矢崎藍の連句わーるど

１９９８年十二月二十八日起首　１９９９年四月九日満尾

１	初折表	発句	パンドラの函あけましておめでたう	藍	新年
２		脇	'９９年出航の銅鑼	多迦夫	新年
３		第三	乳あまし眠る嬰児暖かに	藍	三春
４　花		四	落花を誘ふ雨のしとしと	迦	晩春
５　月		五	ＣＧの月おもしろき弥生尽	藍	晩春
６	折端	六	人形芝居幕揚がるなり	迦
７	初折裏	折立	こなさんがお江戸へゆくは仇討ちか	藍
８			武者ぶるひして男恋する	迦
９			雪暗れのスナック赤い革の椅子	藍	晩冬
１０			トカチョフさんとウオッカを飲む	迦	三冬
１１			火口湖に幻の魚釣り上げむ	藍
１２			樹林の上に虹の半円	迦
１３（×月）			フルートのデュエットやがて透き通り	藍
１４			８，１５鎮魂の日ぞ	迦	初秋
１５　月			月のぼる父亡きことに子は触れず	藍	三秋
１６			ぎゃっと啼きしは樫鳥の声	迦	三秋
１７（×花）			背徳の館の正午紫苑咲く	藍	仲秋
１８	折端		庭番が来て色硝子拭く	迦
１９	名残折表	折立	どう見てもあの彫刻はロダン作	迦
２０			律儀にたどる歴史案内	藍
２１			鞄には電話電卓電子辞書	迦
２２			一匹狼ですと長髪	藍
２３			キカセテヨワタシハタダノショウフナノ？	迦
２４			愛と憎しみトーストの朝	藍
２５			むくむくと入道雲がたちあがり	迦	三夏
２６			本祭りとて太鼓とどろく	藍
２７			この不況相撲人気も翳り見え	迦	三秋
２８			あぶれ蚊ひとつ叩き損なふ	藍	仲秋
２９月			コメディアン化粧落として仰ぐ月	迦	三秋
３０	折端		天狗茸にはやはり猛毒	藍	晩秋
３１	名残折裏	折立	お悔やみの鳩は喪章を首に巻き	迦
３２			ノックするのは運命の神	藍
３３			炉を囲む家族三代賑はしく	迦	三冬
３４			故郷の谷に守る堅香子	藍	春
３５花			壺中天しだるる花の下に臥し	迦	晩春
３６	挙句		狂言綺語をはこぶ春風	藍	三春

１９９８年十二月二十八日起首　１９９９年四月九日満尾