恋という熱じわりあがって おはぎ (2003/8/21~10/30)

前句 恋という熱じわりあがって おはぎ 

「募集」 東京10月28日(火)中日30日(木)
  (恋という熱じわりあがって おはぎ)
砂浜の足跡乱れ立ち止まる      福井さき子
うにうにと擦り寄っている海鼠かな   セトリン
 海べのカップルたちですよー。
   (恋という熱じわりあがって)
声持たぬ土偶はくろき目をひらく       鉄
旅せんかのうぜんかづらかっと炎ゆ     順三
 ま夏の募集の発表を終えてもうすっかり秋です。
   (恋という熱じわりあがって)
黄昏に金木犀は星になり        近江信孝
銀の穂に粛と挨拶風は行く        まるひ
 今回は特別募吟の連句祭全国五千余句のご応募多謝です。ほんの一部
しか発表できず残念ですが、付ける楽しさを多数でご一緒できてうれしいです。
 さて、日常に戻りお待ちかね次回の募集句です。
   体育館の窓の夕映え   ジュン
 この七七句に五七五句を付けてください。
   (体育館の窓の夕映え   ジュン)
 十八の心のドアは半開き      聖子 
自分のこと。他の人のこと。思い出
、恋句、時事句、大笑い句、すてきな詩、いろいろな場面を考えてください。付
け句のしめきりは十一月七日(金)です。通常に戻りはがき一枚に数句書いて
OK。何枚でもどうぞ。つづいて学校からのご応募も歓迎です。〒460-8511中日
新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号。紙上ペンネームの方
は本名も明記して。五七五句ですよ!
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『秋の陣』10/21(火)東京朝刊・10/23(木)中日朝刊
   (恋という熱じわりあがって    おはぎ)
手をつなごう素直になれるおまじない   こころ
きらい好き「べーっ」と舌を出し笑う  藤本来夢
 高校生さんたち。果たして誰といつ結ばれるのか。
   (恋という熱じわりあがって)
教科書を開くあなたは斜め前      ウーロン
 なんていい席。勉強上の空だよー。
   (恋という熱じわりあがって)
朝散歩ハンサム爺に会えるかな       妙幸
 ハハハ、若者に負けてたまるか。
逢う日待つ八十路の想いデーサービス   八十女
車椅子捨てて駆け出すおばあちゃん     恭子 
 ときに奇跡は起こる! 長生きしなくちゃね。
   (恋という熱じわりあがって)
半世紀経てマドンナの笑い皺       原野苺
逢って冷め別れて燃えて老い悲し      心太
 クスン。でも、共にほろびゆくことも美ですよ。
  (恋という熱じわりあがって)
生きてきてよかったねえと目を合わす   ゆうく
吹きとばすジョッキの泡の物語     伊藤千敏
  (恋という熱じわりあがって)
キュンとなる胸は新型肺炎か       ボート
 なんでもグローバルになってしまって。
戦争で死ぬのはイヤだ絶対に     木蓮ちゃん
憲法の九条守れ赤とんぼ        村井照代  
 (恋という熱じわりあがって)
秋の陣既得権益守るべく          茶子
  (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『雲あふれ』10/14(火)東京朝刊・10/16(木)中日朝刊
    (恋という熱じわりあがって おはぎ)
コンビニのレジに天使がまいおりる   スイマー
 映画が始まりそうですねー!
雲あふれあなたに側にいてほしい    あしたば   
 右二つとも高校生句。すてきでしょ。
 今回は「とよた市民キャンパス連句まつり」との共催特別募吟でした。付け句は五千余句。まつり選賞委員会により、約二三〇句を入賞入選とし(入選者には通知)連句まつりで展示して、来場の方に楽しんでいただきます。お近くの方はお遊びにどうぞ。会場は桜花学園大学(豊田市太平町七曲十二―一 電話0565-35-3131)。学生付け句、尻取り連句もできます。当日は学園祭で屋台も出てますよ。十月二五日(土)二六日(日)十一時―十五時。私めも二六日にはおりますので、声をおかけ下さい。
   (恋という熱じわりあがって)
今の顔パパにもダンナにも見えず      麻
「十年暮らしていても主人のしぐさなんかにたまーにドキッとします」うふ。ごちそうさま夫婦!
