市中は物のにほひや夏の月 凡兆 (2007/7/26~9/6)

前句   市中は物のにほひや夏の月     凡兆

「募集」中日・東京9月6日(木)         募集
 (市中は物のにほひや夏の月  凡兆)
うなぎ召しませハンバーガーも      金鶏
メガホン片手にドームへ急ぐ     きみ子
 (市中は物のにほひや夏の月)
ふるさとの風テイクアウトで    鈴木亜紀恵
母の忌日の風鈴の鳴る         レイコ
 中学生から90数歳まで、現代の暮らしの思いさまざま、いかがでしたか。江戸時代の凡兆さんも芭蕉さんもにこにこしたと思います。投句多数ありがとうございました。
 さて、つぎの宿題ですよー。
  ばったり会った人ごみのなか    めじろ
 この七七句に五七五句を付けてみませんか。相手は誰でしょう。
 (ばったり会った人ごみの中)
三年もぼくはメールを待ちつづけ    アトム
 もちろん経験でもいいし、会えたらいいなという想像でも。互いの事情、相手の服装、髪型、などご自由に想像して。メルヘンでもSFでも。
 (ばったり会った人ごみの中)
夕映えの国境こえて赤とんぼ       健太
季語を使うかたは、秋の風景をぜひ。動物、植物、妖怪でも。時事句にもご挑戦を。
付け句は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず書いて。九月十五日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「大人の海で」中日・東京8月30日(木)         発表5
 (市中は物のにほひや夏の月   凡兆)
ぽたりと守宮落ちる軒先          暁
地蔵祭りの喧噪消えて        下郷英一
 ああ、夏が終わりますねえ。
 (市中は物のにほひや夏の月)
看板猫が尾をぴくぴくり      土屋百合子
 「うちの猫20歳よ」「うちの母92歳よ」
 (市中は物のにほひや夏の月)
提灯下げて河童の親子       水谷三和子
塗り壁垢なめ一反木綿         源くん
 お化けさん人気。人間より怖くないもんね。
 (市中は物のにほひや夏の月)
九回裏の放送打ち切り          三子
ハイビジョン画面見てる店頭      ケン太
「どうしても買わされるんだよなあ」
 (市中は物のにほひや夏の月)
そこのけそこのけ車が通る      みほたん
大人の海でおぼれて泣いた        青麦
 なにしろ大人もおぼれかけてる社会なんだ。
自問自答で過ぎる短夜         とよこ
迷いは捨てて信号は青         ゆあな
 (市中は物のにほひや夏の月)
城門を抜け鞍上で杯       みの虫アッパ
王翰の「葡萄美酒夜光杯」ですね。
結句は「古来征戦幾人か回る」出征する兵の想いです。
 (市中は物のにほひや夏の月)
幾星霜も戦争放棄           ゴロー
 (やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「時間旅行者」中日・東京8月23日(木)         発表4
 (市中は物のにほひや夏の月  凡兆)
抱えて歩く朝顔の鉢          ミモザ
買い物袋に西瓜半分           H3
 なんでもないけどいとしいひととき。
 (市中は物のにほひや夏の月)
橋のたもとのみたらし団子      中野秀華
イカ焼き急ぐ店じまい刻       ムースー
 おなじみの町灯り。
 (市中は物のにほひや夏の月)
上司の愚痴でグーッと一杯     福井さき子
喧嘩したあと屋台焼きそば        桂丸
 お互い、一日過ごすのてたいへんだあ。
ねだってみたい夜店の指輪       石ころ
 ふふ、ちょっとためすふたりの関係。
 (市中は物のにほひや夏の月)
中世絵巻グランプラスで        ふうろ
 「ベルギーの広場です」市民総出で中世の
伝統衣装を見せるお祭りも月の下で。
 (市中は物のにほひや夏の月)
ヒエログリフの浮かぶ円柱       ふさ子
 エジプト。ヒエログリフは古代神霊文字です。
 (市中は物のにほひや夏の月)
ネットカフェで息子難民         天嶺
「まさかわが子にインターネットで漂流する日がくるとは思いませんでした」
 (市中は物のにほひや夏の月)
空を仰いだ時間旅行者         獅狼
 (やざきあい 作家・桜花学園客員教授)
「他人の顔で」中日・東京8月16日(木)         発表3
 (市中は物のにほひや夏の月    凡兆)
寝ぼけた蝉がしばし鳴きやむ      川太郎
 昼じゅうにぎやかでしたねえ。
羽化待つ蝉を宿す街路樹         恵紅
 土から這い登り、まだまだ増える抜け殻。
 (市中は物のにほひや夏の月)
纏う炎暑を空に投げ捨つ         荷衣
 えーいっ!  
 (市中は物のにほひや夏の月)
皆で見上げるロケット花火     もっ&ふう
 家族っていいね。仲間っていいね。
 (市中は物のにほひや夏の月)
弾き語りする地下鉄の前       かよねこ
音と光の青春時代          矢頭知佳
 うるさい、まぶしいーは年齢かもよ。
 (市中は物のにほひや夏の月)
扇子の香りすずやかなひと       ひろみ
 誰でしょう。
 (市中は物のにほひや夏の月)
他人の顔ですれちがう妻      岩津志乃ぶ
 ひとはほんとうはひとり。
 (市中は物のにほひや夏の月)
たべるを忘れチューブの食事    加藤弥惠子
介護施設はもう灯が消えて       しろ子
 (市中は物のにほひや夏の月)
涙涸れない原爆ドーム        位田仁美
光さらさら灯籠流し           茶子
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「蛍追いかけ」中日・東京8月9日(木)         発表2
 (市中は物のにほひや夏の月   凡兆)
残業すんでとめる冷房          哲郎
 お疲れさま。
ビール片手に涼むベランダ        圭子
 夏の醍醐味。
 (市中は物のにほひや夏の月)
港まつりの花火連発         久野葉雪
高層ビルに花火のシャワー         友
 より明るく、より豪華に! 
