かきまわしてる珈琲の渦 健 (2012/1/12~3/1)

前句   かきまわしてる珈琲の渦    健

「募集 」中日新聞3月1日(木)      募集
 (かきまわしてる珈琲の渦     健)
みえをはり彼女の前ではノンシュガー 関戸雪乃
ぱらぱらと片手でめくる求人票   新素材の紙
 高校の教室から33人元気に飛び入り付け句。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
待っている母の小言が終わるのを   すみれ
仲直りするきっかけが見つからず   ハッピー
 (かきまわしてる珈琲の渦)
限りある命愛しい春の宵        浅やん
世のあちこちでそれぞれの珈琲。いかがでしたか。まだご紹介したい句を手元に残しつつ、ここで発表うちどめ。次の宿題前句です。
  さまざまの事おもひ出す桜かな  芭蕉
この発句に七七句を付けてください。
 (さまざまの事おもひ出す桜かな)
黙ったままの制服の肩         あづさ
もちろん付け句は経験でも想像でもオーケーです。三百年前のなつかしい芭蕉さんの句に心を通わせて、さて見えるいまの物語。
 (さまざまの事おもひ出す桜かな)
たらればかものつもる夕暮れ     タヌ公
時事句、お笑い句も。季語集をめくり春の季語も使ってみて。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所、電話番号、ペンネームの方は本名も必ず。三月十日(土)までにご投函を。七七句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「ただの人 」中日新聞2月23日(木)      発表5
 (かきまわしてる珈琲の渦     健)
庭の隅淡くいとしい蕗の薹      近藤スズ
ぽとぽとと軒から落ちる雨の詩      瓜也
 冷たい雨がやがて柔らかな雨になる。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
好きだったよ別れたいまはただの人   ケーキ
 世界中でたったひとり特別の人だったのに。千年前の清少納言も、心変わりしたひとはまるで「ことひと」―別人のようだと書いてましたっけ。
情熱は思い出の中だけにあり       こお
 (かきまわしてる珈琲の渦)
子の入試待って知らない冬の街    ママタン
 「娘について上京してホテル泊。試験当日、私は時間つぶしで新宿で迷子になるところ」
合格のあとが大変細いスネ      伊藤紘美
 (かきまわしてる珈琲の渦)
年越してボランティアまで数がへり かぐやひめ
 仙台から。「まだ大変な所だらけなのに」
四畳半仮設のこたつの客となり    ハクテン
 「被災したマンションの三階に残った箪笥を仮設住宅に運んだあと、ボランティア八人ひしめいてお茶タイム」名古屋から続けての参加とか。ボランティアは、今こそ人間関係をつなぐという大切な段階にきていると。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
春を見るネールアートはさくらいろ 嶺澤由美子
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「女子会 」中日新聞2月16日(木)      発表4
 (かきまわしてる珈琲の渦     健)
もちの実が食べ頃だよとヒヨを待つ  鈴木滋子
「つがいで来て二日程で赤い実をきれいに食べてしまいます。でも、それが済むと春です」
冬木立今年メジロがまだ来ない      泰枝
小鳥たちおいで! 春もおいで!
 (かきまわしてる珈琲の渦)
左手の指輪がない訳聞きたくて    くゆたん
 個人情報をぜひ。うずうず。
おぼれてもいいのかしらねこの恋は    佳代
 ふふ。しーらない。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
隣席は恋話咲いて春間近         更紗
 コイバナシと言わずに、略してコイバナ。なかなかおシャレ。
女子会の臭いにむせる隣席で     あんでん
 「周りのお客さんゴメンナサーイ」男をいれない宴会の迫力! 匂いじゃなく臭いなんです。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
また訃報今年の寒さ身にしみる   アッチャン
さて、悲しみに耐えることも生きること。
良性の発作性頭位めまい症         暁
 「耳鼻科の診断」色んな病名ともつきあって。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
温度差を感じながらも真珠婚     おっかあ
 三十年。
この人とずっと過ごしてきたんだな   ちひろ
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「シャンデリア 」中日新聞2月9日(木)      発表3
 (かきまわしてる珈琲の渦  健)
渋滞を逃れて雪のドライブイン      獅狼
 寒さもいよいよピークですね。
二重窓外は氷柱のシャンデリア    近藤富子
 厳しい自然には輝きもある! さあもう一息。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
二年ぶり大人になった元カレと     浅井恵
「少年っぽい彼がずっと好きだったのに」と。少年は変身するんですよね。少女もだけど。
ケータイで絵文字連ねて恋が来た    たんき
 ハッピー! 舞い上がって転ばないように。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
孫帰り腰の痛みになごりあり    粥川智恵子
 可愛かったよ、どっこいしょ!
帰省しただけの輩が寄生中       みゆき
 仕事が―ない。高齢化社会で将来働く人が足りないというのに、今の若者たちに仕事がない!
