ツリーのてっぺん星が見ている 成富屋 (2004/11/11~12/30)

ツリーのてっぺん星が見ている 成富屋

「募集」 東京12月21日(火)中日12月23日(木)
 (ツリーのてっぺん星が見ている 成富屋)
今宵だけ宗旨をかえて干すグラス  水野幸治
宿り木を飾ってキスの口実に     大杉ゆな
誘惑のスリル微妙に過ごすイブ      泰子
ひもじくてマッチする子に雪は降る  池田志満子
 アンデルセンの時代から二百年。まだ助けを
求めている子らが世界中に、いえ身近にも。
なまずさん冬眠してねと皆祈り       仁太
戦場の仮の宿りの聖夜かな       加藤綾
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
くじ引きの箱をガランと回したり      耕人
 かくて、暮れる年です。今年はまた一段と多数の御投句
ありがとうございました。付け句ますます楽しんでくださいね。
さあ、つぎの宿題ですよー。
 いつのまに雪はしずかに降りはじめ あづさ
 この五七五句に七七句を付けてください。
 (いつのまに雪はしずかに降りはじめ)
やっぱり彼にうつされた風邪       まるこ
 付け句は経験でも、想像でもかまいません。
二句で小説の場面を作るのもよし。
 (いつのまに雪はしずかに降りはじめ)
笑いころげたあとの沈黙          聖子
 人生のひとこま、思い出、時事、風景、大笑いも。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。
住所と電話番号、ペンネームの方は本名も明記。
一月十四日(金)までにご投かんを。七七句ですよ! では、よいお正月を。 
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「ズームイン」 東京12月14日(火)中日12月16日(木)
 (ツリーのてっぺん星が見ている   成富屋)
降りそうな雪の気配に風が冷え     江崎千秋
二次会を途中で抜けてバスを待つ      嘉男
 ぶるぶる、寒いですねえ
来る来ない来る来ない来るあ、チャイム   ペペ
「雪が降る」アダモ聴いてた二十歳前 なずな主婦
 あなたは何歳のころ聴きましたか?
  (ツリーのてっぺん星が見ている)
にぎる手と歩く夜道に少し酔い       ふくろう
謝ってばかりで言い返さない君        獅狼  
 ああ、恋はすんなりとはゆかないもの。
二年越し編んでたセーターだれが着る? 喜々楽々
ただひとり思い出仕舞いこれでよし      暁闇
 む。人生きりかえも大事。
  (ツリーのてっぺん星が見ている)
メダルには届かなかったけど拍手    岩崎尚子
 届かぬ仲間のほうが多いこの世。お互い拍手ね!
  (ツリーのてっぺん星が見ている)
過疎の村桜もみじをこきまぜて         暁
栗キノコ柿の実山イモ獣の餌         旦喜
 「今年は田舎の食べ物すべて猪、ハクビシンに食べられてしまいました」と。異常気象の年。
  (ツリーのてっぺん星が見ている)
白雪の淡い一生ズームイン       牛島和昭
 万物がもつほんの束の間です。
   (ツリーのてっぺん星が見ている)
白い毛の仔猫拾って帰る夜        松山恒子
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「パン工場の」 東京12月7日(火)中日12月9日(木)
 (ツリーのてっぺん星が見ている 成富屋)
カフェテラス君待つような心地して       満月
赤や白黄色の光るコンペイトウ    鈴木味登理
 メルヘンのありそうな街。
ないしょだよ盗んだハートのかくし場所  あおい
 返してえ! 
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
パパテレビ僕はゲーム機ママメール    緑じじ
 一つの家にいるんだからいいとしようね。
湯豆腐といかの塩からコップ酒     塚本益美
くつくつとコンロの上で鱈笑い         真帆
 白菜も笑う。ネギも糸こんにゃくも笑うよー。
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
自習室つめたいおにぎりほおばれば     想踏
 「受験生です。予備校の教室には窓がありません。早く解放されたいーー」
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
社員だろ深夜残業断れず          ヘルプ 
リストラの我が身にせまる町工場    伊藤紘美
 超多忙か、仕事がないかどっちかなんだよね。
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
君は言う独りじゃないよほんとかな      黒猫
六十路過ぎ恋をしたのよいけないか   野口博子
 心に問い返しつつ更ける夜。
賑わいの街楽しくもせつなくも      とよこ
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
夜明け前パン工場の白い湯気     岩津志乃ぶ
  (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「新札か」 東京11月30日(火)中日12月1日(木)
 (ツリーのてっぺん星が見ている 成富屋)
待ち合わせ白い息だけ遠く消え     永井君枝
 まだ来ないー。
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
コンビニで買ったあんまん半分コ      イヴ
 半分コのコの一字に愛がこもりましたね。
カップルがあふれる店で打ち合せ     眠り猫
 ふん、こちとら仕事さ。クスン。
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
雑踏の中の孤独に会いにゆく     シャムネコ
「都会が好きです。特にイルミネーションの街が」
うちのひと今夜も屋台でコップ酒   平石賀須子
  (ツリーのてっぺん星が見ている)
新札か偽札かよく分らぬが        十四山
 あ、芥川龍之介のお札。え、そんなのない?。
天動か地動か迷うITっ子       山田登志
  (ツリーのてっぺん星が見ている)
心臓にステント入れて生還す      奥村榮一
「心筋梗塞で倒れました」と。 
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
庇いあい喧嘩をしている老夫婦     村井由郎
――「ぼくが悪かった」「いいえ私があんなことを
言ったから」喧嘩ももちろん人生。
逝きし子のとしを数えて指を折る   なっちゃん
「ひとり子を亡くして主人八十四歳、私七十六歳」
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
たゆたゆと夜霧流れる白い街         紅
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「方位磁針」 東京11月23日(火)中日11月25日(木)
 (ツリーのてっぺん星が見ている 成富屋)
塾帰り鼻先冷やしペダルこぐ         乃文
「中学生の母です」――寒くなりましたねえ。
指絡め友情を越え愛情へ           小泉
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
少しだけ目を瞑ってねそっとキス    あーたん
寒空の初めてのキス足震え      田中亜由美

