めでたさも中位なりおらが春 一茶 (2006/12/28~2/15)

前句   めでたさも中位なりおらが春   一茶

「募集 風に吹かれて」中日・東京2月15日(木) 募集
 (めでたさも中位なりおらが春  一茶)
還暦迎え定年となる          二三四
還暦迎え今年スタート        山崎百百
 今回還暦の句が多かったです。やはり多数派!
波間漂う団塊世代           小島武
一茶がこの句を詠んだのは五十七歳です。当時では老年の五十一歳でようやく結婚、長女が二歳になるやすらぎの新春。でも、苦も楽もひとしく人生と肯定し、中位と詠んだ「おらが春」です。
 (めでたさも中位なりおらが春)
タンポポが咲き子が親離れ      吉田生光
二十一世紀、各世代のおらが春いかがでしたか。
載せきれぬ佳句多数ありがとうございました。
さて、次の前句はすっかり春らしく。
  (風に吹かれて胸がいっぱい   珠)
 この七七句に五七五句を付けてくださいな。
 (風に吹かれて胸がいっぱい)
初デート手作りチョコにリボンかけ    芳梅
 恋や感動。春の旅や故郷の風景。あの日の思い
出。自由に想像して小説の場面を作るのもよし。
 (風に吹かれて胸がいっぱい)
子を当てにしないと決めて花の下     聖子
大笑いや時事句もくださいね。付け句ははがき
で〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず書いて。二月二十四日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「ヒヤシンス」中日・東京2月8日(木) 発表5
 (めでたさも中位なりおらが春   一茶)
弁当付いた芝居見物        藤井しげ子
杉の花粉が鼻腔くすぐる       大田健太