  (恋という熱じわりあがって)
老妻にまだ飽きもせず腕枕        笠松孟
小鳥呼ぶいつもと同じ朝の夫      大畑杉子
来世もよろしく頼むとこれ本気    池之上雨声
  (恋という熱じわりあがって)
あこがれはあこがれのまま年重ね    ゆうすげ
 それもよし、ですよね。
茜雲返ってこないブーメラン      加古敬子
   (やざきあい 作家・桜花学園大学教授) 
『オホーツク』10/9(火)東京朝刊・10/7(木)中日朝刊
   (恋という熱じわりあがって おはぎ)
息止めてゴールを守る君をみる      あおい
君が乗る駅のホームを見てしまう     あゆみ
 惹かれるーーってこういうことなのね。
   (恋という熱じわりあがって)
深呼吸彼のもとへといざ出陣    なつみまつり
 この深呼吸の句をゼミの女子学生たちが絶賛。ワ、今こんな積極的なの?「えへ、かくありたいです」
   (恋という熱じわりあがって)
逢いにゆく黄色信号するり抜け      野比子
真夜中のハイウエイ「タブー」の香り乗せ 眠り猫
 疾走する恋はちょっと危険なおとなの味。
   (恋という熱じわりあがって)
会えない日淋しいけれど平和な日      明美
 恋人どうし。毎日情熱の日々もくたびれるのであります。ときどき我に返る必要もありますしね。
   (恋という熱じわりあがって)
フランス語話す君見て諦めた       あやめ
 あれ、そう早まらなくても。
夢だったキャリアウーマン途中下車   水谷允子
 めでたいけど仕事復帰まで10年かかるかな。男女共同参画社会とかの、これがまだ現実よ。
任せとけトイレの掃除俺がやる     中山康博
 そう。男、みんなその覚悟すること! 
   (恋という熱じわりあがって)
自衛官イラクへ行けぬ訳がある      喜久男
タマちゃんもいざ帰らんかオホーツク  佐藤幸彦
  (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)  
『嗚呼すまぬ』9/30(火)東京朝刊・10/2(木)中日朝刊
   (恋という熱じわりあがって おはぎ)
火星より近くにいるわ気がついて     三島園子
こうなれば一気呵成に大接近           直
 ハハハ。ダジャレ賞ですよー。
   (恋という熱じわりあがって)
おばちゃんと呼んでターボでかけてくる 縄倉かよ子 
 可愛い若者とおばちゃん、仲良しなだけよね。 
アラいやだ賞味期限がない私       矢野節世  
   (恋という熱じわりあがって)
内容により寝言でも許されず       川崎悦子
「な、なに言った?私」
   (恋という熱じわりあがって)
夫も子もBGMにしてしまい       グリコ
 ぶ。BGMとはまあ表現の妙。遠のくのだあ。
女房のセンサーの針振れ始め      田中淑夫
 これは夫の危機。
   (恋という熱じわりあがって)
左手の指輪はむろん抜く覚悟       山内方子
 わ、やるか!おぬし。
もう指輪抜けなくなった薬指          加藤晃 
 実は物理的に抜けないんだわーーーイテテ。
   (恋という熱じわりあがって)
嗚呼すまぬ糟糠の妻父母も居て    翠川与三郎
 この昔男はね、正座しているんですよ。誠実なお人柄の
人生。それでもじわりと上がる熱がある。
   (恋という熱じわりあがって)
君の住む街のあたりか遠花火        タマ助
   (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『つい言った』9/23(火)東京朝刊・9/25(木)中日朝刊
   (恋という熱じわりあがって    おはぎ)
目が合って焦ってそらしまた見つめ   宮地香織
「猫が好き」「私もだよ」と嘘をつき     イール1
 今回高校生さんがたくさん参加です。
   (恋という熱じわりあがって)
友達の評価は微妙僕は好き          花鳥
 学校という集団の中での恋にはさまざまなニュース
もとびかう。でも、判断のものさしは、僕。
   (恋という熱じわりあがって)
つけ過ぎた香水今更悔やんでも    神谷小百合
ふたりきり窒息しそうな観覧車         千里
 おとなも緊張してます。いくつになっても。
   (恋という熱じわりあがって)
見つめ合うシナモンティとカプチーノ ことぶきん
年下の君の目線を見上げた日        青麦

 どちらが甘え、どちらがリードすることになるのかな?