 (かきまわしてる珈琲の渦)
円高とユーロ安値で値下げだと    武田礼子
低価格低賃金と負の連鎖     みの虫アッパ
 ううむ。
こうしてていいのか明日の国家像  じゅびろ君
増税に承知しました言いにくい     やすを
 流されないで。いま本気で考えないと。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
積もる雪はねて竹林また静か      眠り猫
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「風花の 」中日新聞2月2日(木)      発表2
 (かきまわしてる珈琲の渦  健)
風花の舞うこんな日はチーズパイ    ひろみ
くしゃみする猫の背中の波模様    ロッシー
 おお、寒! 
 (かきまわしてる珈琲の渦)
武闘派の彼はカフェオレ私ブラック   いさこ
「コワモテの彼が砂糖を山ほどいれ、レースやフリルの好きな私が
ブラックでお互いびっくり。彼とは残念ながら別れてしまいましたが」
 (かきまわしてる珈琲の渦)
レモンイエロー紬の帯も艶やかに   藤村力田
目を伏せて燃える心をひた隠し     りつこ
 心、渦巻く。 
シングルの自由ここらで捨てようか  ひさぽん
 (かきまわしてる珈琲の渦)
鬼は外セシウム潜む縁の下       後高爺
コンクリートの砕石に問題ありとは。
腹据えて脱原発へ一直線      なずな主婦
 (かきまわしてる珈琲の渦)
「おい」と呼ぶ連れ合い亡くし夜も更ける 柴田美代子
 「後期高齢の仲間入り。一人暮らしです」
さび付いて悲鳴を上げる各パーツ   エンゼル
 修繕しながら参りましょ。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
丹田に力を入れて老いを生く     山田登志
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「角砂糖 」中日新聞1月26日(木)      発表1
 (かきまわしてる珈琲の渦  健)
裸木の雨に濡れてるビルの谷       珠美
トーストにうどんもあるよモーニング 塚本益美
 おお、名古屋名物モーニング珈琲いまなお健在ですね。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
来ないかも来るかもやっぱり来ないかも  岩崎尚子
忘れるか現状維持か告白か     アメリ
 ううーん。珈琲の渦は迷いをまきこむような。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
加速器のパラメーターに異常なし   石田吉保
 こちらは素粒子が飛ぶハイテクの実験室。
光速を追い越したのかニュートリノ  多田将一
 本当にアインシュタインのつぎの時代がくるのだろうか。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
退職のカウントダウン近づきて    ウッチー
「25年もパート勤めしちゃいました。よくやった私!」パチパチ。
そして人生これからがヤマ場なんですよね。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
気仙沼の師元気なりよかったと   伊藤冨美子
基地瓦礫絆日本正念場          直美
 さあ! 
 (かきまわしてる珈琲の渦)
角砂糖ひとつゆっくり溶かす鬱      ひわ
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「しめきりですよ 」中日新聞1月19日(木)      締切
 付け句はもう出されましたか。
 (かきまわしてる珈琲の渦  健)
その話もう三度目と言えなくて     モニカ
 くくく。お互いさまですものね。
 (かきまわしてる珈琲の渦 )
降る雪はさらにはげしく音もなく    あづさ
 新潟から。「私は雪が大好き。スキーもスノボもしないけど、いっぱい降ると子どもよりはりきって、自分が入れるサイズに(ここがポイント!)かまくら作っちゃいます」って。みなさんもそれぞれの冬景色の句を。。
 (かきまわしてる珈琲の渦 )
春よ来い表紙きれいな求人誌        葵
 あ、はがきの第一便がきましたよー。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
原発の塵降りそそぐ去年今年     田中秀幸
 どこで降っているか見えないんだよな。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
ちっぽけなワタシの意見泡の中   木蓮ちゃん
僕なりの天下国家で物思い      羽下正一
天下国家はいま政治家だけじゃなくワタシと僕
こそが語るのだ。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部
「付けてみませんか」係宛。住所、電話番号、
ペンネームの方は本名も必ず。一月二十一日(土)
までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「募集 」中日新聞1月12日(木)      募集
お正月はいかがでしたか。
 (待ってよ待って飛んでゆく日々  未知)
お母さんこの服ちっちゃくなっちゃった ゆあな
 日々伸びてゆく子供たち。    
七年目十年日記矢のごとし      村木節子
たいせつに心にとどめる日々。 
 (待ってよ待って飛んでゆく日々)
迫りくる付け句募集の締切り日    鈴木辰彦
投稿句めがね拭きつつひねり出す    すみれ
付け句作りの句も多かったです。しめきりに追われて集中する刻々もまた楽し。今年もごいっしょに頭をしぼりましょう。さて年初の前句です。
  かきまわしてる珈琲の渦  健
この七七句に五七五句を付けてみませんか。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
受験子を送り出したる雪催        ぐー
 2012年の私たちを句に。御自分のことでも、ほかの人になりかわっても、想像はご自由に。私たちをかこむ冬の自然もぜひ。
 (かきまわしてる珈琲の渦)
僕と君銀河宇宙の隅で会い       芙蓉
 恋句も楽しんで。まさに混迷の渦の時事句も。 
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部
「付けてみませんか」係宛。住所、電話番号、
ペンネームの方は本名も必ず。一月二十一日(土)
までにご投函を。五七五句ですよー。
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)