 おお、春じゃ。くしゅん!
 (めでたさも中位なりおらが春)
タミフル打って合格通知       石田吉保
 入学、入社試験、検定試験、資格試験。いっせいにがんばってる、ここは競争社会。
免許更新認知のチェック        浅野健
 高齢者ドライバー時代もくるぞー。
 (めでたさも中位なりおらが春)
上司の夢が出ぬリタイア後      土方昭光
一日何もしない贅沢         鈴木正子
 お日さま浴びてね。
 (めでたさも中位なりおらが春)
シワの手で抱く喜寿の花束       喜久男
卒寿の窓べヒヤシンス咲く        妙子
 「娘にもらった水栽培のヒヤシンスが今年もピンクに咲いていい匂いです。体中痛いところだらけですけど、なぜかここまできました」
 (めでたさも中位なりおらが春)
飯の支度で過ぎ去る時間       滝川善久
時間よ止まれ止まってくれぬ      中谷寛
 そう。人は生きる。年とる! 
 (めでたさも中位なりおらが春)
いくさ放棄の国に生まれて      村井由郎
 ここは踏みとどまらなきゃ。
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「景気の風」中日・東京2月1日(木) 発表4
 (めでたさも中位なりおらが春   一茶)
水仙が咲く七階の窓            弥生
隣で寝息君がいること         プルート
 いればいい。とにかく。
 (めでたさも中位なりおらが春)
おせちに込めた主婦の一分    なずな主婦
 ちゃんと食べてくれたか。勝負は!
禁酒禁煙ダイエット中            友
 え、もしかして納豆食べてた?
 (めでたさも中位なりおらが春)
仕事あるけど恋人はなし        ミモザ
ひとり暮らしの鮟鱇の鍋       佐田精一
「白菜を足して5日は続けます」と。今回、老若ともにひとりもののつぶやきが多かったです。
 (めでたさも中位なりおらが春)
企画書を打つシングルマンション  多田まん
「つぎの企画で追われて休みも仕事」38歳。
派遣期限が三ヶ月延び          光子
 「29歳の息子のことです。定職に就けなくて」
 (めでたさも中位なりおらが春)
景気の風と反りが合わない       平敏彦
暖かい風はどこに吹いてるんでしょう。
 (めでたさも中位なりおらが春)
年々あがる介護保険料         みずほ
年金生活収支とんとん        下郷英一
 (めでたさも中位なりおらが春)
野菜畑の冬の陽だまり        青木武志
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「よっこらしょっと」中日・東京1月25日(木) 発表3
 (めでたさも中位なりおらが春  一茶)
風邪は治ってジャンボははずれ     スミレ
タンスの奥から500円玉      山際綾夏
 うふ。小さないいこと楽しもう。
 (めでたさも中位なりおらが春)
入浴剤で巡る温泉           タマ助
 わが家の風呂も眼をつむれば草津だよー。
 (めでたさも中位なりおらが春)
尾をひいている彼との別れ     横山美枝子
 出会いがあったからこそある別れ。クスン。
空の青さにとかした涙         三日月
「空が青くてほんとよかった」のですって。
冷凍の恋チンしましょうか       まさこ
 そうね。この春やり直しもいいねっ。
 (めでたさも中位なりおらが春)
頑固おやじと五十七年         林昭子
ちょっと怖いがカミさん元気     仲川昌一
 文句あんの!
 (めでたさも中位なりおらが春)
今日も終わったよっこらしょっと    すみ壺
「傷害をもつ息子と脳出血後遺症の夫がいます」
 (めでたさも中位なりおらが春)
娘嫁がず息子娶らず           恵紅
先祖の田畑に工場の建つ       塚本益美
 世の中の風景が変わる。ヒトも変わる?
 (めでたさも中位なりおらが春)
ビニルハウスで蝶がめざめる       青麦
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「鈍色の銃」中日・東京1月18日(木) 発表2
 (めでたさも中位なりおらが春  一茶)
おみくじひいてたこ焼買って      風露
トロもいくらも回転寿司で     広瀬けい子
「カッパも食えよー」
 (めでたさも中位なりおらが春)
カップ拉麺コンビニ弁当        圭太郎
 親が心配。え、母さんたちも常食だって?
飢餓というもの文字だけで知る     まりこ
もったいない神の天罰がこわい国。
 (めでたさも中位なりおらが春)
ノロウイルスは手洗いうがい  橘内あゆみ
 (めでたさも中位なりおらが春)
リタイアしても猪突猛進       山本尚子
猪っとも休めない販売業        黒兵衛
「これじゃ繁殖できねえ」ですと。
 (めでたさも中位なりおらが春)
やっと当たった下の三桁     みの虫アッパ
くじにはずれて離婚見送り      近藤富子
 (めでたさも中位なりおらが春)
支持率下がり妻とこたつで     菅野八重子
世を浄めんと降る今朝の雪      藤村力田
 わい、もう止んじゃって泥んこだぞ。
 (めでたさも中位なりおらが春)
軍靴の音を初夢に聞く          茶子
それがわが子、孫の未来だったら。
 (めでたさも中位なりおらが春)
少年の手の鈍色の銃          草笛奏
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「私の1分」中日・東京1月11日(木) 発表1
お正月休みはいかがでしたか。
 (めでたさも中位なりおらが春   一茶)
お雑煮よりもまず猫のエサ       ゆあな
このご時世にうり坊六匹         亥母
 母さん猪奮迅図。
 (めでたさも中位なりおらが春)
おうちと新車ローンの嵐         佳代
「きゃー! 平均的な幸せにも背負うものが大きすぎる世の中なんです」って。
夫退職妻家事無休          本多雅子
武士の一分私の1分           節子
忙しいんだからっ。
 (めでたさも中位なりおらが春)
印刷賀状かわし年取る          山彦
 お互い名前だけは忘れないご縁。
来たぞ手帳と敬老パスが         旦喜
 (めでたさも中位なりおらが春)
クイーッと一杯思わずフーッ   木村れいみ
「お正月に体調を崩しこの快感がお預けです」
私の風邪はケイコウカンセン      よしお
経口。何か自慢げじゃない?
背中のホック外してくださる?      ひわ
なんてお相手のあるは幸。
 (めでたさも中位なりおらが春)
休み明け待ち課題のテスト      松山麻美
弁当箱に入る黒豆          白井智也
 さあ、日常開始。今年もエッサカよろしく。
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「しめきりは6日」中日・東京12月28日(木)
 (めでたさも中位なりおらが春   一茶)
初詣にはちらちらと雪          れい
ねえ年明けのゴミの日はいつ       亜紀
 今度の宿題付け句は、お正月の間に身の回りからネタを拾えそう。ところで、ちょっと思いついて連句のプロにも付けてもらいました。FAXで30分もせぬうちに返った数句から。
 (めでたさも中位なりおらが春)
角番相撲つづく大関         佛淵健悟
この世には角番続きの人もたくさんいるんですよね。付け句は自分のことだけでなく、この世のさまざま、自由にご想像を。時事句もぜひ。
 (めでたさも中位なりおらが春)
御慶なかばに止まぬ咳          真紀
おめでとうございます、コンコンですね。みなさんお風邪に気をつけて。
真紀さんは俳諧小説作家の別所真紀子さん。歴史文学賞受賞の『雪はことしも』(新人物往来社)には江戸の俳諧師としての一茶さんもいきいきと登場しています。おすすめの本です。
 もう一句。
 (めでたさも中位なりおらが春)
深雪の上に黄金の尿           真紀
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず。一月六日(土)までにご投かんを。七七句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「募集 おらが春」中日・東京12月21日(木)
 (足がもつれてもう踊れない     風)
潮騒に耳をかたむけ一休み       総領利
さりげなくワインすすめりゃ外は雪  伊藤紘美
 (足がもつれてもう踊れない)
変わりゆく世界の輪郭確かめて     水野優
 高校生さんから。若い目に映る世界は今。
 (足がもつれてもう踊れない)
百八つ目の鐘にまだ蕎麦の客      ふさ子
投稿句掲載された嬉しさに        金鶏
 除夜の鐘が鳴ってもまだつづいてゆく日々。付け句も続けましょう。つぎの宿題の前句は、おらが春、お正月の句ですよー。
  めでたさも中位なりおらが春  一茶
この有名な発句に七七句を付けてくださいな。(江戸時代は俳句といわず、発句です。俳諧、つまり連句の先頭の句という意味です)
 (めでたさも中位なりおらが春)
雑煮の上で踊るかつぶし        伊久魅
2007年。あなたの、ご家族の、そして世の中のお正月風景をどうぞ。
 (めでたさも中位なりおらが春)
愛する彼とインフルエンザ      ポンポン
ウフ、恋句も。時事句もたくさんくださいね。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を併記。一月六日(土)までにご投かんを。七七句ですよ!
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)