どっちもだよね。 
   (恋という熱じわりあがって)
大股の彼にやっとこ近付きハア     野口博子
追いかけて追いついてさてどうしよう 優柔不断母

 ははは。どうしよう。これが前後不覚ほんとの恋。
   (恋という熱じわりあがって)
知らぬまにかわいい私が生まれるの      遊 
 いま2ミリ。パパとママよろしくね。
    (恋という熱じわりあがって)
つい言ったそして迎えた金婚式       晩成
遺伝子の連鎖つづくよ星月夜       源内節
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『その太股が』9/16(火)東京朝刊・9/18(木)中日朝刊
  (恋という熱じわりあがって おはぎ)
夏祭り必死でついてく馴れぬ下駄      蜜柑
ライバルの目もと涼しき夏祭り     関口淑子
 夏が終わりますねえ。付け句は当分熱いですよ!
   (恋という熱じわりあがって)
夏風邪の見舞いに金魚くれた君      らむこ
見つめられ泡プクリ出す水中花        紅
 ああ、この恋ははかない思い出になるのかしら。見つめてる紅さんの姿もいろっぽいよー。
   (恋という熱じわりあがって)
手を握るだけでは済まぬ木下闇       保子
祭の夜あなたはそっと肩に手を    平石賀須子
 どきどきするじゃありませんか。
   (恋という熱じわりあがって)
その肩がその太股が二の腕が     丸地のぶ子
 いくらなんでも露出しすぎているんじゃない?
臆病と大胆な俺葛藤し          増田正
 うん。男はいつも野獣ってわけじゃないんです。
  (恋という熱じわりあがって)
火をつけたクールな彼は消防士     樋田和子
 クールが魅力。ホースもってこさせないように。
  (恋という熱じわりあがって)
温暖化加速させてる君と僕        美比古
ヒビが割れ炉心溶融待ったなし   みの虫アッパ 
 地球環境と直結してる、でかいスケールの恋!
    (恋という熱じわりあがって)
繋ぐ手を握り返してくれず秋        麓天
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『しめきりですよ』9/09(火)東京朝刊・9/11(木)中日朝刊
   (恋という熱じわりあがって おはぎ)
思い込め送ったメールにウイルスが    川津蛙
 付け句到着中。あれ、蛙さんは松江発。山陰中央新報が記事を載せてくださったそうです。中部地方・首都圏だけでなく広範囲な応募があります。先回の水晶玉の前句では千百句ほどでしたが、今回九月十日しめきり(今、私が原稿を書いているのは1週間前ですが)にはその数を上まわりそうです。高校生も参入して老若ラブラブ決戦の整理中です。
 この夏休みのまん中に私は愛知県高校文芸部の大会で、80人余の高校生に連句を伝授(!)したんですよ。数人ずつのグループで即興で付け合う。 
 初デート二時間前に来ちゃったよ 鈴木祐介
  手の平の汗何度も拭う     堀幸一郎
 恋句を必ず入れるルールには、男子も意外とのりのり。いや、当然といえば当然ですけど。
 切り裂いて落ちよロボット緑色夢   奏。
  宙を指さす幼な子の群     藤井裕子
 おお、これはSF。初めて会って自己紹介して、一時間半で六句の短い連句を巻きあげちゃったのはさすが文芸部。それぞれの学校に帰り、付ける文芸遊びをお仲間と楽しんでくださいね。この極東の列島にはぐくまれた人なつこい文芸ですから。
  (恋という熱じわりあがって)
菅・小沢お手々つないで雛壇に     齋藤房道
蜜月はいつまでだろう菅・小沢  キリマンジャロ
 さて、来週からの発表お楽しみに。
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『コラムジャック』9/02(火)東京朝刊・9/04(木)中日朝刊
  (恋という熱じわりあがって おはぎ)
咲き出した泰山木の白い花      桂
 幕間に、きょうはこの変わり者コラムの発生由来を。ええ、発生ですよ。1990年連句の座で、あるお姉さまに私は恋の句を頼みました。そしたら「私、古稀ですよ。恋なんてどうでもいいの!」といわれちゃった。「あ、それ句にしてください!」
 恋なんてどうでもいいと古稀は言い 敏女
大笑い。これをA新聞の連載に載せ、最後に「あなたも付けてみませんか」と何気なく書いたら、あらま、新聞社に封書が一通きたんです。付け句が、