 (市中は物のにほひや夏の月)
ガードの下の揺れる提灯      三ツ木宗一
 昔ながらがいいんだーって人もいるよ。
財布に頼まれ宝くじ買う         節子
 ファンドなんて買わない。地道でしょ。
 (市中は物のにほひや夏の月)。
藍の浴衣に声かけられず         水瓶
 シャイな仲間も多いです。
 (市中は物のにほひや夏の月)
離れたくない帰したくない         晶
身八つ口からそっと入れる手       ひわ
 「――」。
 (市中は物のにほひや夏の月)
毛布一枚被災地ごろ寝         小嶋武
部品がなくて操業停止          耕人
 日本列島の鯰対策はなみたいていでない。
 (市中は物のにほひや夏の月)
蛍追いかけまぎれ行く闇        林昭子
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「遠花火」中日・東京8月2日(木)         発表1
 (市中は物のにほひや夏の月   凡兆)
ほのぼの浮かぶ夕顔の花         妙々
さあ梅雨明け。月の下へ出ましょうか。
満潮の川こうもりのとぶ        ひよこ
 蝙蝠は大都会でも増えたようですね。
 (市中は物のにほひや夏の月)
アスファルトから沸き出る暑さ    福本隆文
スクランブルの人々の群れ        豊親
 この群衆の中を今生きる。どう生きる。
 (市中は物のにほひや夏の月)
明日ねと握手恋人未満          久美
流水柄の浴衣涼しげ         根岸一枝
 (市中は物のにほひや夏の月)
うなぎのあとはもりで一杯        喜水
炭火の上で客見るうなぎ      小森美智子
 「あいつには食われたくない」とか?
 (市中は物のにほひや夏の月)
消えた年金増えた税金        山本尚子
当選議員高姿勢になり        佐藤澄子
 さあて、これから見えるのが本性だよ!
 (市中は物のにほひや夏の月)
銃を地に伏せ爆風避ける       水野幸治
 まだ戦火の絶えぬ街も地上に。決して他人ごとではなく。
 (市中は物のにほひや夏の月)
ひとりオフィスに遠花火きく        直
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「しめきりですよ」中日・東京7月26日(木)
付け句の宿題はもう出されましたか。 
 (市中は物のにほひや夏の月  凡兆)
あつしあつしと門々の声         芭蕉
有名な歌仙(36句の連句)の発句と脇です。
芭蕉は夕涼み風景にしたんですね。うまい! 現代プロにも遊んでもらいました。
 (市中は物のにほひや夏の月)
ねむられぬ児をあやす蛍      南州庵健悟
 俳句・連句なさるかたはぜひ夏の季語を使って。
 (市中は物のにほひや夏の月)
素足で駆けてゆくオフェーリア    別所真紀
 詩人は想像はるかに飛翔して!
さて、このコラムはプロアマオープン。とにかく、前句をよく読んで、ご自分の七七句を付け、二句で物語の場面をつくってくださいね。わ、募集即日に出されたらしいはがきがもう。
(市中は物のにほひや夏の月)
徹夜踊りで春駒春駒          みゆき
 もうじき郡上踊りですねえ。
 (市中は物のにほひや夏の月)
柳の下で白い手が呼ぶ       宇井美和子
脚がないのは私だけなの        喜久男
うふふ。お笑いも。今の暮らし、夏の風物。恋句、時事句歓迎。旅先、外国の風景も。付け句は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず書いて。七月二八日(土)までにご投かんを。七七句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)
「募集」中日・東京7月19日(木)    
 (恋とは不意にやってくるもの    卓)
降り立ちし街の匂ひがなつかしく  渡辺多美子
ひぐらしの鳴く坂道を手をつなぎ       凜
 (恋とは不意にやってくるもの)。
付添いで娘とジャニーズコンサート あきえもん
チケットへ並ぶ徹夜の前後ろ    平松由美江
夏祭りいっしょに行こうと照れ笑い   吉田彩
楽しい恋句をたくさんありがうございました。
さあ、つぎの宿題は江戸時代の句。
  市中は物のにほひや夏の月     凡兆
この五七五句に七七句を付けてみませんか。
 この発句に芭蕉さんが次の七七句を付けてます。
 (市中は物のにほひや夏の月)
あつしあつしと門々の声         芭蕉
 高名な付け合いです。では現代人の生活も。
 (市中は物のにほひや夏の月)
もんじゃ焼き屋のにいさんの汗     メルモ
 付け句は経験でも、思い出でも、想像でも。
 (市中は物のにほひや夏の月)
いま帰るよとかける携帯        ゆき坊
夏の風物。恋句、大笑い、時事句歓迎。旅先、外国のバザール風景も。宇宙、おばけなんでも登場させて二句の場面を作って遊びましょ。
付け句は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず書いて。七月二八日(土)までにご投かんを。七七句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授)