治定作品:招待席Ⅲ 歌仙「鷹柱」の巻

初折オモテ 発句 名にし負ふ鷹柱見ついらご崎        多迦夫 三冬
 碑ひとつ小春日のなか   藍 初冬
第三 ひょうひょうと能管吹くは誰ならん  明雅
 茶飯の膳に海苔と梅干し   迦
5月 液晶の画面に青い月が出て   藍 三秋
折端  露の沙漠に眠るキャラバン   雅 三秋
初折ウラ 折立 贈られしマルメロ匂ふ旅鞄   迦 晩秋
 髪をゆすれば男七人   藍
憂愁と倦怠ひめしまなざしに   雅
10  ロ短調ミサアルト絶唱   迦
11 天道虫精いっぱいに翔び立って   藍 三夏
12月  朝草刈りの鎌照らす月   雅 晩夏
13 母達者いもたこなんきん巨人好き   迦
14  首相も籤で決めたらばどう?   藍
15 猿山のボス争ひも酣に   雅
16  テロップにまた地震情報   迦
17花 十一 花ほろろ夢違観音に逢ひにゆく   藍 晩春
18 折端  はんこ(半纏)たんな(頭巾)で種を蒔く人   雅 晩春
19 名残折オモテ 折立 男らに鰊取れそれ鰯取れ   々 三春
20  海の底ひに戦闘機朽ち   藍
21 慟哭の摩夫仁の丘をひとめぐり   雅
22  ハンモック吊りタイムトリップ   迦 三夏
23 瀟洒なる林間学校杜の奥   雅 晩夏
24  あたしは猫科きつい愛咬   藍
25 磧湯に魔女の蛇身の透きとほり   迦
26  珍陀の宵に頭くらくら   雅
27 ねじ捲けば阿蘭陀時計鳴り出して   藍
28  ルオーの道化何か悲しげ   迦
29月 十一 手を振りて牧場帰りを送る子等   雅 初秋
30 折端  単車を停める黄落の街   藍 三秋
31 名残折ウラ 折立 まほろばの夕月の冷え覚えつつ   迦 仲秋
32  竹馬の友と出会ふホスピス   雅
33 走者しか知らずゴールのよろこびは   藍
34  えり挿すひとに湖は穏やか   迦 初春
35花 咲きみてる花は昔の長等山   雅 晩春
36 挙句   回廊づたひあそぶてふてふ   藍 三春

2000年月日起首 満尾

* 初折表(ショオリのオモテ)略称オ   初折裏(ショオリのウラ)略称ウ 
  名残折表(ナゴリノオリのオモテ)略称ナオ 名残折裏(ナゴリノオリのウラ)略称ナウ