 (恋なんてどうでもいいと古稀は言い)
   敬老会の新人を追う   しげる
他十句。この話を中日新聞の連載時評コラムに掲載すると、また数通。載せるとまたぞろぞろ。「募集・しめきり・発表」の形をとらざるをえなくなり、わーい、私のコラムで読者が遊んでるよー。これってコラムジャックじゃない? でもとても楽しい展開でした。96年に「付けてみませんか」タイトルで独立。昨年からは東京新聞にも掲載。前句によく恋句が出題されるのはそんな発生事情もございます。
「恋という熱じわりあがって」への付け句しめきりは九月十日(水)消印有効。はがき一枚に付け句一句、五枚まで。学校からの応募は生徒さんの句をまとめA4版紙に印刷してもOK。宛先は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号。紙上ペンネームの方は本名も明記して。
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『恋という熱募集中』8/26(火)東京朝刊・8/28(木)中日朝刊
  (恋という熱じわりあがって おはぎ)
ショパンなど聞いたりもしてまたふたり  ときよ
 宿題付け句出されましたか。時事句にもぜひご挑戦を。13年めになるこの付け句コラムは、付け句作者、読者とともに今の暮らしを眺めお話する場。客観的にはわれら現代人の定点観測だと思っているんです。『平成付け句交差点』(96年筑摩書房)に続き、このコラム精選集の二冊目を、必死で書いている夏休みですーーフー!
 そうそう宿題前句作者おはぎちゃんは中学生時代からのコラム投句。今年大学を卒業し社会人です。
 この句はインターネットのホームページ「矢崎藍の連句わーるど」の電子掲示板連句KUSARIから拝借しました。KUSARI は98年から日々誰かが句を付け、一本の鎖をつなぐ連句です。この句は今年一月25120番めでしたよ。
25120  恋という熱じわりあがって  おはぎ
25121 お揃いの時計をそっと身に付ける  紫
と続いてました。先週三万番をこえました。このコラム常連さんもご参加です。一度ごらんください。 
「恋という熱」の句へのしめきりは九月十日(水)消印有効。この回のみ整理上はがき一枚に付け句一句、おひとり五枚まで。学校からの応募は、生徒さんの句をまとめてA4紙に印刷してもOK。宛先は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号。紙上ペンネームの方は本名も明記して。五七五句ですよ。
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
『募集』8/19(火)東京朝刊・8/21(木)中日朝刊
   (水晶玉に未来尋ねる        R)
ここが出ろ必死で見つめる試験前    一夜漬け
四面楚歌将軍様の尻に火が       江崎千秋

天国はどのあたりかなナビゲーション 石田喜美子
 十代から99歳まで共に尋ねた未来いかがでしたか。多数のご応募に感謝。
 さて、次回募集前句です。
  恋という熱じわりあがって  おはぎ
 この七七句を読んで五七五句を付けてください。熱がじわりあがるのはどんな場面? 相手は? 場所? 時刻は? 体験でも、想像でも。
   (恋という熱じわりあがって)
  沈黙は告白に似て夕あかり   聖子      
 美しい詩、感動でも、大笑いでも。十月発表なので秋や冬の句もぜひ。鳥も虫も細菌だって恋をする。天上天下過去未来、想像力全開で遊んでください。時事句にも挑戦を。付け句には前句と同じ言葉(恋、熱など)は使わないようにね。
 なお今回は秋の「市民キャンパス連句まつり」(豊田市・桜花学園大学他主催)との共催特別募吟です。このコラムではいつものように発表しますが、祭から時事句賞、ユーモア賞など賞がいろいろ出ますよー! しめきりは九月十日(水)消印有効。この回のみ整理上はがき一枚に付け句一句、おひとり五枚まで。学校からの応募は、生徒さんの句をまとめてA4紙に印刷してもOK。宛先は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号。紙上ペンネームの方は本名も明記して。
 (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)