 ふふ、お星さまに見られた。
歯を磨きヒゲまでそって来たけれど    喜久男
 ふふ、またね。またね。
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
誰といる今頃君はどこにいる       プルート
まだ独りチカチカ笑うイルミネーション水谷三和子
 独り者仲間、たくさんいるよー。
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
電灯が点り安堵の震源地        佐藤澄子
木枯らしに声張り上げる募金箱        典子
 地震台風被災地を思う句多数いただいています。
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
冬籠り熊の寝息も安らかに       武山明彦
 ああ、動物たちとの棲み分けも問題の年でした。
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
混迷のイラクアフガン同じ空        美比古
ハト襲う白頭ワシが急降下     みの虫アッパ

 白頭鷲は世界一の某強大国の象徴でもあります。
 (ツリーのてっぺん星が見ている)
権力を手にした者の方位磁針       ふさ子
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「しめきりですよ」 東京11月16日(火)中日11月18日(木)
 付け句宿題はもう出されましたか。
 ツリーのてっぺん星が見ている 成富屋
終電のホームに影はふたつだけ        すじ
お待たせと駆け寄る頬にふわり雪      彩火

「やっぱり恋人たちの風景になりますねえ」と、ゼミ生たちの付け句です。
 先月末の「とよたキャンパス連句まつり」盛況でした。焼きそばやチョコバナナの屋台、お化け屋敷の並ぶ大学祭のまん中の会場は、付け句だらけ。先回ご応募からおひとり一句を書いた短冊約六百枚。それに七千句の高校生の付け句からも二百句ほど発表。インターネット付け句、学生からの出題付け句、歌仙や、尻取り連句は当日とびいり参加です。毎年、十代から九十代まで全世代の句が付くお祭ですが、今年はお母さんに連れられた侑希ちゃん(小四)、真生ちゃん(小二)の姉妹も色短冊で句を付けて活躍してくれました。末の妹の美来ちゃん(二歳)までカラフルなもにゃもにゃ文字で参加。この短冊の解読は、永遠のひみつです。
 さて十一月なかばの友人のため息。
  ツリーのてっぺん星が見ている
戦争をつづけていてもいいのかな     ときよ
 付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号、ペンネームの方は本名も明記。十一月十九日(金)までにご投かんを。付け句では「ツリー・星・見る」など前句にある単語を重ねないで。五七五句ですよ!
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「募集」 東京11月9日(火)中日11月11日(木)
  (君が好きだと気づく瞬間       奏)
合唱の彼の声だけ聴き分けて     松山みわ
送別会終えてひとりの夜の道         直
  (君が好きだと気づく瞬間)
小惑星トータチスが近づいて      小川昭三
 地球に四年ぶりの再接近。
  (君が好きだと気づく瞬間)
窓ぎわのひとりおもちゃで遊ぶ背に     スギ
アルバムの幼き娘らに笑み返し    藤田まさ子
「あのころは可愛かったなあ」――母の至福。
あなたお茶はいりましたと妻の笑み     遊心
入院の品こまごまと束ね髪       田中淑夫
 まだまだご紹介したい句たくさんですけれど、ここでうちどめ。
つぎの付け句ですよー!
  ツリーのてっぺん星が見ている  成富屋
 この七七句に五七五句を付けてください。じきに歳末で、街はクリスマスの飾り付けになります。樅の木の上から星が見ている人生、風景をどうぞ。
  (ツリーのてっぺん星が見ている)
出生の秘密ぽつりとうち明けて       聖子
 ドラマでしょ。付け句は経験だけでなく想像でかまいません。二句で小説の場面を作ったり、今年の自分、家族のこと時事句もぜひ付けてください。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号、ペンネームの方は本名も明記。十一月十九日(金)までにご投かんを。五七五句ですよ!
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)