44

めぎつね通信to猫蓑庵&やまねこ庵(3/18)

白桔梗の句、生き残れましたようで、ほっとしております。明雅先生の「昔も今も」女性とは悩みが多いものだな」というご感想めいた解釈にほのぼのとしております。(めぎつねも女性なり)そのあたたかさが人の世の秋夢の浮橋なのですね。あはれではなやかで...やがて玉兎もはねだしー。それにしても「浮名もゆかし夕露といふ」をただちに証句にして反撃すべきでありましたのに、めぎつねの爪もなまったか! 黄水仙が咲き出しきょうはあたたかな春。一巻成就のうま酒に酔いましてそろ。まことにありがとうございました。コン。

治定作品:歌仙「風眩し」の巻